2019年(平成31年)本試験 化学基礎 解答解説

第1問

問1 正解 3

この問題は、元素が A である原子 A の例です。元素記号 A の左上と左下に数字が書かれています。

左下の数字は原子番号で、左上の数字は質量数です。

原子番号は、その原子がもつ陽子の数と一致します。また質量数は、その原子の陽子の数と中性子の数の和です。

したがって原子 A は、原子番号 9(つまり陽子数が 9 個)の原子です。

原子がもつ陽子の数と電子の数は等しいので、原子 A がもつ電子の数も 9 個です。

質量数は 19 なので、中性子の数は

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

ですから

19 = 9 + 中性子の数

となり、中性子の数は 10 個です。

1 〇 電子が 9 個ある原子では、まず一番内側の殻( K 殻)に 2 個の電子が入ります。そのあと、7 個の電子がその外側の L 殻に入ります。したがって、最外殻の電子数は 7 個です。

2 〇 原子番号が 9 なので、陽子の数は 9 個です。

3 × 質量数は陽子の数と中性子の数の和です。中性子の数は正しくは 10 個です。

4 〇 元素記号の左上に書かれた数字は、質量数です。

問2 正解 ア 4     イ 2

 固体から気体への状態変化、または気体から固体への状態変化を昇華といいます。

多くの物質は、固体を加熱すると液体になり、さらに高温になると気体になります。しかし一部の物質は、固体を加熱すると直接気体になる変化(昇華)をします。

これを利用して分離する方法を、昇華法といいます。

したがって、アの選択肢は ④ です。

よく出る例として、固体の不純物と固体のヨウ素が混合しているとき、ヨウ素のみを分離する操作があります。

砂とヨウ素が混ざっているとき、この混合物を加熱すると、砂は固体のままですが、ヨウ素の一部は昇華して気体になります。

このヨウ素の気体を逃がさずに冷やすと、ヨウ素が冷えて固体に戻ります。この固体のヨウ素を回収すると、不純物のないヨウ素のみを分離することができます。

 液体の物質と固体の物質の組合せでは、溶けやすいものと溶けにくいものがあります。

例えば、油っぽい固体の物質は水には溶けにくいが油には溶けやすい性質があります。逆に水に溶けやすい固体は、油に溶けないことがあります。

これをもう少し正確に言えば、以下のようになります。

極性のある水と極性のない有機溶媒を混ぜると、極性のある物質は水溶液側に、極性のない有機化合物は有機溶媒側に溶けて分離します。

このようにして目的の物質を分離する方法を抽出といいます。

したがって、イの選択肢は ② です。

生活の中で見られる抽出の例では、お茶やコーヒーがあります。

茶葉やコーヒー豆を、お湯と混ぜ合わせます。この抽出の操作で、お茶やコーヒーの香りや味の成分が、お湯に溶け出してお湯のなかに移動します。

茶葉やコーヒー豆から、香りや味の成分という目的の物質を溶かし出して分離しているので、これは抽出です。

問3 正解 5

NiO の式量は 75 です。そこで、1.5 g 中の NiO には Ni が

1.5[g] × \(\frac{59}{75}\) = 1.18[g]

含まれます。

はじめの合金は 6.0 g ですので、Ni の含有量は

\(\frac{1.18[g]}{6.0[g]}\) × 100 ≒ 20%

となります。

(別解)

1.5 g の NiO は \(\frac{1.5[g]}{75[g/mol]}\) = 0.020[mol] です。

NiO 1 mol には Ni が 1 mol 含まれているので、もとの合金には 0.020 mol の Ni がありました。

もとの合金にあった Ni は、59[g/mol] × 0.020[mol] = 1.18[g] です。

求める含有率は \(\frac{1.18[g]}{6.0[g]}\) × 100 ≒ 20%

問4 正解 4

この操作では、2 つの洗気びんを通すことで、塩化水素 HCl と水 H2O を取り除きます。1 つの洗気びんで 1 つの物質(塩化水素か水のどちらか)を除きます。

