化学基礎 総合問題(2)

実践問題

問1(2018試第1問問2)

生理食塩水は、塩化ナトリウムを水に溶かしたもので、ヒトの体液と塩分濃度がほぼ等しい水溶液であり、 10 mL の生理食塩水にはナトリウムイオンが 35 mg 含まれている。

生理食塩水に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 純粋な水と同じ温度で凍る。

② 硝酸銀水溶液を加えると、白色の沈殿を生じる。

③ ナトリウムイオンと塩化物イオンの数は等しい。

④ 黄色の炎色反応を示す。

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第1問問2 より一部を引用)

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正解 1

1 × 純粋な水は融点と凝固点が 0 ℃なので、水は 0 ℃で凍ります。

しかし、水に何かが溶けている水溶液では、凝固点が 0 ℃より下がります。そのため、生理食塩水は 0 ℃より低い温度で凍ります。(例えば、海水は 0 ℃より低い温度で凍ります。)

また、純粋な水の沸点は 100 ℃なので、水は 100 ℃で沸騰します。しかし、水に何かが溶けている水溶液では、沸点は 100 ℃より高くなります。

2 〇 生理食塩水に含まれる塩化物イオン Cl と硝酸銀水溶液の銀イオン Ag+ から、白色沈殿(塩化銀)が生じます。

Ag+ + Cl → AgCl

3 〇 生理食塩水は塩化ナトリウムが溶けているので、電離して塩化物イオン Cl とナトリウムイオン Na+ が等しい量だけ生じます。

NaCl → Na+ + Cl

4 〇 ナトリウムイオンは黄色の炎色反応を示します。

問2(2018試第1問問3)

図 1 のラベルが貼ってある 3 種類の飲料水 XZ のいずれかが、コップにそれぞれ入っている。どのコップにどの飲料水が入っているかを見分けるために、BTB(ブロモチモールブルー)溶液と図 2 のような装置を用いて実験を行った。その結果を表 1 に示す。

コップに入っている飲料水 XZ の組合せとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。ただし、飲料水 XZ に含まれる陽イオンはラベルに示されている元素のイオンだけとみなすことができ、水素イオンや水酸化物イオンの量はこれらに比べて無視できるものとする。

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 6

実験結果より、コップⅢだけ BTB 溶液が青となりました。

BTB 溶液は、酸性 ( pH < 6.0 ) で黄色、中性 ( pH = 6.0 ~ 7.6 ) で緑色、塩基性 ( pH > 7.6 ) で青色です。

飲料水 X は pH = 8.8~9.4 なので、コップⅢが飲料水 X です。

実験結果より、コップⅠだけ電球がつきました。

電気を通すために、コップⅠにはイオンが多く含まれる飲料水が入っています。

最も多くイオンを含んでいる飲料水は Z です。そこで、コップⅠは飲料水 Z です。

問3(2018試第2問問1,2)

次の文章を読み、問い(問 Ⅰ )に答えよ。

電気陰性度は、原子が共有電子対を引きつける相対的な強さを数値で表したものである。アメリカの化学者ポーリングの定義によると、表 1 の値となる。

共有結合している原子の酸化数は、電気陰性度の大きい方の原子が共有電子対を完全に引きつけたと仮定して定められている。たとえば水分子では、図 1 のように酸素原子が矢印の方向に共有電子対を引きつけるので、酸素原子の酸化数は -2 、水素原子の酸化数は +1 となる。

同様に考えると、二酸化炭素では、図 2 のようになり、炭素原子の酸化数は +4 、酸素原子の酸化数は -2 となる。

ところで、過酸化水素分子の酸素原子は、図 3 のように O-H 結合において共有電子対を引きつけるが、O-O 結合においては、どちらの酸素原子も共有電子対を引きつけることができない。したがって、酸素原子の酸化数はいずれも -1 となる。

問 Ⅰ

H2O 、H2 、CH4 の分子の形を図 4 に示す。これらの分子のうち、酸化数が +1 の原子を含む無極性分子はどれか。正しく選択しているものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

① H2O   ② H2   ③ CH4   ④ H2O と H2

⑤ H2O と CH4   ⑥ H2 と CH4

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第2問問1 より引用)

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問 Ⅰ 正解 3

H2O では H-O 結合の共有電子対が酸素原子側に引きつけられるので、水素原子が +1 です。(酸素原子の酸化数は -2 )

CH4 では H-C 結合の共有電子対が炭素原子側に引きつけられるので、水素原子が +1 です。(炭素原子の酸化数は -4 )

H2 では H-H 結合の共有電子対に偏りはないので、水素原子の酸化数は 0 です。

したがって、酸化数が +1 となる原子をもつのは H2O と CH4 です。

また H2O と CH4 の分子のうち、分子全体で無極性となるのは 正四面体形の CH4 です。

H2O は折れ線形のため、分子全体で極性をもちます。

まとめると、酸化数が +1 の原子を含む無極性分子は CH4 のみです。

問 Ⅱ

エタノールは酒類に含まれるアルコールであり、酸化反応により構造が変化して酢酸となる。

エタノール分子中の炭素原子 A の酸化数と、酢酸分子中の炭素原子 B の酸化数は、それぞれいくつか。最も適当なものを、次の①~⑨のうちから一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。

① +1   ② +2   ③ +3   ④ +4   ⑤ 0

⑥ -1   ⑦ -2   ⑧ -3   ⑨ -4

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第2問問2 より引用)

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問 Ⅱ 正解 A 6     B 3

炭素原子 A

炭素原子 A の酸化数を数えます。炭素原子 A には、4 つの共有結合があります。

C-C 結合に共有電子対の偏りはありません。

C-H 結合では、共有電子対の電子を炭素原子が引きつけます。これより酸化数は -1 × 2 = -2

C-O 結合では、共有電子対の電子を酸素原子が引きつけます。これより酸化数は +1

以上を合計すると、-2 + (+1) = -1

したがって炭素原子 A の酸化数は -1 です。

炭素原子 B

炭素原子 B の酸化数を数えます。炭素原子 B には、4 つの共有結合があります。

C-C 結合に共有電子対の偏りはありません。

C=O 結合では、共有電子対の電子を酸素原子が引きつけます。これより酸化数は +1 × 2 = +2

C-O 結合では、共有電子対の電子を酸素原子が引きつけます。これより酸化数は +1

以上を合計すると、+2 + (+1) = +3

したがって炭素原子 B の酸化数は +3 です。

問4(2018試第3問問1~4)

学校の授業で、ある高校生がトイレ用洗浄剤に含まれる塩化水素の濃度を中和滴定により求めた。次に示したものは、その実験報告書の一部である。この報告書を読み、問い(問Ⅰ)に答えよ。

「まぜるな危険 酸性タイプ」の洗浄剤に含まれる塩化水素濃度の測定

【目的】

トイレ用洗浄剤のラベルに「まぜるな危険 酸性タイプ」と表示があった。このトイレ用洗浄剤は塩化水素を約 10 %含むことがわかっている。この洗浄剤(以下「試料」という)を水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、塩化水素の濃度を正確に求める。

【試料の希釈】

滴定に際して、試料の希釈が必要かを検討した。塩化水素の分子量は 36.5 なので、試料の密度を 1 g/cm3 と仮定すると、試料中の塩化水素のモル濃度は約 3 mol/L である。この濃度では、約 0.1 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定を行うには濃すぎるので、試料を希釈することとした。試料の希釈溶液 10 mL に、約 0.1 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を 15 mL 程度加えたときに中和点となるようにするには、試料を [ ア ] 倍に希釈するとよい。

【実験操作】

1. 試料 10.0 mL を、ホールピペットを用いてはかり取り、その質量を求めた。

2. 試料を、メスフラスコを用いて正確に [ ア ] 倍に希釈した。

3. この希釈溶液 10.0 mL を、ホールピペットを用いて正確にはかり取り、コニカルビーカーに入れ、フェノールフタレイン溶液を 2 、3 滴加えた。

4. ビュレットから 0.103 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ滴下し、赤色が消えなくなった点を中和点とし、加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積を求めた。

5. 3 と 4 の操作を、さらにあと 2 回繰り返した。

【結果】

1. 実験操作 1 で求めた試料 10.0 mL の質量は 10.40 g であった。

2. この実験で得られた滴下量は次のとおりであった。

3. 加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積を、平均値 12.62 mL とし、試料中の塩化水素の濃度を求めた。なお、試料中の酸は塩化水素のみからなるものと仮定した。

