実践問題
問1(2019本第2問問2)
0.020 mol の亜鉛 Zn に濃度 2.0 mol/L の塩酸を加えて反応させた。このとき、加えた塩酸の体積と発生した水素の体積の関係は図 1 のようになった。ここで、発生した水素の体積は 0 ℃、1.013 × 105 Pa の状態における値である。図中の体積 V1 [ L ] と V2 [ L ] はそれぞれ何 L か。V1 と V2 の数値の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問2 より引用)
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正解 2
亜鉛に塩酸を加えたときの化学反応式は
Zn + 2 HCl → ZnCl2 + H2
したがって、 0.020 mol の Zn に 0.040 mol の HCl を加えると、反応が完全に終わります。
HCl の濃度は 2.0 mol/L なので、加えた塩酸 V1 は
2.0[mol/L] × V1 [L] = 0.040[mol]
よって V1 = 0.020 L
また、発生した水素は 0.020 mol です。
0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件で 1 mol の水素は 22.4 L ですから
V2 [L] = 22.4[L] × 0.020[mol] ≒ 0.45[L]
問2(2018本第1問問5)
純物質イ の固体をビーカーに入れ、次の実験Ⅲ を行った。イ に当てはまる純物質として最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
実験Ⅲ イ の固体に水を加えてかき混ぜてもイ は溶けなかったが、続けて塩酸を加えると気体の発生を伴ってイ が溶けた。
① 硝酸カリウム ② 硝酸ナトリウム ③ 炭酸カルシウム
④ 硫酸バリウム ⑤ 塩化カリウム ⑥ 塩化ナトリウム
(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問5 より一部を引用)
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正解 3
①~⑥の純物質のうち、水にほとんど溶けないのは炭酸カルシウム CaCO3 と硫酸バリウム BaSO4 です。
この 2 つの純物質のうち、弱酸の塩の炭酸カルシウムに強酸の塩酸を加えると、二酸化炭素が発生します。
(炭酸カルシウムは、弱酸の炭酸と強塩基の水酸化カルシウムの塩です。ここでは弱酸の遊離が起こり、炭酸が遊離します。炭酸は水と二酸化炭素に分解します。)
CaCO3 + 2 HCl → CaCl2 + CO2 + H2 O
したがって、イは炭酸カルシウム CaCO3 です。
硫酸バリウム BaSO4 は塩酸と反応しません。
問3(2018本第2問問4)
身近な物質の pH に関する記述として誤りを含むもの を、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 炭酸水の pH は、血液の pH より小さい。
② 食酢の pH は、牛乳の pH より小さい。
③ レモンの果汁の pH は、水道水の pH より小さい。
④ セッケン水の pH は、食塩水の pH より小さい。
(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問4 より引用)
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正解 4
1 〇 炭酸水は弱酸性で、血液の pH の正常範囲は pH = 7.35 ~ 7.45 です。
2 〇 食酢は酸性で、牛乳はほぼ中性です。
3 〇 レモン果汁は酸性で、水道水はほぼ中性です。
4 × セッケン水は弱塩基性で、食塩水は中性(pH = 7)です。
問4(2018追第1問問6)
質量パーセント濃度が 5.35 % の塩化アンモニウム水溶液 100 g に、十分な量の水酸化ナトリウムを加えて加熱し、すべてのアンモニウムイオンを気体のアンモニアとして回収できたとする。このとき、得られるアンモニアの質量は何 g か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 0.10 g ② 1.7 g ③ 1.8 g ④ 3.4 g ⑤ 3.6 g
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 N 14 Cl 35.5
(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問6 より引用)
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正解 2
弱塩基の塩の塩化アンモニウム NH4 Cl に強塩基の水酸化ナトリウム NaOH を加えると
NH4 Cl + NaOH → NaCl + NH3 + H2 O
のように弱塩基であるアンモニアが遊離します。
このとき 1 mol の塩化アンモニウムが反応すると、1 mol のアンモニアが生成します。
質量パーセント濃度 5.35 % の水溶液 100 g には、溶質(塩化アンモニウム)は
100[g] × \(\frac{5.35}{100}\) = 5.35[g]
含まれます。
塩化アンモニウムのモル質量は 14 + 1.0 × 4 + 35.5 = 53.5[g/mol] なので、
反応した塩化アンモニウムの物質量は