まず、塩化水素 HCl を除くために気体を水に通します。塩化水素は水に溶けます。そのあとで濃硫酸に通して水蒸気を除きます。濃硫酸は水分を吸収します。

先に濃硫酸に通すと、次の水のガラス容器で再び水蒸気が発生してしまいます。

塩化水素を水に溶かすと塩酸になります。塩酸は強酸なので、洗気びんのなかの水は酸性になり pH は小さくなります。

問5 正解 1

1 × イオン化エネルギーは、最外殻の電子を取り去って陽イオンになるために必要なエネルギーです。

イオン化エネルギーが小さいほうが、電子が容易に放出されて陽イオンになりやすいです。

したがって、イオン化エネルギーが大きい原子では、電子を放出するのに大きなエネルギーが必要です。原子が電子を失いにくいので、陽イオンにはなりにくいです。

2 〇 電気陰性度は共有結合の電子対を引き付ける強さです。周期表では、電気陰性度は右上にいくにつれ大きくなる傾向( 18 族元素は除く)です。

したがって第 2 周期の元素でも、希(貴)ガスを除けば、周期表の右側にいくほど電気陰性度は大きくなります。

3 〇 ハロゲンの原子は最外殻の電子数が 7 個であり、1 個の電子を受け取り 1 価の陰イオンとなりやすいです。

4 〇 遷移元素は最外殻の電子数がどれも 1 個か 2 個のため、隣り合う元素と似た性質を持ちやすいです。

問6 正解 3

アンモニア分子 NH3 、アンモニウムイオン NH4+ 、オキソニウムイオン H3O+ 、二酸化炭素分子 CO2 それぞれの電子式は以下の通りです。

1 〇 アンモニア分子には、3 組の共有電子対と 1 組の非共有電子対があります。

2 〇 アンモニウムイオンには、4 組の共有電子対があります。

この 4 組の共有電子対は、もともとは 3 組の共有電子対と 1 組の配位結合でした。共有電子対と配位結合は区別できないので、共有電子対が 4 組あることになります。

3 × 上の電子式のように、オキソニウムイオンには 3 組の共有電子対と 1 組の非共有電子対があります。

もともとは 2 組の共有電子対と 2 組の非共有電子対がありましたが、1 組の非共有電子対を提供して配位結合ができました。

配位結合と、もとからある共有結合は区別できないので、3 組の共有電子対と 1 組の非共有電子対があることになりました。

4 〇 二酸化炭素分子は、4 組の共有電子対と 4 組の非共有電子対をもちます。

問7 正解 a 2     b 5     c 1

a 2 炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は重曹という名称で利用されています。加熱すると CO2 が発生するのでパンなどを膨らませます。

b 5 硫酸バリウム BaSO4 は水溶液中で沈殿します。

c 1 塩化カルシウム CaCl2 は乾燥剤や凍結防止剤として使用されます。

炭酸ナトリウム Na2CO3 は水に溶けると塩基性、炭酸カルシウム CaCO3 は水に溶けにくいです。

第2問

問1 正解 3

1 〇  CO の分子量は 28 、 N2 の分子量は 28 、 NO の分子量は 30 です。 CO と N2 をどの比率で混合しても平均分子量は 28 で、 NO の分子量より小さいです。

同温・同圧・同体積の気体は、気体の種類によらず物質量は等しいです。したがって、分子量の大きい気体の方が質量は大きくなります。

2 〇  CaCl2 1 mol が電離すると、Cl イオンは 2 mol 生じます。

CaCl2  →  Ca2+ + 2 Cl

ここではモル濃度が 0.10 mol/L の CaCl2 水溶液が 2.0 L あるので、Cl の物質量は

0.10[mol/L] × 2.0[L] × 2 = 0.40[mol]

3 ×  H2O の分子量は 18 であり、 18 g あるので物質量は 1 mol です。 CH3OH の分子量は 32 であり、 32 g あるので物質量は 1 mol です。

H2O 1 分子内に水素原子は 2 個あるので、 18 g の H2O には水素原子が 2 mol あります。

CH3OH 1 分子内に水素原子は 4 個あるので、 32 g の CH3OH には水素原子が 4 mol あります。

4 〇 炭素を燃焼させたときの化学反応式は、次の通りです。

C + O2 → CO2 

酸素が 1 mol 燃焼に使われると、CO2 が 1 mol 発生します。

問2 正解 2

亜鉛に塩酸を加えたときの化学反応式は

Zn + 2 HCl → ZnCl2 + H2

したがって、 0.020 mol の Zn に 0.040 mol の HCl を加えると、反応が完全に終わります。

HCl の濃度は 2.0 mol/L なので、加えた塩酸 V1

2.0[mol/L] × V1[L] = 0.040[mol]

よって V1 = 0.020 L

また、発生した水素は 0.020 mol です。

0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件で 1 mol の水素は 22.4 L ですから

V2[L] = 22.4[L] × 0.020[mol] ≒ 0.45[L]