(中略)

希釈前の試料に含まれる塩化水素のモル濃度は、2.60 mol/L となった。

4. 試料の密度は、結果 1 より 1.04 g/cm3 となるので、試料中の塩化水素(分子量 36.5 )の質量パーセント濃度は [ イ ] %であることがわかった。

(以下略)

問Ⅰ

[ ア ] に当てはまる数値として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 2 倍   ② 5 倍   ③ 10 倍   ④ 20 倍   ⑤ 50 倍

問Ⅱ

別の生徒がこの実験を行ったところ、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が、正しい量より大きくなることがあった。どのような原因が考えられるか。最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 実験操作 3 で使用したホールピペットが水でぬれていた。

② 実験操作 3 で使用したコニカルビーカーが水でぬれていた。

③ 実験操作 3 でフェノールフタレイン溶液を多量に加えた。

④ 実験操作 4 で滴定開始前にビュレットの先端部分にあった空気が滴定の途中でぬけた。

問Ⅲ

[ イ ] に当てはまる数値として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 8.7 %   ② 9.1 %   ③ 9.5 %   ④ 9.8 %   ⑤ 10.3 %

問Ⅳ

この「酸性タイプ」の洗浄剤と、次亜塩素酸ナトリウム NaClO を含む「まぜるな危険 塩素系」の表示のある洗浄剤を混合してはいけない。これは、式(1)のように弱酸である次亜塩素酸 HClO が生成し、さらに式(2)のように次亜塩素酸が塩酸と反応して、有毒な塩素が発生するためである。

NaClO + HCl → NaCl + HClO   (1)

HClO + HCl → Cl2 + H2O   (2)

式(1)の反応と類似性が最も高い反応はのうちのどれか。また、その反応を選んだ根拠となる類似性は ab のどちらか。反応と類似性の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

【反応】

 過酸化水素水に酸化マンガン(Ⅳ)を加えると気体が発生した。

 酢酸ナトリウムに希硫酸を加えると刺激臭がした。

 亜鉛に希塩酸を加えると気体が発生した。

【類似性】

a 弱酸の塩と強酸の反応である。

b 酸化還元反応である。

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第3問問1~4 より引用)

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問Ⅰ 正解 4

塩化水素 HCl は 1 価の強酸、水酸化ナトリウム NaOH は 1 価の強塩基です。

そこで、試料を希釈した溶液の塩化水素のモル濃度を C mol/L として、これを 10 mL はかりとったとします。この溶液を 0.1 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液 15 mL で中和すると考えます。

C[mol/L] × 1価 × \(\frac{10[mL]}{1000[mL]}\) = 0.1[mol/L] × 1価 × \(\frac{15[mL]}{1000[mL]}\)

これを解くと C = 0.15[mol/L]

これより、試料の HCl モル濃度の約 3 mol/L を、0.15 mol/L まで希釈したいことがわかります。

\(\frac{0.15[mol/L]}{3[mol/L]}\) = \(\frac{1}{20}\)

試料のモル濃度を 20 分の 1 にしたいので、20 倍に希釈します。

問Ⅱ 正解 4

水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が正しい量より大きくなるということは、実験操作の途中で酸が混入している可能性があります。つまり、試料がどこかの段階で混入していると思われます。

あるいは、何らかの理由で中和点に気付かずに水酸化ナトリウム水溶液を滴下しすぎた、実験操作のどれかで正確に値を読み取っていない、などの原因も考えられます。

1 × 試料をはかりとるホールピペットが水でぬれている場合は、試料が薄まるので酸の量が減り、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は小さくなります。

2 × コニカルビーカーが水でぬれていても試料の量は変わらないので、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は正しくなります。

3 × フェノールフタレイン溶液を多量に加えると、変色域が酸性側に移動すると考えられます。そのため、水酸化ナトリウム水溶液を滴下すると、正しい量より少ない時点で変色すると思われます。

4 〇 ビュレット内の空気が滴定中に抜けるということは、ビュレットの液面の目盛りが下がります。

水酸化ナトリウム水溶液を実際に滴下した量よりも液面の目盛りが下がるので、より多くの量を滴下したと見えてしまいます。

(実際には正しい量の水酸化ナトリウム水溶液を滴下しましたが、空気の体積分だけ滴下量を大きく記録してしまったことになります。)

問Ⅲ 正解 2

密度が 1.04 g/cm3 と測定できたので、試料 10 mL (= 10 cm3) の質量は

1.04[g/cm3] × 10[cm3] = 10.4[g]

モル濃度が 2.60 mol/L なので、10 mL の試料に含まれる塩化水素 HCl の物質量は

2.60[mol/L] × \(\frac{10}{1000}\)[L] = 0.0260[mol]

HCl の分子量は 36.5 であるから、物質量が 0.0260mol のHCl の質量は

36.5[g/mol] × 0.0260[mol] = 0.949[g]

これらより、求める質量パーセント濃度は

\(\frac{0.949[g]}{10.4[g]}\) × 100 ≒ 9.13[%]

となります。

問Ⅳ 正解 3

次亜塩素酸ナトリウム NaClO は、弱酸である次亜塩素酸 HClO と強塩基である水酸化ナトリウム NaOH の塩です。

(1)の式では、弱酸の塩に強酸である塩酸 HCl を加えることで、弱酸の HClO が遊離して強酸の塩 NaCl が生成しています。

【反応】

過酸化水素水に酸化マンガン(Ⅳ)を加えると、酸素が発生します。

2 H2O2 → 2 H2O + O2

酸化マンガン(Ⅳ)は触媒としてはたらいていて、反応式には出てきません。

この反応は過酸化水素の分解反応(酸化還元反応)であり、酸化マンガン(Ⅳ)は反応を速く進めるために加えられています。

【反応】

酢酸ナトリウムは弱酸の塩であり、強酸である希硫酸を加えると弱酸である酢酸が遊離して、酢酸のにおいである刺激臭がします。

2 CH3COONa + H2SO4 → 2 CH3COOH + Na2SO4

【反応】

亜鉛 Zn に希塩酸 HCl を加えると水素が発生します。

Zn + 2 HCl → ZnCl2 + H2

亜鉛原子が酸化され、水素原子が還元される酸化還元反応です。

【反応】では、が弱酸の遊離反応で、が酸化還元反応です。式(1)と類似性の高い反応はです。

化学基礎 総合問題(1)

実践問題

問1(2019本第2問問5)

実験の安全に関する記述として適当でないものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 薬品のにおいをかぐときは、手で気体をあおぎよせる。

② 硝酸が手に付着したときは、直ちに大量の水で洗い流す。

③ 濃塩酸は、換気のよい場所で扱う。

④ 濃硫酸を希釈するときは、ビーカーに入れた濃硫酸に純水を注ぐ。

⑤ 液体の入った試験管を加熱するときは、試験管の口を人のいない方に向ける。

(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問5 より引用)

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正解 4

1 〇 顔を近づけて薬品のにおいを鼻で直接かぐと、有毒な気体を大量に吸ってしまう可能性があるので危険です。一度に大量の薬品を吸い込まないように、手であおいでにおいをかぎます。

2 〇 薬品が皮膚についた場合は、すぐに大量の水で薬品を洗い流します。

3 〇 濃塩酸は毒性のある揮発性(蒸発しやすい)の液体なので、換気のよい場所で扱います。

4 × 濃硫酸を水で希釈するときは、大きな熱量が発生します。濃硫酸に水を垂らすと、水が沸騰して飛び散り危険です。ビーカーの純水に少しずつ濃硫酸を加えて希釈します。

5 〇 突沸(いきなり沸騰すること)などで薬品が飛び出る可能性があるので、試験管の口の方向には人がいないようにします。

問2(2020本第1問問4)

純物質の状態に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 液体では、沸点以下でも液面から蒸発がおこる。

② 気体から液体を経ることなく直接固体へ変化する物質は存在しない。

③ 気体では、一定温度であっても、空間を飛びまわる速さが速い分子や遅い分子がある。

④ 分子結晶では、分子の位置はほぼ固定されているが、分子は常温でも常に熱運動(振動)をしている。

(2020年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問4 より引用)

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正解 2

1 〇 沸点以下の温度でも、液体は液面から蒸発してゆっくりと気体になっています。

2 × ヨウ素 I2 や二酸化炭素(ドライアイス) CO2 は、気体から固体に、また固体から気体に状態変化します。気体から固体、固体から気体への状態変化は昇華と言います。

