酸化数

ポイント

物質が変化するとき、酸化や還元の反応がわかりやすいように、酸化数という値を考えます。

酸化還元反応は電子の受け渡しのことなので、酸化数は原子がもつ電子の数から決めます。

① 単体の原子は酸化数が 0 です。

② 化合物中の水素原子 H の酸化数は +1 、酸素原子 O の酸化数は -2 とします。

③ 化合物を構成する各原子の酸化数の総和は 0 です。

④ 単原子のイオンの酸化数は、イオンの価数と等しいです。

⑤ 多原子イオンでは、各原子の酸化数の総和と、多原子イオンの電荷が等しいです。

⑥ その他、いくつか重要な原子の酸化数があります。

化学反応のあと、酸化数が増えた物質は酸化されています。酸化数が減った物質は還元されています。

酸化数

物質が変化するとき、酸化や還元の反応がわかりやすいように、酸化数という値を考えます。

酸化数は、いくつかのルールから簡単に求められます。その酸化数の変化を見ることで、酸化還元反応を知ることができます。

酸化数のルール

酸化は物質が電子を失うこと、還元は物質が電子を受け取ることです。つまり酸化と還元の反応は電子の受け渡しのことなので、原子がもつ電子の数の変化から、酸化数を考えます

まず、単体の原子は電気的に中性なので、酸化数はゼロとします。(①)

化合物中の水素原子 H の酸化数は +1 、酸素原子 O の酸化数は -2 とします。(②)

次に、化合物全体の酸化数もゼロとします。(③)

原子が酸化されて電子を失うと、陽イオンとなります。そこで電子を失った数である陽イオンの価数を、プラスの酸化数とします。

逆に還元されて電子を受け取ると、陰イオンになります。そこで陰イオンの価数を、マイナスの酸化数とします。(④)

多原子イオンでは、各原子の酸化数の総和と、多原子イオンの電荷が等しいとします。(⑤)

そのほか、いくつかの重要な原子の酸化数を覚えましょう。(⑥)

それでは、具体的にルールを確認しましょう。

① 単体の原子は酸化数 0

単体の原子は電気的に中性なので、電子を受け取ったり失ったりした状態ではありません。そこで酸化数はゼロとします。

例えば、単体である水素分子 H2 を構成する水素原子 H の酸化数は 0 です。

同様に、窒素分子 N2 のなかの窒素原子 N の酸化数は 0 、酸素分子 O2 のなかの酸素原子 O の酸化数は 0 、金属の単体であるマグネシウム Mg のマグネシウム原子 Mg の酸化数は 0 、鉄 Fe の鉄原子 Fe の酸化数は 0 など、すべてゼロです。

② 化合物中の水素原子 H の酸化数は +1 で、酸素原子 O の酸化数は -2

化合物を構成している水素原子 H の酸化数は +1 とします。また、化合物を構成している酸素原子 O の酸化数は -2 とします。

例えば水分子 H2O ならば、H の酸化数は +1 、O の酸化数は -2 です。

他の化合物でも同じなので、硝酸 HNO3 のなかの水素原子 H の酸化数は +1 、酸素原子 O の酸化数は -2 です。

二酸化硫黄 SO2 のなかの酸素原子 O の酸化数は -2 です。

アンモニア NH3 のなかの水素原子 H の酸化数は +1 です。

③ 化合物全体の酸化数は 0

化合物を構成しているすべての原子の酸化数を加えたとき、その総和はゼロとします。

例えば、水分子 H2O 全体の酸化数は 0 です。

それでは、各原子の酸化数の総和を確認します。

水素原子の酸化数は +1 で、分子中に水素原子は 2 個あります。酸素原子の酸化数は -2 なので、これらの総和は

(+1) × 2 + (-2) = 0

となり、ルールどおりに水分子 H2O 全体で酸化数はゼロでした。

②と③のルールを使えば、化合物中の原子の酸化数を計算できます。

硝酸 HNO3 のなかの窒素原子 N の酸化数を求めます。

HNO3 全体では酸化数の総和は 0 です。酸化数 +1 の水素原子が 1 個、酸化数 -2 の酸素原子が 3 個含まれているので、窒素原子の酸化数を N とすると、