問3 正解 5

中和後の塩が塩基性になるということは、弱酸と強塩基を中和しています。

リン酸 H3PO4 は弱酸、塩化ナトリウム NaOH は強塩基です。

1 × 塩酸 HCl は強酸で、水酸化ナトリウム NaOH も強塩基です。

生成するのは強酸と強塩基の塩 NaCl なので、水溶液は中性です。

2 × 塩酸 HCl は強酸で、アンモニア NH3 は弱塩基です。

生成するのは強酸と弱塩基の塩 NH4Cl なので、水溶液は酸性です。

3 × 硝酸 HNO3 は強酸で、アンモニア NH3 は弱塩基です。

生成するのは強酸と弱塩基の塩 NH4NO3 なので、水溶液は酸性です。

4 × 硫酸 H2SO4 は強酸で、水酸化カルシウム Ca(OH)2 も強塩基です。

強酸と強塩基が過不足なく中和した塩なので、生成するのは硫酸カルシウム CaSO4 です。CaSO4 は水溶液に溶けにくいです。水溶液は中性です。

5 〇 リン酸 H3PO4 は弱酸で、水酸化ナトリウム NaOH は強塩基です。

これらが過不足なく中和して生成した塩は、リン酸ナトリウム Na3PO4 です。

弱酸と強塩基からできた塩の水溶液なので、塩基性を示します。

Na3PO4 は水溶液中で電離して、Na+ と PO43- になります。

PO43- は水溶液中で一部が次のように反応し、OH を生じます。

PO43- + H2O  →  HPO42- + OH

問4 正解 4

1 〇 酢酸は弱酸で、一部が電離します。

2 〇 0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液では、OH イオンの濃度は

[OH] = 1.0 × 10-1 mol/L

水のイオン積は

Kw = [H+] [OH] = 1.0 × 10-14 mol2/L2

ですから

[H+] = 1.0 × 10-13 mol/L

となり、pH = 13 となります。

3 〇 この操作で 50 倍に希釈しています。濃度は\(\frac{1}{50}\)になります。

4 × 水酸化ナトリウムは 1 価の塩基、酢酸は 1 価の酸です。

酢酸の濃度を a [mol/L] とすると、中和点では

0.10[mol/L] × 1 × \(\frac{10[ml]}{1000[ml]}\) = a[mol/L] × 1 × \(\frac{20[ml]}{1000[ml]}\)

となります。

これを解くと

a = 0.050 mol/L

実際の酢酸水溶液の濃度は 0.050[mol/L] です。

問5 正解 4

1 〇 顔を近づけて薬品のにおいを鼻で直接かぐと、有毒な気体を大量に吸ってしまう可能性があるので危険です。一度に大量の薬品を吸い込まないように、手であおいでにおいをかぎます。

2 〇 薬品が皮膚についた場合は、すぐに大量の水で薬品を洗い流します。

3 〇 濃塩酸は毒性のある揮発性(蒸発しやすい)の液体なので、換気のよい場所で扱います。

4 × 濃硫酸を水で希釈するときは、大きな熱量が発生します。濃硫酸に水を垂らすと、水が沸騰して飛び散り危険です。ビーカーの純水に少しずつ濃硫酸を加えて希釈します。

5 〇 突沸(いきなり沸騰すること)などで薬品が飛び出る可能性があるので、試験管の口の方向には人がいないようにします。

問6 正解 1

1 ×

この反応式は

Br2 + H2 → 2 HBr

臭素の酸化数は 0 → -1 であり、還元されています。

2 〇

陰極では

2 H+ + 2 e → H2

の反応が起きています。

水素の酸化数は +1 → 0 であり、還元されています。

3 〇

この反応式は

2 Na + 2 H2O → 2 NaOH + H2

ナトリウムの酸化数は 0 → +1 であり、酸化されています。

4 〇

鉛蓄電池の放電時の正極の反応は

PbO2 + 4 H+ + SO42- + 2 e → PbSO4 + 2 H2O

正極の Pb の酸化数は +4 → +2 であり、還元されています。

2019年(平成31年)追試験 化学基礎 解答解説

第1問

問1 正解 a 1     b 2

a 

1 〇 窒素原子 N は 15 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 5 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 1 組と不対電子が 3 個あります。

この窒素原子が 2 個結合してできる窒素分子 N2 は、それぞれの不対電子 3 個が共有結合をつくります。

これにより三重結合ができます。それぞれの窒素原子は、3 つの共有結合(三重結合)と 1 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