3 〇 一定温度でも、気体分子の速度にはばらつきがあります。空間を速く飛びまわる分子も、ゆっくり動く分子もあります。

温度が高くなると気体分子の動きは活発になるので、気体分子の平均の速度は速くなります。

4 〇 分子は、気体・液体・固体のどの状態でも熱運動をしています。固体の分子結晶では分子の位置が決まっているので、分子はその位置で振動しています。

問3(2019本第1問問4)

実験室で塩素 Cl2 を発生させたところ、得られた気体には、不純物として塩化水素 HCl と水蒸気が含まれていた。図 1 に示すように、二つのガラス容器(洗気びん)に濃硫酸および水を別々に入れ、順次この気体を通じることで不純物を取り除き、Cl2 のみを得た。これらのガラス容器に入れた液体 A と液体 B 、および気体を通じたことによるガラス容器内の水の pH の変化の組合せとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。ただし、濃硫酸は気体から水蒸気を除くために用いた。

(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問4 より引用)

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正解 4

この操作では、2 つの洗気びんを通すことで、塩化水素 HCl と水 H2O を取り除きます。1 つの洗気びんで 1 つの物質(塩化水素か水のどちらか)を除きます。

まず、塩化水素 HCl を除くために気体を水に通します。塩化水素は水に溶けます。そのあとで濃硫酸に通して水蒸気を除きます。濃硫酸は水分を吸収します。

先に濃硫酸に通すと、次の水のガラス容器で再び水蒸気が発生してしまいます。

塩化水素を水に溶かすと塩酸になります。塩酸は強酸なので、洗気びんのなかの水は酸性になり pH は小さくなります。

問4(2019追第2問問1)

物質の量に関する記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 窒素 28 g と酸素 28 g の物質量は、等しい。

② 水素 1.0 g の体積は、0 ℃、1.013 × 105 Pa において 22.4 L である。

③ 一酸化炭素と酸素の混合気体から二酸化炭素が生成すると、気体分子の総物質量は減少する。

④ 密閉ガラス容器内に鉄くぎと空気と少量の水を入れて放置すると、鉄くぎが酸化されて容器全体の質量が大きくなる。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0   N 14   O 16

(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

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正解 3

1 × 窒素 28 g では、窒素原子の物質量は \(\frac{28[g]}{14[g/mol]}\) = 2.0[mol]となります。

酸素 28 g では、酸素原子の物質量は \(\frac{28[g]}{16[g/mol]}\) ≒ 1.8[mol]となります。

(窒素分子で考えると N2 なので、物質量は \(\frac{28[g]}{28[g/mol]}\) = 1.0[mol]

 酸素分子で考えると O2 なので、物質量は \(\frac{28[g]}{32[g/mol]}\) ≒ 0.88[mol])

いずれにせよ物質量は等しくありません。

2 × 気体の水素分子は H2 なので、分子量は 2.0 です。

水素 1.0 g の物質量は \(\frac{1.0[g]}{2.0[g/mol]}\) = 0.50[mol] となります。

気体の性質として、0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件下では、1 mol の気体の体積が 22.4 L です。

ここでは水素は 0.50 mol なので、体積は 11.2 L です。

3 〇 一酸化炭素と酸素が反応して二酸化炭素が生成する反応式は

2 CO + O2 → 2 CO2

つまり、2 mol の一酸化炭素と 1 mol の酸素が反応して、2 mol の二酸化炭素が生成しています。

はじめに 3 mol の混合気体があり、反応後に 2 mol の気体になったのですから、気体の総物質量は減少しています。

4 × 容器は密閉されていて、外部との物質の出入りはありません。内部で化学反応が起こったとしても、内部の物質(原子)そのものは増減しないので、容器全体の質量は一定です。

問5(2018本第1問問3)

電子の総数が N2 と同じものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① H2O   ② CO   ③ OH   ④ O2   ⑤ Mg2+

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 2

窒素原子が 7 個電子を持っているので、 N2 分子には電子は 14 個あります。

H2O 分子には 10 個 ( 1 × 2 + 8 ) の電子があります。

CO 分子には 14 個 ( 6 + 8 ) の電子があります。

OH イオンには 10 個 ( 8 + 1 + 1 価の陰イオンなので 1 個の電子を受け取っています) の電子があります。

O2 分子には 16 個 ( 8 × 2 ) の電子があります。

Mg2+ イオンには 10 個 ( Mg は 12 個の電子を持つ原子ですが、これが 2 個の電子を失い 2 価の陽イオンになっています ) の電子があります。

問6(2018本第1問問6)

1.013 × 105 Pa のもとでの水の状態変化に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① ポリエチレン袋に少量の水を入れ、できるだけ空気を除いて密封し電子レンジで加熱し続けたところ、袋がふくらんだ。

② 氷水を入れたガラスコップを湿度が高く暖かい部屋に置いておいたところ、コップの外側に水滴がついた。

③ 氷を加熱し続けたところ、0 ℃で氷が融解しはじめ、すべての氷が水になるまで温度は一定に保たれた。

④ 水を加熱し続けたところ、100 ℃で沸騰しはじめた。

⑤ 水を冷却してすべてを氷にしたところ、その氷の体積はもとの水の体積よりも小さくなった。

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問6 より引用)

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正解 5

1 〇 少量の水が加熱され水蒸気となり、体積が増え袋が膨らみます。

2 〇 コップの外側に接する気体は冷やされます。水は高い温度では多くの水蒸気が気体の状態で存在しますが、低い温度では少量の水蒸気しか存在しません。このため、湿度の高い空気が冷やされ、水蒸気が水となってコップの外側につきます。

3 〇 水の融点、凝固点は 0 ℃です。(固体から液体になる温度、液体から固体になる温度は 0 ℃です。)純物質である水が融解するときは、氷が融け始めてから完全に液体になるまで 0 ℃を保ちます。

4 〇 水の沸点は 100 ℃です。(沸騰して液体から気体になる温度は 100 ℃です。)

5 × 水を凍らせると、その氷は水より体積が大きくなります。氷が水に浮くのは、氷の密度が水より小さいからです。

問7(2017本第1問問6)

乾いた丸底フラスコにアンモニアを一定量捕集した後、図 1 のような装置を組み立てた。ゴム栓に固定したスポイト内の水を丸底フラスコの中に少量入れたところ、ビーカー内の水がガラス管を通って丸底フラスコ内に噴水のように噴き上がった。この実験に関する記述として誤りを含むものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

① アンモニアを丸底フラスコに捕集するときには上方置換法を用いる。

② ゴム栓がゆるんですき間があると、水が噴き上がらないことがある。

③ 丸底フラスコ内のアンモニアの量が少ないと、噴き上がる水の量が少なくなる。

④ 内側が水でぬれた丸底フラスコを用いると、水が噴き上がらないことがある。

⑤ ビーカーの水に BTB(ブロモチモールブルー)溶液を加えておくと、噴き上がった水は青くなる。

⑥ アンモニアの代わりにメタンを用いても、水が噴き上がる。

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問6 より引用)

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正解 6

実験で起きた現象は、次のように考えられます。

乾いたフラスコ内にアンモニアが充満しているところに、スポイトから水を少量入れました。

アンモニアは非常に水に溶けやすいので、スポイトから入れた水にアンモニア気体の一部が溶け、フラスコ内の圧力が下がってビーカーの水を吸い上げました。

1 〇 アンモニア NH3 の分子量は 17 で、平均分子量が約 28.8 の空気より軽いです。また空気より軽いアンモニアは水に溶けやすいので、上方置換法で捕集します。

2 〇 ゴム栓の隙間から空気が入ると、フラスコ内の圧力が下がらず、水を吸い上げない可能性があります。

3 〇 アンモニアの量が少ないと、フラスコ内の圧力の下がり方が小さく、あまり水を吸い上げません。

4 〇 フラスコ内が水でぬれていると、はじめからアンモニアがフラスコ内の水滴に溶けて、アンモニアが減ってしまいます。

5 〇 フラスコ内に噴き上がった水にアンモニアが溶けると、水は塩基性になります。ブロモチモールブルー溶液は塩基性で青くなるので、水は青くなります。

6 × メタンは水にほとんど溶けないので、スポイトで水を入れてもフラスコ内の圧力は変わらず、水を吸い上げません。

問8(2017追第2問問4)

目的とする濃度の水溶液を調製する方法として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 0.100 mol/L のシュウ酸水溶液をつくるために、12.6 g のシュウ酸二水和物 (COOH)2・2 H2O を水に溶かして 1.00 L とした。