\(\frac{5.35[g]}{53.5[g/mol]}\) = 0.100[mol]
したがって、生成したアンモニアも 0.100 mol です。
アンモニアのモル質量は 14 + 1.0 × 3 = 17[g/mol] であるので、求めるアンモニアの質量は
17[g/mol] × 0.100[mol] = 1.7[g]
問5(2018追第2問問1)
ある濃度の水溶液 A 10.0 mL をはかりとり、純水で正確に 10 倍に希釈したい。希釈の操作として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ホールピペットで水溶液 A をはかりとり、100 mL メスシリンダーに移す。100 mL の目盛りまで純水を加え、ガラス棒でよくかき混ぜる。
② こまごめピペットで水溶液 A をはかりとり、100 mL メスシリンダーに移す。100 mL の目盛りまで純水を加え、ガラス棒でよくかき混ぜる。
③ ホールピペットで水溶液 A をはかりとり、100 mL メスフラスコに移す。メスフラスコの標線まで純水を加え、栓をしてよく振り混ぜる。
④ こまごめピペットで水溶液 A をはかりとり、100 mL メスフラスコに移す。メスフラスコの標線まで純水を加え、栓をしてよく振り混ぜる。
(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問1 より引用)
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正解 3
1 × メスシリンダーでは正確な体積をはかれないので、メスフラスコを使います。
2 × こまごめピペット、メスシリンダーともに正確な体積をはかることはできません。
3 〇 正確な体積をはかりとるには、ホールピペットとメスフラスコが必要です。
4 × こまごめピペットでは正確な体積をはかりとれません。
問6(2017追第2問問6)
酸と塩基に関する記述として誤りを含むもの を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 水酸化バリウムは、2 価の塩基である。
② 塩酸は、電気を通さない。
③ 相手に水素イオン H+ を与える物質は、酸である。
④ [ H+ ] と [ OH- ] が等しい水溶液は、中性である。
⑤ 塩化アンモニウム水溶液に、水酸化ナトリウムを加えると、アンモニアが生成する。
(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問6 より引用)
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正解 2
1 〇 水酸化バリウム Ba(OH)2 は 2 価の強塩基です。
2 × 塩酸は塩化水素 HCl を水に溶かした溶液で、強酸です。強酸なので水溶液中で電離して、H+ イオンと Cl- イオンが存在します。水溶液中にあるイオンが電気を運ぶため、塩酸は電気を通します。
3 〇 ブレンステッド・ローリーの酸の定義のとおり、相手に水素イオンを与える物質は酸です。
4 〇 水素イオン H+ と水酸化物イオン OH- の濃度が等しいときは、酸と塩基の濃度が等しいことになり中性です。
5 〇 塩化アンモニウムは弱塩基と強酸の塩であり、強塩基である水酸化ナトリウムを加えると、弱塩基のアンモニアが遊離します。
NH4 Cl + NaOH → NaCl + NH3 + H2 O
問7(2016本第1問問6)
炭酸カルシウムと希塩酸をふたまた試験管中で反応させ、気体を発生させる。この実験を行うとき、図 2 に示すふたまた試験管の使い方(ア ・イ )、図 3 に示す気体捕集法(ウ ・エ )、およびこの実験で発生した気体を石灰水に通じたときの石灰水の変化の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。ただし、図中の A と B の部分をゴム管で連結する。
(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問6 より引用)
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正解 7
弱酸の塩の炭酸カルシウムと希塩酸を反応させると、二酸化炭素が発生します。
(炭酸カルシウムは、弱酸の炭酸と強塩基の水酸化カルシウムの塩です。ここでは弱酸の遊離が起こり、炭酸が遊離します。炭酸は水と二酸化炭素に分解します。)
CaCO3 + 2 HCl → CaCl2 + CO2 + H2 O
ふたまた試験管を使うこの実験では、希塩酸を炭酸カルシウムの試験管に加えたあと、元の方向に戻します。このとき、炭酸カルシウムが希塩酸側の試験管にこぼれないようにくびれを使います。
したがって、炭酸カルシウムはくびれがある側なので、イが正解です。
発生した二酸化炭素は空気より重いので、(二酸化炭素の分子量は 44 で空気の平均分子量は約 28.8 )下方置換法で捕集します。
したがって、気体はエの方法で捕集します。
二酸化炭素を石灰水に通じると白濁します。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2 O
石灰水には水酸化カルシウム Ca(OH)2 が溶けており、CO2 と反応して炭酸カルシウム CaCO3 が生成します。炭酸カルシウムは水に溶けにくいので沈殿し、白濁します。
これらをまとめると正解は⑦です。
問8(2016追第2問問4)