+1 + N + (-2) × 3 = 0

と表されます。

N = +5 なので、窒素原子 N の酸化数は +5 です。

二酸化硫黄 SO2 の硫黄原子 S の酸化数を求めます。

SO2 全体では酸化数の総和は 0 です。酸化数 -2 の酸素原子が 2 個含まれているので、硫黄原子の酸化数を S とすると、

S + (-2) × 2 = 0

と表されます。

S = +4 なので、硫黄原子 S の酸化数は +4 です。

アンモニア NH3 のなかの窒素原子 N の酸化数を求めます。

NH3 全体では酸化数の総和は 0 です。酸化数 +1 の水素原子が 3 個含まれているので、窒素原子の酸化数を N とすると、

N + (+1) × 3 = 0

と表されます。

N = -3 なので、窒素原子 N の酸化数は -3 です。

④ 単原子のイオンの酸化数は、イオンの価数と等しい

原子が酸化されて電子を失うと、陽イオンとなります。そこで電子を失った数である陽イオンの価数を、プラスの酸化数とします。

例えばナトリウムイオン Na+ は、1 個の電子を失って 1 価の陽イオンになっているので、この Na の酸化数は +1 です。

同様にマグネシウムイオン Mg2+ は 2 価の陽イオンなので、この Mg の酸化数は +2 です。

還元されて電子を受け取ると、陰イオンになります。そこで陰イオンの価数を、マイナスの酸化数とします。

例えば、塩化物イオン Cl は 1 個の電子を受け取って 1 価の陰イオンになっているので、この Cl の酸化数は -1 です。

同様に硫化物イオン S2- は 2 価の陰イオンなので、この S の酸化数は -2 です。

⑤ 多原子イオンでは、酸化数の総和とイオンの電荷が等しい

多原子イオンでは、イオンを構成する各原子の酸化数の総和が、イオンの電荷と等しくなります

例えばアンモニウムイオン NH4+ では、イオンの電荷が +1 なので、各原子の酸化数の総和は +1 となります。

このとき水素原子 H の酸化数は +1 ですから、残った窒素原子 N の酸化数 N は次のように計算できます。

N + (+1) × 4 = +1

これを解くと N = -3 なので、N の酸化数は -3 です。

硫酸イオン SO42- では、イオンの電荷が -2 なので、各原子の酸化数の総和は -2 となります。

このとき酸素原子 O の酸化数は -2 ですから、残った硫黄原子 S の酸化数 S は次のように計算できます。

S + (-2) × 4 = -2

これを解くと S = +6 なので、S の酸化数は +6 です。

⑥ 重要な原子の酸化数

①~⑤のルールで酸化数はほぼ計算できますが、その他によく使う重要な原子の酸化数を覚えましょう。

ルールの例外でありながら、よく使われる化合物に過酸化水素 H2O2 があります。H2O2 の酸素原子 O の酸化数は、-1 です。-2 ではありません。

また一般に、アルカリ金属の原子の酸化数は +1アルカリ土類金属(2 族元素)の原子の酸化数は +2 となります。

化合物中に含まれる場合、ナトリウム Na やカリウム K の酸化数は +1 、カルシウム Ca の酸化数は +2 と考えるとよいでしょう。

酸化数の変化と酸化還元反応

物質の酸化数の変化から、化学反応の前後で酸化や還元が起こったことがわかります。

化学反応のあとで物質の酸化数が増加した場合、その物質は電子が失われているので、酸化されています

逆に物質の酸化数が減少した場合、その物質は電子を受け取っているので、還元されています

酸化銅(Ⅱ) CuO を高温で水素 H2 と反応させると、銅 Cu と水 H2O が生成します。

CuO + H2 → Cu + H2O

ここで Cu 原子に注目すると、反応前の CuO では酸化数は +2 でした。反応後は単体の Cu となり、酸化数は 0 です。

酸化数の変化は +2 から 0 へと減少しているので、Cu は還元されたことがわかります。

一方 H 原子に注目すると、反応前は単体 H2 で酸化数は 0 です。反応後は H2O となり、酸化数は +1 となっています。

酸化数は 0 から +1 へと増加しているので、H は酸化されたことがわかります。

硫化水素 H2S の水溶液に酸素 O2 を吹き込むと、硫黄 S と水 H2O が生成します。

2 H2S + O2 → 2 S + 2H2O