② 0.100 mol/L の塩酸をつくるために、1.00 mol/L の塩酸 10.0 g をとり、水 990 g に加えた。

③ pH 2.0 の硫酸水溶液をつくるために、0.100 mol/L の硫酸 10.0 mL に水を加えて 100 mL とした。

④ 質量パーセント濃度 10.0 % の水酸化ナトリウム水溶液をつくるために、100 g の水酸化ナトリウムを水に溶かして 1.00 L とした。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0   C 12   O 16

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問4 より引用)

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正解 1

1 〇  シュウ酸二水和物 (COOH)2・2 H2O のモル質量は、(12 + 16 × 2 + 1.0) × 2 + (1.0 × 2 + 16) = 126[g/mol]

12.6 g のシュウ酸二水和物の物質量は

\(\frac{12.6[g]}{126[g/mol]}\) = 0.100[mol]

これを水に溶かして 1.00 L の水溶液にしているので、シュウ酸のモル濃度は 0.100 mol/L となります。

2 × 1.00 mol/L の塩酸の密度は 1.00 g/cm3 ではないので、塩酸 10.0 g をとってもその体積がわからず、含まれる HCl の物質量が計算できません。

これに水 990 g を加えても塩化水素 HCl の物質量は不明なので、塩酸のモル濃度もわかりません。

3 × 水を加えたあとの硫酸は 10 倍に希釈されているので、モル濃度が\(\frac{1}{10}\)となり 0.0100 mol/L となります。

硫酸は 2 価の強酸なので、水素イオン濃度は 0.02 mol/L に近くなります。

[H+] = 0.02[mol/L] の水溶液は pH 2 より小さいので、この溶液も pH 2 よりは小さいです。

4 × 質量パーセント濃度を 10.0 % にするためには、100 g の水酸化ナトリウムを水に溶かして 1000 g の水溶液にしなければなりません。

そのため、900 g の水を加えます。

問9(2016本第1問問1)

同位体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 互いに同位体である原子は、質量数が異なる。

② 互いに同位体である原子は、電子数が異なる。

③ 互いに同位体である原子は、同じ元素記号で表される。

④ 原子量は、同位体の相対質量を、存在比を用いて平均した値である。

⑤ 地球上の物質中には、放射性同位体を含むものがある。

(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問1 より引用)

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正解 2

1 〇 同じ元素でも同位体はそれぞれ中性子の数が異なるので、質量数も違います。

2 × 同位体は原子番号が同じ(つまり陽子の数が同じ)で、中性子の数が異なる原子同士のことをいいます。陽子の数が同じなので、電子の数も同じです。

3 〇 同位体は同じ元素のうち、中性子の数が異なる原子のことを指します。

4 〇 原子量は、その元素のすべての同位体を集めたときの平均の質量です。

例えば塩素原子 Cl は、質量数 35(相対質量 34.97) の存在比が約 76 %、質量数 37(相対質量 36.97)の存在比が約 24 %なので、

原子量 = 34.97 × 約0.76 + 36.97 × 約0.24 ≒ 35.45

となります。周期表で確かめても、Cl の原子量は35.452と書かれています。

5 〇 ある元素の同位体が不安定であるために、原子核が崩壊しながら放射線を放出するものを放射性同位体といいます。

質量数 3 の水素原子や、質量数 14 の炭素原子が放射性同位体です。

問10(2016本第1問問2)

次の記述( ab )に当てはまる分子またはイオンとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つずつ選べ。ただし、同じものを選んでもよい。

a 非共有電子対が存在しない

b 共有電子対が 2 組だけ存在する

① H2O   ② OH   ③ NH3

④ NH4+   ⑤ HCl   ⑥ Cl2

(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問2 より引用)

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正解 a 4     b 1

上図は①から⑥の電子式です。

図の通り、

① 共有電子対 2 個と非共有電子対 2 個

② 共有電子対 1 個と非共有電子対 3 個

③ 共有電子対 3 個と非共有電子対 1 個

④ 共有電子対 4 個と非共有電子対 0 個

⑤ 共有電子対 1 個と非共有電子対 3 個

⑥ 共有電子対 1 個と非共有電子対 6 個

となります。

問11(2016追第1問問2)

原子に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① では陽子の数と中性子の数が等しい。

② は同じ元素なので、ほとんど同じ化学的性質を示す。

③ 第 2 周期と第 3 周期の同族元素間の陽子数の差は 8 である。

④ 原子の質量は、原子番号に比例する。

⑤ 多くの元素には、同位体が存在する。

(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問2 より引用)

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正解 4

1 〇

この酸素原子は原子番号 8(陽子の数 8 )で、質量数が 16 です。

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

ですから、中性子の数は 8 です。

2 〇

この2つの炭素原子は、中性子の数が 1 異なる同位体です。

左の炭素原子は質量数 12 で原子番号 6 なので、陽子の数と電子の数は 6 個、中性子の数は 6 個です。

右の炭素原子は質量数 13 で原子番号 6 なので、陽子の数と電子の数は 6 個、中性子の数は 7 個です。

中性子の数だけが異なる原子同士は、同位体と呼ばれます。同位体の化学的性質はほとんど同じです。

3 〇 第 2 周期と第 3 周期の同族元素では、原子番号が 8 ずれています。原子番号に 8 だけ差があるので、陽子の数の差も 8 です。

4 × それぞれの原子の質量は、相対質量として表されます。この相対質量は、質量数とほぼ一致します。

そのため、原子の質量は質量数にほぼ比例します。

一方、質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

となるので、原子の質量は原子番号(陽子の数)に比例しません。

5 〇 記述のとおり、多くの元素は同位体をもちます。

問12(2016追第1問問3)

常温・常圧での単体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① オゾンは酸素の同素体である。

② ナトリウムの単体は電気を通す。

③ 硫黄の単体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄がある。

④ 水銀の単体は液体である。

⑤ 塩素の単体は、原子 1 個からなる分子である。

(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 5

1 〇 オゾン O3 と酸素 O2 は酸素元素の同素体です。

2 〇 ナトリウムは金属です。金属の単体は金属結晶で、結晶内を自由に電子が動けるので電気を通します。

3 〇 硫黄元素の同素体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄があります。

斜方硫黄と単斜硫黄は黄色の S8 で表される環状分子、ゴム状硫黄は黄~黄褐色の鎖状分子です。

4 〇 水銀の単体は水銀の金属結晶です。水銀は常温常圧で液体の状態となる、ただひとつの金属です。

5 × 塩素の単体は、二原子分子の塩素 Cl2 です。2 つの原子が共有結合しています。

問13(2020追第1問問3)

第 3 周期までの典型元素に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 同じ周期の元素では、原子番号の増加とともに、最外殻の電子の数が増加する。

② すべての 18 族元素では、価電子の数が 0 である。

③ 第 2 周期と第 3 周期の同族の元素間では、原子がもつ陽子の総数の差は 8 である。

④ 同族の元素では、原子番号の大きい原子ほどイオン化エネルギーが大きい。

(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 4

1 〇 同じ周期の元素では、原子番号が 1 大きくなると、最外殻電子数は 1 増えます。

2 〇 He は最外殻の電子数が 2 個、Ne と Ar は最外殻の電子数が 8 個で、価電子は 0 個となります。

3 〇 第 2 周期と第 3 周期の同族の元素では原子番号が 8 ずれているので、陽子数の差は 8 個です。

4 × イオン化エネルギーは、電子 1 個を取り去るために必要なエネルギーです。イオン化エネルギーは、周期表の左下の元素が小さい傾向です。

原子核(陽子)から遠い位置にある電子の方が、近い位置にある電子より離れやすいので、同族元素では原子番号が大きいとイオン化エネルギーは小さくなります。

問14(2020追第1問問7)

6 種類の純物質、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、鉄、銅の粉末がある。そのうち 2 種類の純物質と純物質の混合物に対して、図 1 のような分離操作を行った。