2 × ヨウ素原子 I は 17 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 7 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 3 組と不対電子が 1 個あります。

このヨウ素原子が 2 個結合してできるヨウ素分子 I2 は、それぞれの不対電子 1 個が共有結合をつくります。

これにより 1 つの単結合ができます。それぞれのヨウ素原子は、1 つの共有結合と 3 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

3 × C2H4 はエチレン分子です。

炭素原子 C は 14 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 4 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 4 個あります。

水素原子 H は 1 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 1 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 1 個あります。

これら炭素原子 2 個と水素原子 4 個から、1 つのエチレン分子ができます。

炭素原子同士は 2 つの共有結合(二重結合)をつくります。炭素原子と水素原子は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。

エチレン分子内の炭素原子は、1 つの二重結合と 2 つの共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

エチレン分子内の水素原子は、1 つの共有電子対があるので、最外殻に 2 個の電子をもつことになり、安定します。

(K 殻に 2 個の電子が入ったヘリウムの電子配置をとると、水素原子は安定します。)

4 × C2H6 はエタン分子です。

炭素原子 C は 14 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 4 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 4 個あります。

水素原子 H は 1 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 1 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 1 個あります。

これら炭素原子 2 個と水素原子 6 個から、1 つのエタン分子ができます。

炭素原子同士は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。炭素原子と水素原子は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。

エタン分子内の炭素原子は、4 つの共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

エチレン分子内の水素原子は、1 つの共有電子対があるので、最外殻に 2 個の電子をもつことになり、安定します。

(K 殻に 2 個の電子が入ったヘリウムの電子配置をとると、水素原子は安定します。)

b

1 × カリウムは金属なので、カリウムの単体でできた結晶は金属結晶です。

2 〇 ナフタレンは、分子式が C10H8 で表される分子(有機化合物)です。

ナフタレン分子は、分子間力で結晶をつくっています。ナフタレンは固体から気体に昇華する性質を持ち、防虫剤などの用途があります。

3 × 硝酸ナトリウム NaNO3 は、陽イオンのナトリウムイオン Na+ と陰イオンの硝酸イオン NO3 からできています。

これらのイオンがクーロン力によりイオン結合して、イオンが規則正しく並んでイオン結晶となっています。

4 × 二酸化ケイ素 SiO2 は、共有結合による結晶です。

ケイ素 Si 原子は価電子が 4 個なので、4 つの共有結合をつくります。また酸素 O 原子は価電子が 6 個で不対電子が 2 個あり、2 つの共有結合をつくります。

Si の共有結合は、正四面体の頂点の方向に向いています。Si と O が交互に共有結合して、大きな共有結合の結晶をつくっています。

問2 正解 5

1 〇 塩化物イオン Cl は、原子番号 17 の塩素原子 Cl が電子を 1 個受け取ってできたイオンです。そのため電子は 18 個あり、原子番号 18 のアルゴンと同じ電子配置になります。

2 〇 ナトリウムは原子番号 11 で、電子は K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 1 個入っています。ナトリウムイオン Na+ になると M 殻の電子が失われて、最外殻が L 殻になります。