ここで S 原子に注目すると、反応前の H2S では酸化数は -2 でした。反応後は単体の S となり、酸化数は 0 です。

酸化数の変化は -2 から 0 へと増加しているので、S は酸化されたことがわかります。

一方 O 原子に注目すると、反応前は単体 O2 で酸化数は 0 です。反応後は H2O となり、酸化数は -2 となっています。

酸化数は 0 から -2 へと減少しているので、O は還元されたことがわかります。

問題演習

確認テスト1

次の化合物について、赤太字の原子の酸化数を考えましょう。

  1. N2
  2. H2O
  3. NH3
  4. SO42-
  5. HNO3
  6. H2O2
  7. MnO4
  8. KMnO4
  9. K2Cr2O7
正解を見る
  1. 0
  2. -2
  3. -3
  4. +6
  5. +5
  6. -1
  7. +7
  8. +7 カリウム K の酸化数は +1 と考えます。
  9. +6 カリウム K の酸化数は +1 と考えます。

確認テスト2

次の化学反応式で、Cu 原子と C 原子の酸化数の変化を調べ、物質の酸化還元反応を考えましょう。

2 CuO + C → 2 Cu + CO2

正解を見る

Cu は酸化数が +2 から 0 へと減少しているので、還元されたことがわかります。

C は酸化数が 0 から +4 へと増加しているので、酸化されたことがわかります。

したがってこの反応で、酸化銅(Ⅱ) CuO は還元され、炭素 C は酸化されています。

実践問題1(2019追第2問問6)

下線を付した原子の酸化数を比べたとき、酸化数が最も大きいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① HClO4    ② H3PO4    ③ KNO3    ④ Na2SO4

(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

正解を見る

正解 1

酸化数は、化合物内の水素原子が +1 、酸素原子が -2 となるのが基本です。アルカリ金属の原子は +1 とします。

そのほか、

化合物を構成する各原子の酸化数の総和はゼロになる

イオンとなった原子の電荷とその原子の酸化数は等しい

多原子イオンの電荷とイオンを構成する各原子の酸化数の総和は等しい

といった原則があります。

1 酸化数は H = +1 、 O = -2 、 HClO4 は全体で酸化数が 0 です。

これより

(+1) + Cl + (-2) × 4 = 0

となります。

したがって Cl の酸化数は、Cl = +7

2 酸化数は H = +1 、 O = -2 、 H3PO4 = 0 です。

1 と同様に計算すると、P の酸化数は、P = +5

3 酸化数は K = +1 、 O = -2 、 KNO3 = 0 です。

これより N の酸化数は、N = +5

4 酸化数は Na = +1 、 O = -2 、 Na2SO4 = 0 です。

これより S の酸化数は、S = +6

実践問題2(2016追第2問問6)

下線を付した原子の酸化数を比べたとき、酸化数が最も大きいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① SO2    ② H2S    ③ NO2

④ HNO3    ⑤ N2    ⑥ NH3

(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

正解を見る

正解 4

1 SO2 全体の酸化数は 0 、O の酸化数は -2 なので、S 原子の酸化数は +4 です。

2 H2S 全体の酸化数は 0 、H の酸化数は +1 なので、S 原子の酸化数は -2 です。

3 NO2 全体の酸化数は 0 、O の酸化数は -2 なので、N 原子の酸化数は +4 です。

4 HNO3 全体の酸化数は 0 、H の酸化数は +1 、O の酸化数は -2 なので、N 原子の酸化数は +5 です。

5 N2 全体の酸化数は 0 なので、N 原子の酸化数は 0 です。(単体分子の原子の酸化数は 0 です。)

6 NH3 全体の酸化数は 0 、H の酸化数は +1 なので、N 原子の酸化数は -3 です。

実践問題3(2015追第2問問4)