この操作で得られたろ液および固体について、次の実験Ⅰを行った。

実験Ⅰ ろ液を白金線の先につけてガスバーナーの外炎に入れたところ、炎の色が赤紫色になった。

実験Ⅱ 固体に塩酸を注いだところ、気体が発生した。この気体は、無色無臭で空気より軽く、水に不溶で、可燃性であった。

ろ液に含まれると固体のに当てはまるものとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つずつ選べ。

① 塩化カリウム   ② 炭酸水素ナトリウム   ③ 炭酸カルシウム

④ 硫酸バリウム   ⑤ 鉄   ⑥ 銅

(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 ア 1     イ 5

6 種類の純物質のうち、水に溶けてろ液に含まれるのは 2 種類です。

塩化カリウム KCl 、炭酸水素ナトリウム NaHCO3 が溶けます。

他の炭酸カルシウム CaCO3 、硫酸バリウム BaSO4 、鉄 Fe 、銅 Cu は水に溶けずに固体のままです。

実験Ⅰでは金属の炎色反応を調べています。

カリウムイオンは赤紫色、ナトリウムイオンは黄色です。炎の色が赤紫色なので、アは塩化カリウムと考えられます。

実験Ⅱについて、塩化カリウム以外の 5 種類の純物質との反応を考えます。

(a) 炭酸水素ナトリウム NaHCO3 に塩酸を加えると、二酸化炭素が発生します。

NaHCO3 + HCl  →  NaCl + H2O + CO2

二酸化炭素は空気より重く、水に少し溶け、燃焼しません。

(b) 炭酸カルシウム CaCO3 に塩酸を加えると、二酸化炭素が発生します。

CaCO3 + 2 HCl  →  CaCl2 + H2O + CO2

(c) 硫酸バリウム BaSO4 に塩酸を加えても反応しません。

(d) 鉄 Fe に塩酸を加えると、水素が発生します。

Fe + 2 HCl → FeCl2 + H2

水素は無色無臭で空気より軽く、水にほとんど溶けず、爆発的に燃焼します。したがってイは鉄です。

(e) 銅 Cu に塩酸を加えても反応しません。硝酸など酸化力のある酸に溶けます。

化学と人間生活(2)

ポイント

ビタミン C 、食塩、塩素、洗剤、酸性雨について学びます。

食品・日用品・環境問題

食品添加物

ビタミン C(アスコルビン酸)は、水によく溶ける安価で安全性の高い物質です。ビタミン C は還元作用があるので、還元剤として使われます。

ビタミン C を食品添加物として使うと、食品が酸化されて風味が劣化するのを防ぐことができます。この場合は酸化防止剤と表示されることが多いです。

ビタミン C の効果は、レモン果汁をリンゴの切り口にかけるとリンゴの変色が防げるという身近な例で、実感できるでしょう。

(レモン果汁に含まれるビタミン C が、酸化によるリンゴの変色を防ぎます。)

食塩

食塩の主成分は塩化ナトリウムで、人間の生存に必須な物質です。ただし、食塩(塩化ナトリウム)を過剰に摂取すると、高血圧など健康に害となるおそれもあります。

調味料など食品中の塩分量を認識して、食塩を摂り過ぎないように食事に気を配りましょう。

塩素

塩素は黄緑色の有毒な気体です。塩素には殺菌や漂白の作用があります

塩素の殺菌作用を利用して、塩素は水道水の消毒に使われています。家庭の蛇口から出る水道水は、人体に影響がなく、かつ細菌を殺菌できるような塩素濃度に調整されています。

洗剤

セッケンのような洗剤には、水になじみやすい部分と油になじみやすい部分の両方をもつ分子が含まれています。

このような分子を水に溶かすと、水になじみやすい部分を外側に、油になじみやすい部分を内側にしてまとまります。この分子のまとまりをミセルといいます。

この分子のミセルが、衣服の繊維に付いた汚れを取り除きます。汚れはミセルの内側の油になじみやすい部分に取り込まれ、衣服の繊維から汚れが離れます。

洗浄効果が最も高くなる洗剤の濃度は決まっているので、洗剤は使い過ぎずに決められた使用量を守りましょう。使い過ぎると下水を通じて、河川や海の環境に悪影響を与えます。

酸性雨

空気中には二酸化炭素が含まれていて、雨水は二酸化炭素が溶け込んでいます。二酸化炭素が溶けた水を炭酸水といいますが、炭酸水は弱酸性を示します。

そのため、自然な状態でも雨水は弱酸性です。空気中の二酸化炭素が十分に雨水に溶け込んだとき、pH は 5.6 程度になります。

化石燃料を燃焼させると、二酸化窒素や二酸化硫黄など、窒素酸化物や硫黄酸化物が排出されます。これらが空気中で雨水に溶けると、酸性の雨となります。

pH が 5.6 より小さい酸性の状態になった雨を、酸性雨といいます。酸性雨は生態系に悪影響を与えたり、建築物の腐食を進めるなどの問題があります。

実践問題

問1(2020本第1問問7)

生活に関わる物質の記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 二酸化ケイ素は、ボーキサイトの主成分であり、ガラスやシリカゲルの原料として使用される。

② 塩素は、殺菌作用があるので、浄水場で水の消毒に使用されている。

③ ポリエチレンは、炭素と水素だけからなる高分子化合物で、ポリ袋などに用いられる。

④ 白金は、空気中で化学的に変化しにくく、宝飾品に用いられる。

(2020年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 1

1 × ボーキサイトの主成分は Al2O3・nH2O です。製錬されるアルミニウムの原料となるのがボーキサイトです。

ガラス、シリカゲル、石英、ケイ砂、水晶などの原料となるのが二酸化ケイ素です。

2 〇 塩素を水に溶かすと次亜塩素酸 HClO が生成します。次亜塩素酸には殺菌、漂白作用があります。

Cl2 + H2O  →  HCl + HClO

3 〇 エチレン C2H4 が連続的に反応してできた高分子がポリエチレンです。

4 〇 白金はイオン化傾向がとても小さいので、反応性に乏しい金属です。このように、白金や金は安定した金属元素です。

問2(2019本第1問問7)

イオンからなる身のまわりの物質に関する次の記述( ac )に当てはまるものを、下の①~⑤のうちから一つずつ選べ。

a 水に溶けると塩基性を示し、ベーキングパウダー(ふくらし粉)に主成分として含まれる。

b 水にも塩酸にもきわめて溶けにくく、胃の X 線(レントゲン)撮影の造影剤に用いられる。

c 水に溶けると中性を示し、乾燥材に用いられる。

① 塩化カルシウム

② 炭酸水素ナトリウム

③ 炭酸ナトリウム

④ 炭酸カルシウム

⑤ 硫酸バリウム

(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 a 2     b 5     c 1

a 2 炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は重曹という名称で利用されています。加熱すると CO2 が発生するのでパンなどを膨らませます。

b 5 硫酸バリウム BaSO4 は水溶液中で沈殿します。

c 1 塩化カルシウム CaCl2 は乾燥剤や凍結防止剤として使用されます。

炭酸ナトリウム Na2CO3 は水に溶けると塩基性、炭酸カルシウム CaCO3 は水に溶けにくいです。

問3(2018本第1問問7)

物質の用途に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 塩化ナトリウムは、塩素系漂白剤の主成分として利用されている。

② アルミニウムは、1 円硬貨や飲料用の缶の材料として用いられている。

③ 銅は、電線や合金の材料として用いられている。

④ ポリエチレンテレフタレートは、飲料用ボトルに用いられている。

⑤ メタンは、都市ガスに利用されている。

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 1

1 × 次亜塩素酸ナトリウム NaClO が塩素性漂白剤の主成分です。

2 〇 アルミニウムは 1 円硬貨やアルミ缶の材料です。

3 〇 銅は電気伝導性が大きい金属です。また、黄銅(真ちゅう)・青銅(ブロンズ)・白銅のように合金の材料となっています。

4 〇 Pポリ Eエチレン Tテレフタラートが、PETボトルの原料です。

5 〇 メタンは天然ガスから得られる無色無臭の気体で、都市ガスなどの燃料に利用されています。

問4(2017本第1問問7)

日常生活に関連する物質の記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① アルミニウムの製造に必要なエネルギーは、鉱石から製錬するより、リサイクルする方が節約できる

② 油で揚げたスナック菓子の袋に窒素が充填(じゅうてん)されているのは、油が酸化されるのを防ぐためである

③ 塩素が水道水に加えられているのは、pH を調整するためである

④ プラスチックの廃棄が環境問題を引き起こすのは、ほとんどのプラスチックが自然界で分解されにくいからである

⑤ 雨水には空気中の二酸化炭素が溶けているため、大気汚染の影響がなくてもその pH は 7 より小さい

⑥ 一般の洗剤には、水になじみやすい部分と油になじみやすい部分とをあわせもつ分子が含まれる

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 3

1 〇 アルミニウムはボーキサイトから電気分解によって製錬されますが、このとき大量の電力を消費します。リサイクルした場合、必要なエネルギーは製錬の約 3 %とされています。