0.10 mol/L の塩酸 10 mL に 0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を滴下すると、この混合水溶液中に存在する各イオンのモル濃度はそれぞれ図 1 のように変化する。曲線 a ~ c は H+ 、Na+ 、OH- のどのイオンのモル濃度の変化を示しているか。最も適当な組合せを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問4 より引用)
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正解 1
塩酸 HCl に水酸化ナトリウム NaOH 水溶液を滴下していくと、各イオンの濃度はどうなるのか考えます。
NaOH を加えていくと、Na+ イオンはそのまま水溶液に残り、OH- イオンは中和反応に使われます。
もともと存在した HCl の H+ イオンは中和反応に使われ、Cl- イオンはそのまま水溶液に残ります。
0.10 mol/L の塩酸( 1 価の酸)10 mL に、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム( 1 価の塩基)を 10 mL 滴下したとき、はじめにあった H+ イオンがなくなって中和反応が終わります。
これらより、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が増えると、イオンのモル濃度が増え続ける a のグラフが Na+ イオンです。
水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が増えるとイオンのモル濃度が減少し、滴下量が 10 mL となったときにモル濃度が 0 となる b のグラフは H+ イオンです。
水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が 10 mL を超えると、イオンのモル濃度が 0 から増え始める c のグラフは OH- イオンです。
問9(2015追第2問問5)
0.10 mol/L の塩酸 10 mL を 0.050 mol/L の NaOH 水溶液で滴定した。滴定曲線として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
(2015年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問5 より引用)
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正解 2
0.10 mol/L の塩酸 HCl は 1 価の強酸で、0.050 mol/L の NaOH 水溶液は 1 価の強塩基です。
中和の化学反応式は
HCl + NaOH → NaCl + H2 O
となります。
1 価の強酸と 1 価の強塩基の中和滴定なので、中和点で pH は大きく酸性側から塩基性側へと変化します。
また、中和に必要な NaOH 水溶液の体積 X mL を計算します。
中和点で H+ と OH- の物質量が等しくなるので、
$$1 × 0.10 mol/L × \frac{10 mL}{1000 mL/L} = 1 × 0.050 mol/L × \frac{X mL}{1000 mL/L}$$
これを解くと X = 20 mL
NaOH 水溶液の滴下量が 20 mL のところで、大きく pH が酸性から塩基性に変化しているグラフ②が正解です。
問10(2020追第2問問3)
酸や塩基に関する記述として誤りを含むもの を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① H+ の授受にもとづくブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義によると、水に溶けた物質に限らず、気体状態でも酸や塩基としてはたらく物質がある。
② 弱酸の塩に強酸を加えると、強酸の塩と弱酸が生じる。
③ 同じ価数の酸と塩基は、物質量が等しいとき、過不足なく中和する。
④ 純粋な水では、水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度は等しい。
⑤ 塩基の強弱は、その塩基の価数で決まる。
(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問3 より引用)
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正解 5
1 〇 ブレンステッド・ローリーの定義では、水溶液中に限らず、気体状態でも水素イオンのやり取りを考えることができます。
例えばアンモニア水の入った試験管の口に、濃塩酸を付着させたガラス棒を近づけると、白煙が生じます。
これは気体となったアンモニア NH3 と、ガラス棒の先で気体となった塩化水素 HCl が反応し、塩化アルミニウム NH4 Cl の微粒子が生成するためです。
結果として、NH4 Cl の微粒子のまとまりが白い煙のように見えます。これは酸塩基反応です。
2 〇 弱酸の塩に強酸を加えると、弱酸が遊離します。
(例:酢酸ナトリウム CH3 COONa に塩酸 HCl を加えると、酢酸が遊離します。)
CH3 COONa + HCl → NaCl + CH3 COOH
3 〇 酸の価数 × 酸の物質量 = 塩基の価数 × 塩基の物質量 が成り立つのが中和点です。
4 〇 純粋な水では、
H2 O → H+ + OH-
と電離している以外にイオンは存在しないので、
[H
+ ] = [OH
- ]
となります。
5 × 塩基の価数と塩基の強弱は関係ありません。