次のイオン()を、下線で示した原子の酸化数が大きい順に並べたものはどれか。最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 NO3     CO32-     MnO4

① ア > イ > ウ    ② ア > ウ > イ    ③ イ > ア > ウ

④ イ > ウ > ア    ⑤ ウ > ア > イ    ⑥ ウ > イ > ア

(2015年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問4 より引用)

正解を見る

正解 5

化合物中の酸素原子の酸化数は -2 です。また多原子イオン全体の酸化数は、イオン全体の電荷の値と等しいです。

多原子イオン全体の酸化数は、各原子の酸化数の総和となるので、これより下線で示した原子の酸化数をそれぞれ X として計算すると、

1 X + (-2) × 3 = -1 

X = +5

窒素原子の酸化数は +5

2 X + (-2) × 3 = -2

X = +4

炭素原子の酸化数は +4

3 X + (-2) × 4 = -1

X = +7

マンガン原子の酸化数は +7

となります。

実践問題4(2015本第2問問6)

反応の前後で、下線を付した原子の酸化数が 3 減少した化学反応を、次の①~④のうちから一つ選べ。

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

正解を見る

正解 1

酸化数は、化合物内の水素原子が +1 、酸素原子が -2 となるのが基本です。アルカリ金属の原子は +1 、アルカリ土類金属( 2 族元素)は +2 とします。

また、化合物全体の酸化数はゼロです。そして、化合物を構成する各原子の酸化数の総和は、ゼロとなります。

これらのルールより、それぞれの原子の酸化数を求めます。

1 HNO3 の酸化数は 0 、H の酸化数は +1 、O の酸化数は -2 であるので、

(+1) + N + (-2) × 3 = 0

これを計算すると、HNO3 内の窒素原子の酸化数は N = +5

NO の酸化数は 0 、O の酸化数は -2 なので、

NO 内の窒素原子の酸化数は N = +2

したがって、窒素原子の酸化数は +5 から +2 へ 3 減少しています。

2 H2O2 = 0 、H = +1 であり O = -1

O2 = 0 より O = 0

酸素原子の酸化数は -1 から 0 へ 1 増加しています。

3 化合物内の水素原子の酸化数は +1 なので H = +1

H2 = 0 より H = 0

水素原子の酸化数は +1 から 0 へ 1 減少しています。

4 CaCO3 = 0 、Ca = +2 、O = -2 より C = +4

CO2 = 0 、O = -2 より C = +4

炭素原子の酸化数は +4 で変わりません。

実践問題5(2018本第2問問6)

次の反応のうち酸化還元反応はどれか。正しく選択しているものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

① ア、ウ      ② イ、エ       ③ イ、オ

④ ア、ウ、エ    ⑤ ア、ウ、オ     ⑥ イ、エ、オ

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

正解を見る

正解 2

ア × 酢酸ナトリウム CH3COONa は、弱酸である酢酸 CH3COOH と強塩基である水酸化ナトリウム NaOH の塩です。(この塩を水に溶かすと、塩基性を示します。)

アの反応式は、弱酸の塩である CH3COONa と強酸である塩酸 HCl が反応して、弱酸の CH3COOH が遊離する反応です。

この反応では、酸化数に変化はありません。

イ 〇 一酸化炭素 CO が酸化される反応です。Cの酸化数が +2 → +4 となっています。

ウ × 金属の水酸化物 Cu(OH)2 と、強酸である硫酸 H2SO4 の反応です。

Cu(OH)2 は塩基なので、中和反応が起きて、水が生成します。

この反応では、どの原子も酸化数は変化しません。

エ 〇 マグネシウム原子が酸化され(酸化数 0 → +2)、水素原子が還元されています(酸化数 +1 → 0)。

それぞれの反応式は以下の通りです。

Mg → Mg2+ + 2e

2H2O + 2e → H2 + 2OH

このように電子の受け渡しがあります。

この 2 式を足し合わせれば、エの反応式になります。

オ × 弱塩基であるアンモニア NH3 と強酸である硝酸 HNO3 の中和反応です。酸化数に変化はありません。

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