2 〇 空気中の酸素で酸化されるのを防ぎます。

3 × 水道水に塩素が含まれているのは、殺菌のためです。塩素を水に溶かすと、殺菌・漂白作用のある次亜塩素酸が生成します。

Cl2 + H2O  →  HCl + HClO

4 〇 プラスチックは耐久性や耐食性が非常に高いので、自然界ではほとんど分解されません。

5 〇 雨水には空気中の二酸化炭素が溶けており、雨水に十分量の二酸化炭素が溶けたときの pH は約 5.6 となっています。

6 〇 洗剤には水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(疎水基)があり、油汚れを疎水基が取り込んで汚れを落とします。

問5(2017追第1問問7)

日常生活で用いられている物質に関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① ビタミン C(アスコルビン酸)は、食品の着色料として用いられる

② ステンレス鋼は、鉄の合金でありさびにくい

③ プラスチックは、分子量の小さな分子が重合してできた高分子化合物からできている

④ 炭酸水素ナトリウムは、加熱すると気体を発生するのでベーキングパウダーとして調理に用いられる。

⑤ 塩化カルシウムは、除湿剤や乾燥剤として用いられる

⑥ アンモニアは、肥料の原料として用いられる

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 1

1 × ビタミンC(アスコルビン酸)は酸化防止剤として食品に含まれます。

2 〇 ステンレス鋼は鉄 Fe 、クロム Cr 、ニッケル Ni の合金で、さびにくい素材です。

3 〇 プラスチックは小さな分子が繰り返し反応して結合することで、大きな分子となりできています。

4 〇 加熱すると二酸化炭素を発生させ、食品をふくらませることができます。

2 NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

5 〇 塩化カルシウムは水分を吸収するので、乾燥剤として使われます。

6 〇 アンモニア NH3 は植物の栄養素である窒素の原料となります。アンモニアから生成した塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素などが肥料となります。

問6(2015追第1問問7)

生活に関わる物質の記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① ステンレス鋼は、鉄とアルミニウムの合金であり、さびにくいため流し台などに用いられる。

② セッケンなどの洗剤には、その構造の中に水になじみやすい部分と油になじみやすい部分がある

③ 塩素は、水道水などの殺菌に利用されている

④ ビタミン C(アスコルビン酸)は、食品の酸化防止剤として用いられる

⑤ 生石灰(酸化カルシウム)は、吸湿性が強いので、焼き海苔(のり)などの保存に用いられる。

(2015年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 1

1 × ステンレス鋼は、鉄とクロムやニッケルなどとの合金です。

2 〇 セッケンなどの洗剤は細長い分子構造をしており、水になじみやすい親水の部分と水になじみにくい疎水の部分があります。

油汚れは親水の部分に溶けにくく、疎水の部分に溶けやすいです。そのため、油汚れを疎水の部分が取り囲んで除き、洗剤が球状になって汚れを落とします。

3 〇 水道水には塩素 Cl2 が添加され、殺菌に使われています。

Cl2 は水中で強い酸化剤の次亜塩素酸 HClO となります。

Cl2 + H2O → HCl + HClO

この次亜塩素酸 HClO とイオン化した次亜塩素酸イオン ClO は、病原微生物に対し殺菌作用があるので、細菌性赤痢やコレラなどを防ぐことができます。

4 〇 ビタミン C は、ビタミン C 自体が酸化されやすい還元剤です。そのためビタミン C を添加して、ビタミン C 自身が酸化されることで、食品の酸化を防止します。

5 〇 生石灰 CaO は吸湿性が強く、乾燥剤として使われます。

水との反応は以下の通りです。

CaO + H2O → Ca(OH)2

化学と人間生活(1)

ポイント

銅・鉄・アルミニウム・プラスチックの特徴を学びます。

「化学と人間生活」という学習単位は、中学理科と高校化学のつなぎとして、化学基礎の最初に学びます。

しかしながら、その内容は化学基礎を学んだあとの方が理解しやすいです。また「化学と人間生活」の学習量は少ないものの、共通テストやセンター試験では毎年 1 問程度出題されています。

そこで学習しやすいように、化学基礎を学び終わったこの順序で「化学と人間生活」を勉強してみましょう。

「化学と人間生活」では、さまざまな化学の話題が取り上げられているので、それらを一つずつ勉強したあと、共通テスト(センター試験)の過去問の問題演習で理解を深めていきます。

素材

多くの金属の単体は銀白色ですが、銅と金だけが有色(銅は赤色)です。

金属の中では、電気伝導性や熱伝導性は 2 番目に高い( 1 番は銀)です。銀より安価なので、工業の用途でよく使われます。

単体はやわらかいですが、合金をつくると強度が増します。

銅とスズの合金は青銅で、銅像や 10 円硬貨として使われています。

銅と亜鉛の合金は真ちゅうで、楽器や 5 円硬貨として使われています。

銅とニッケルの合金は白銅で、50 円硬貨や 100 円硬貨として使われています。

銅の青緑色のさびは、緑青(ろくしょう)と呼ばれます。

現在、最も多く使われている金属です。単体は強度が低くさびやすいので、他の元素を利用することで強度や耐久性を高めています。

鉄に炭素を 2 %ほど加えたものが鋼(こう)で、鉄の単体より強度が高まり、曲げたり伸ばしたりといった加工もできるようになります。

鉄の表面を亜鉛の薄い膜で覆ったものを、トタンといいます。Zn の方が Fe よりイオン化傾向が大きく、Zn が Fe より先に腐食して Fe が保護されるので、トタンは耐食性があります。

鉄鉱石は酸化鉄が含まれているので、酸素を取り除く還元反応を起こすため、溶鉱炉などの設備で製鉄が行われます。

アルミニウム

現在、鉄に次いで多く使われる金属です。アルミニウムは軽くて加工しやすく、表面に酸化被膜ができて内部が保護されるといった性質があり、広く使われます

アルミニウムは鉱石のボーキサイトを原料として、酸化アルミニウムを大量の電力を消費しながら溶解し電気分解することで得られます

アルミニウムを再生利用するのに必要なエネルギーは、鉱石からつくる場合の約 3 %と低いので、多くがリサイクルされています

アルミニウムに銅やマンガンなどを混合した合金がジュラルミンで、航空機の機体などに使われます。

プラスチック

プラスチックは、石油を原料としてつくられる有機物(有機化合物)です。

石油をもとにつくられた小さな分子を重合し、大きな分子(高分子化合物)にすることでプラスチックができます。なお、重合とは連続して化学反応させることです。

プラスチックは軽くて加工しやすく、耐久性や耐食性が高いので、日常生活に欠かせない素材となりました。

耐久性・耐食性が極めて高いプラスチックは、廃棄するときに環境問題が発生するという課題があります。大量のプラスチックの廃棄物を、埋め立てや焼却で処分し続けることはできません。

プラスチックの利用にあたっては、リサイクルできるようなシステムの構築が求められています。

実践問題

問1(2018追第1問問7)

日常の生活で使われる金属に関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① スズは、青銅の原料として用いられる。

② アルミニウムは、ジュラルミンの原料として用いられる。

③ 鉄は、湿った空気中では赤さびを生じる

④ 金は、空気中で化学的に変化しにくく、宝飾品に用いられる。

⑤ 銀は、電気伝導性や熱伝導性が小さい

(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 5

1 〇 青銅(ブロンズ)は銅とスズの合金です。

2 〇 アルミニウムは密度の小さい金属で、合金の材料に使われます。ジュラルミンはアルミニウムのほか銅やマグネシウムなどが含まれる合金です。

3 〇 鉄は湿った空気中で赤褐色にさびて酸化鉄(Ⅲ) Fe2O3 となります。

4 〇 金は化学的に安定した金属です。

5 × 銀は電気や熱を伝えやすい金属です。

問2(2016追第1問問5)

身近に使われる鉄やアルミニウムに関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 鉄は、湿った空気中では容易に錆びる(さびる)

② 銑鉄は、炭素含有量を減らすと、かたくてねばり強い鋼になる。

③ アルミニウムは、鉄よりも密度が小さい

④ アルミニウムは、鉄と同様、鉱石をコークスとともに加熱して得られる

⑤ アルミニウムを含む合金には、航空機材料として用いられるほど強くて軽いものがある

(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問5 より引用)

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正解 4

1 〇 湿った空気中に鉄を放置すると、赤さび Fe2O3 が生じます。

2 〇 銑鉄には炭素が 4 %ほど含まれますが、炭素の含有量を減らすと割れにくい鋼になります。

3 〇 アルミニウムは密度の小さい軽金属です。

4 × アルミニウムは、ボーキサイトから得られる酸化アルミニウムを高温で融解し、電気分解することでつくられます。

5 〇 アルミニウムに銅、マグネシウム、マンガンなどを加えた合金であるジュラルミンは、軽くて強度がある素材です。

問3(2015本第1問問7)

日常の生活に関わる物質の記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① プラスチックは、おもに石油からつくり出される高分子化合物である

② 白金は、空気中で化学的に変化しにくいため、宝飾品に用いられる。

③ ダイヤモンドは、非常に硬いため、研磨剤に用いられる。

④ 鉄は、鉄鉱石をコークスで酸化して得られる

⑤ アルミニウムは、ボーキサイトからの製錬に多量の電力を必要とするため、回収して再利用する。

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 4

1 〇 プラスチックは主に石油を原料とする有機化合物であり、分子量の大きな高分子化合物です。

2 〇 白金は化学的に安定な金属です。

3 〇 非常に硬く融点の高いダイヤモンドは、共有結合でできた結晶です。

4 × 鉄は還元されて得られます。鉄鉱石は Fe2O3 のような酸化鉄が主成分です。

5 〇 アルミニウムは高温下での電気分解で得られますが、このとき大きな電力が必要です。

問4(2018試第1問問5)

身近に使われている金属に関する次の ac の文中の空欄 [ ア ] ~ [ ウ ] に入る語の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

a [ ア ] は、電気をよく通し、導線に使われている。

b [ イ ] は、最も生産量が多く、橋、ビルや機械器具の構造材料に使われている。

c [ ウ ] は、軽く、飲料用缶やサッシ(窓枠)に使われている。

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第1問問5 より引用)

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正解 6

銅 Cu は電気や熱の伝導性が高く、導線に使用されます。

鉄 Fe は建造物の鉄骨や鉄筋として、構造材料に使われます。

アルミニウム Al は密度が小さい軽い金属です。飲料用の缶やサッシ、1 円硬貨などに使われます。

酸化還元反応 章末問題

確認テスト

問1

赤字の原子の酸化数はいくつでしょうか。

  1. SO2
  2. H2O2
  3. NH4+
  4. Fe2O3
  5. Cr2O72-
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  1. +4
  2. -1
  3. -3
  4. +3
  5. +6

問2

次の反応で、下線を引いた原子が酸化されていれば A を、還元されていれば B を選びましょう。

1.  2 CO + O2  →  2 CO2

2.  2 H2S + O2  →  2 S + 2H2O

3.  2 H2S + SO2  →  3 S + 2H2O

4.  Cu + 4 HNO3  →  2 NO2 + Cu(NO3)2 + 2 H2O

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1. A(酸化数は +2 → +4 )

2. A(酸化数は -2 → 0 )

3. B(酸化数は +4 → 0 )

4. A(酸化数は 0 → +2)

問3

次の反応で、赤字の化合物は酸化剤ですか、還元剤ですか。

1.  2 KI + Cl2  →  2 KCl + I2

2.  2 H2S + O2  →  2 S + 2H2O

3.  2 H2S + SO2  →  3 S + 2H2O

4.  Cu + 4 HNO3  →  2 NO2 + Cu(NO3)2 + 2 H2O

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1. Cl2 の Cl 原子の酸化数を 0 から -1 へと還元させているので、KI は還元剤です。

2. O2 の O 原子の酸化数を 0 から -2 へと還元させているので、H2S は還元剤です。

3. H2S の S 原子の酸化数を -2 から 0 へと酸化させているので、SO2 は酸化剤です。

4. Cu 原子の酸化数は、0 から +2 へと酸化されているので、相手を還元しています。ですから、Cu は還元剤です。

( HNO3 から NO2 に変化した N 原子の酸化数は、+5 から +4 へと還元されています。このことからも、Cu が還元剤であることがわかります。)

問4

硫酸で酸性にした過酸化水素水に、過マンガン酸カリウム水溶液を滴下します。過酸化水素水がすべて反応すると、過マンガン酸カリウム水溶液の赤紫色が消えずに残ります。

このときの過マンガン酸カリウムと過酸化水素の半反応式を書きましょう。

1. KMnO4 は反応して Mn2+ に変化します。KMnO4 の半反応式は?

2. H2O2 は反応して O2 に変化します。H2O2 の半反応式は?

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1. 過マンガン酸カリウム KMnO4 が酸化剤としてはたらき、Mn2+ が生成する半反応式を書きましょう。

① 酸化剤の過マンガン酸カリウム KMnO4 は左辺に、発生する Mn2+ は右辺に書きます。K は反応に関与しないので省略します。

MnO4 → Mn2+

② 両辺の酸素原子 O の数を等しくするため、右辺に H2O を 4 個加えます。

MnO4 → Mn2+ + 4 H2O

③ 両辺の水素原子 H の数を等しくするため、左辺に H+ を 8 個加えます。

MnO4 + 8 H+ → Mn2+ + 4 H2O

④ 両辺の電荷をつり合わせるため、左辺に電子 e を 5 個加えます。

MnO4 + 8 H+ + 5 e  →  Mn2+ + 4 H2O

これで過マンガン酸カリウム KMnO4 の半反応式が完成しました。

2. 過酸化水素 H2O2 が還元剤としてはたらき、O2 が発生する半反応式を書きましょう。

① 還元剤 H2O2 は左辺、変化して生成する O2 が右辺です。

H2O2 → O2

② 両辺の酸素原子 O の数を比べますが、すでに等しいです。

H2O2 → O2

③ 両辺の水素原子 H の数を等しくするため、右辺に H+ を 2 個加えます。

H2O2 → O2 + 2 H+

④ 両辺の電荷をつり合わせるため、右辺に電子 e を 2 個加えます。

H2O2 → O2 + 2 H+ + 2 e

これで過酸化水素 H2O2 (還元剤)の半反応式が完成しました。

問5

問 4 で過マンガン酸カリウムと過酸化水素の半反応式を書きました。

これをもとに、硫酸で酸性にした過酸化水素水に、過マンガン酸カリウム水溶液を滴下したときの酸化還元反応式を考えましょう。

MnO4 + 8 H+ + 5 e  →  Mn2+ + 4 H2O  ‥‥(A)

H2O2 → O2 + 2 H+ + 2 e  ‥‥(B)

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酸化還元反応では、酸化剤が得る電子の数と、還元剤が失う電子の数は等しくなります。そこで、2 つの半反応式で受け渡す電子の数を揃えて、両式を足し合わせることでイオン反応式がつくれます。

(A)式を 2 倍、(B)式を 5 倍して両式を足し合わせると、電子 e が消去できます。

イオン反応式は以下のようになります。

2 MnO4 + 5 H2O2 + 6 H+  →  2 Mn2+ + 5 O2 + 8 H2O

この水溶液中には K+ イオンと SO42- イオンがあるので、両辺に K+ を 2 個、SO42- を 3 個加えると、電気的に中性な酸化還元反応式ができます。

2 KMnO4 + 5 H2O2 + 3 H2SO4  →  2 MnSO4 + 5 O2 + 8 H2O + K2SO4

問6

金属に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑨のうちから三つ選びましょう。

① ナトリウム Na は、常温で水と反応して水酸化物になり、水素を発生する。

② ナトリウム Na は、乾いた空気中でもすぐに酸化して酸化物となる。

③ アルミニウム Al は、塩酸と反応して水素を発生する。

④ アルミニウム Al は、高温の水蒸気と反応して酸化物になり、水素を発生する。

⑤ アルミニウム Al は、濃硝酸と反応して二酸化窒素を発生する。

⑥ スズ Sn は、高温の水蒸気と反応して酸化物になり、水素を発生する。

⑦ スズ Sn は、希硫酸と反応して水素を発生する。

⑧ 銅 Cu は、塩酸には溶けないが、希硝酸と反応して一酸化窒素を発生する。

⑨ 金 Au は、熱濃硫酸に溶ける。

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5、6、9

簡単にまとめると、イオン化傾向が大きい金属は酸化されやすいので反応性が高く、イオン化傾向が小さい金属は酸化されにくく反応性に乏しいです。

1 〇 ナトリウムは常温で水と反応し水酸化ナトリウムとなり、水素を発生します。

2 Na + 2 H2O → 2 NaOH + H2

2 〇 ナトリウムは空気中で速やかに酸化されます。

4 Na + O2 → 2 Na2O

3 〇 アルミニウムは塩酸と反応して、水素を発生します。

2 Al + 6 HCl → 2 AlCl3 + 3 H2

4 〇 アルミニウムは高温の水蒸気と反応して、水素を発生します。

2 Al + 3 H2O → Al2O3 + 3 H2

5 × アルミニウムは酸に溶けますが、濃硝酸にふれたときは不動態となるので溶けません。

6 × スズは水とは反応しません。

7 〇 スズは希硫酸と反応して、水素を発生します。

Sn + H2SO4 → SnSO4 + H2

8 〇 銅は塩酸や希硫酸などには溶けませんが、酸化力のある希硝酸には溶けて一酸化窒素を発生します。

3 Cu + 8 HNO3 → 3 Cu(NO3)2 + 2 NO + 4 H2O

9 × 金は熱濃硫酸と反応しません。金は王水には溶けます。

実践問題

問1(2019本第2問問6)

酸化と還元に関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 臭素と水素が反応して臭化水素が生成するとき、臭素原子の酸化数は増加する

② 希硫酸を電気分解すると、水素イオンが還元されて、気体の水素が発生する。

③ ナトリウムが水と反応すると、ナトリウムが酸化されて、水酸化ナトリウムが生成する。

④ 鉛蓄電池の放電では、 PbO2 が還元され、硫酸イオンと反応して PbSO4 が生成する。

(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

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正解 1

1 ×

この反応式は

Br2 + H2 → 2 HBr

臭素の酸化数は 0 → -1 であり、還元されています。

2 〇

陰極では

2 H+ + 2 e → H2

の反応が起きています。

水素の酸化数は +1 → 0 であり、還元されています。

3 〇

この反応式は

2 Na + 2 H2O → 2 NaOH + H2

ナトリウムの酸化数は 0 → +1 であり、酸化されています。

4 〇

鉛蓄電池の放電時の正極の反応は

PbO2 + 4 H+ + SO42- + 2 e → PbSO4 + 2 H2O

正極の Pb の酸化数は +4 → +2 であり、還元されています。

問2(2019追第1問問7)

酸化銅(Ⅱ)とポリエチレンを用いた次の実験を行った。この実験に関する次の問い( ab )に答えよ。

実験 酸化銅(Ⅱ)の粉末と細かく切ったポリエチレンを試験管 A に入れ、図 1 のようにして十分に加熱したところ、試験管 A の内壁に水滴がついた。また、発生した気体を石灰水の入った試験管 B に導いたところ、石灰水が白く濁った。

a 石灰水を白く濁らせる原因となった気体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 水に溶かすと、その水溶液は塩基性を示す。

② 分子内の結合には極性がある。

③ 分子中に酸化数が + 4 の原子がある。

④ シュウ酸の酸化でも生成する。

b 試験管 A に入れた酸化銅(Ⅱ)は、すべて銅になった。得られた銅の質量が 0.32 g のとき、用いた酸化銅(Ⅱ)の質量は何 g か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 0.24 g   ② 0.36 g   ③ 0.40 g   ④ 0.48 g   ⑤ 0.72 g

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

O 16   Cu 64

(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問7 より引用)

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正解 a 1     b 3

a

石灰水を白濁させる気体は二酸化炭素です。

石灰水には水酸化カルシウム Ca(OH)2 が溶けていて、CO2 と反応して水に溶けにくい炭酸カルシウム CaCO3 が生成します。

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

炭酸カルシウム CaCO3 が水に溶けにくいので、水溶液が白濁します。

1 × 二酸化炭素が溶けた炭酸水は弱酸性です。

2 〇 C = O 結合には極性があります。炭素原子が少し正電荷 δ+ 、酸素原子が少し負電荷 δ- をもちます。

3 〇 CO2 の炭素原子は、酸化数が +4 です。

4 〇 シュウ酸 H2C2O4 、(COOH)2 と書いてもいいです、の酸化では

H2C2O4  →  2 CO2 + 2 H+ + 2 e

という半反応式になります。

b

実験結果から、酸化銅(Ⅱ)は還元されて銅となりました。

また、CH2 の構造が繰り返しているポリエチレンー(ーCH2ーCH2ー)nーは酸化され、水 H2O と二酸化炭素 CO2 が生成しました。

ポリエチレンが分解した生成物が還元剤としてはたらくと考えられます。

3 CuO + ( C + 2H )  →  3 Cu + CO2 + H2O

酸化銅(Ⅱ)と、ポリエチレンの分解物( C や H )が反応物です。銅 Cu と 石灰水を白濁させる二酸化炭素 CO2 と試験管内壁の水滴 H2O が生成物です。

試験管 A に入れた酸化銅(Ⅱ)は、すべて銅になりました。このとき、1 mol の酸化銅(Ⅱ)から 1 mol の銅が生成しています。

銅のモル質量は 64 g/mol なので、0.32 g の銅の物質量は

\(\frac{0.32[g]}{64[g/mol]}\) = 0.0050[mol]

酸化銅(Ⅱ)のモル質量は 80 g/mol ですから、求める質量は

80[g/mol] × 0.0050[mol] = 0.40[g]

問3(2016本第2問問6)

酸化還元反応を含まないものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 硫酸で酸性にした赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液にシュウ酸水溶液を加えると、ほぼ無色の溶液になった。

② 常温の水にナトリウムを加えると、激しく反応して水素が発生した。

③ 銅線を空気中で加熱すると、表面が黒くなった。

④ 硝酸銀水溶液に食塩水を加えると、白色沈殿が生成した。

⑤ 硫酸で酸性にした無色のヨウ化カリウム水溶液に過酸化水素水を加えると、褐色の溶液となった。

(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

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正解 4

1 〇 過マンガン酸カリウム水溶液が酸化剤として、シュウ酸が還元剤として酸化還元反応が起こります。この反応で、赤紫色の MnO4 がほぼ無色の Mn2+ となります。

過マンガン酸カリウムが酸化剤としてはたらきます。

半反応式は

MnO4 + 8 H+ + 5 e → Mn2+ + 4 H2O  ‥‥(A)

Mn の酸化数が +7 から +2 へ変化しています。過マンガン酸イオン MnO4 は赤紫色で、マンガン(Ⅱ)イオン Mn2+ はほぼ無色なので、酸化還元反応が進んだことがわかります。

シュウ酸は還元剤としてはたらきます。半反応式は

H2C2O4  →  2 CO2 + 2 H+ + 2 e  ‥‥(B)

C の酸化数が +3 から +4 へ変化しています。

反応式を完成させるには (A)式 × 2 と (B)式 × 5 を両辺足し合わせます。

2 MnO4 + 5 H2C2O4 + 6 H+  →  10 CO2 + 2 Mn2+ + 8 H2O

カリウムイオン( K+ を2個) と硫酸イオン( SO42- を3個) を両辺に加えて、電荷を中性にして完成です。

2 KMnO4 + 5 H2C2O4 + 3 H2SO4  →  10 CO2 + 2 MnSO4 + 8 H2O + K2SO4

2 〇 Na が還元剤としてはたらきます。反応式は次のようになります。

2 Na + 2 H2O → 2 NaOH + H2

Na の酸化数は 0 → +1 に変化しています。

3 〇 銅が酸化されて酸化銅(Ⅱ)になっています。

2 Cu + O2 → 2 CuO

銅の酸化数は 0 → +2 です。

4 × 硝酸銀水溶液 AgNO3 の Ag+ イオンと、食塩水 NaCl の Cl イオンが反応します。

塩化銀の沈殿では、酸化数の変化はありません。

Ag+ + Cl → AgCl

5 〇 過酸化水素が酸化剤として、ヨウ化カリウムが還元剤としてはたらきます。

半反応式は

2 I → I2 + 2 e

H2O2 + 2 H+ + 2 e → 2 H2O

半反応式の両辺を足し合わせると

H2O2 + 2 I + 2 H+  →  I2 + 2 H2O

カリウムイオン( K+ を2個)と、硫酸イオン( SO42- )を両辺に加えて、電気的に中性にすれば反応式は完成です。

H2O2 + 2 KI + H2SO4  →  I2 + 2 H2O + K2SO4

生成物のヨウ素 I2 と水溶液中のヨウ化物イオン I から、褐色の三ヨウ化物イオン I3 が生じます。

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