このように原子核を取り囲む電子殻が少なくなるので、ナトリウム原子の陽イオンの大きさは、もとの原子より小さくなります。

3 〇 陽子の数が等しい原子ということは、同じ原子番号であり、同じ元素です。

同じ元素なら中性子の数が異なっても(これを同位体といいます)、化学的性質はほとんど変わりません。

4 〇 陽子と中性子の質量はほとんど変わりません。そこで、原子の質量数は陽子と中性子の和としています。

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

5 × L 殻には最大 8 個、M 殻には最大 18 個の電子が入ります。

電子殻に入る電子の数 = 2n2

で表されます。

n = 1,2,3‥‥の整数で、内側の電子殻からこれに当てはまります。K 殻は n = 1、L 殻は 2 、M 殻は 3 、N 殻は 4 ‥‥です。

問3 正解 2

仮にそれぞれの物質 1 mol を水に溶かし、1 L の水溶液として電離するとどうなるか示します。

① K+ が 1 mol 、MnO4 が 1 mol 水溶液の中に存在します。

② Al3+ が 1 mol 、Cl が 3 mol 水溶液の中に存在します。

③ NH4+ が 1 mol 、NO3 が 1 mol 水溶液の中に存在します。

④ Fe2+ が 1 mol 、SO42- が 1 mol 水溶液の中に存在します。

⑤ Ca2+ が 1 mol 、Cl が 2 mol 水溶液の中に存在します。

ここで、陰イオンのモル濃度と価数の積が大きくなるものを探します。

②の 3 mol/L × 価数は 1 = 3 が最大です。

④は 1 mol/L × 価数は 2 = 2

⑤は 2 mol/L × 価数は 1 = 2

①と③は  1 mol/L × 価数は 1 = 1

問4 正解 6

水は折れ線形、アンモニアは三角錐形、メタンは正四面体形です。

これは分子の中心にある原子から見て、4 つある電子対がなるべく電気的な反発が小さくなるような構造となるためです。

H2O では、分子の中心を酸素原子と考えると、O-H 結合をつくっている共有電子対が 2 個、酸素原子につく非共有電子対が 2 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

しかし、非共有電子対は分子の形としては見えませんので、残るのは中心の酸素原子と、そこから正四面体の頂点方向にある水素原子 2 個です。そこで水分子の形は折れ線形に見えます。

NH3 では、分子の中心を窒素原子と考えると、N-H 結合をつくっている共有電子対が 3 個、窒素原子につく非共有電子対が 1 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

しかし、非共有電子対は分子の形としては見えませんので、残るのは中心の窒素原子と、そこから正四面体の頂点方向にある水素原子 3 個です。そこでアンモニアの形は三角錐形に見えます。

CH4 では、分子の中心を炭素原子と考えると、C-H 結合をつくっている共有電子対が 4 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

問5 正解 1

炭酸イオン CO32- が 0.050 mol 存在するので、炭酸ナトリウム Na2CO3 も 0.050 mol あることがわかります。

炭酸ナトリウムのモル質量は 106 g/mol なので、0.050 mol の質量は

106[g/mol] × 0.050[mol] = 5.3[g]

混合物の残りが NaOH なので求める質量は

9.3 - 5.3 = 4.0[g]

問6 正解 4

物質そのものが変わる変化を、化学変化といいます。物質そのものは変化せず、状態などが変わる変化を、物理変化といいます。

固体が溶液の中に溶けるとき、固体が小さな粒子になって、溶液の粒子の中に混ざり込んでいきます。物質そのものは変わらないので、物理変化です。

固体・液体・気体の三態のあいだで物質が変わっているときは、物質そのものが変化したわけではないので、物理変化です。

1 × 砂糖が水に溶けただけで、物質が反応して変化したわけではありません。水が蒸発すると溶けていた砂糖が結晶化して固体として現れます。

2 × 液体の水が気体の水になっただけで、物質が変化したわけではありません。湯気は気体の水(水蒸気)が冷えて液体の水の微粒子になったものです。

3 × ドライアイスが固体から気体になって(昇華)、固体の量が減っただけなので物質に変化はありません。

4 〇 貝殻は主成分が炭酸カルシウム CaCO3 で、希塩酸 HCl と反応し、物質が変化します。

CaCO3 + 2 HCl → CaCl2 + H2O + CO2

炭酸カルシウムと塩酸は化学反応によって、塩化カルシウム CaCl2 と水 H2O と二酸化炭素 CO2 に変化します。

物質そのものが変化したので、④は化学変化です。

問7 正解 a 1     b 3

a

石灰水を白濁させる気体は二酸化炭素です。

石灰水には水酸化カルシウム Ca(OH)2 が溶けていて、CO2 と反応して水に溶けにくい炭酸カルシウム CaCO3 が生成します。

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

炭酸カルシウム CaCO3 が水に溶けにくいので、水溶液が白濁します。

1 × 二酸化炭素が溶けた炭酸水は弱酸性です。

2 〇 C = O 結合には極性があります。炭素原子が少し正電荷 δ+ 、酸素原子が少し負電荷 δ- をもちます。

3 〇 CO2 の炭素原子は、酸化数が +4 です。

4 〇 シュウ酸 H2C2O4 、(COOH)2 と書いてもいいです、の酸化では

H2C2O4  →  2 CO2 + 2 H+ + 2 e

という半反応式になります。

b

実験結果から、酸化銅(Ⅱ)は還元されて銅となりました。

また、CH2 の構造が繰り返しているポリエチレンー(ーCH2ーCH2ー)nーは酸化され、水 H2O と二酸化炭素 CO2 が生成しました。

ポリエチレンが分解した生成物が還元剤としてはたらくと考えられます。

3 CuO + ( C + 2H )  →  3 Cu + CO2 + H2O

酸化銅(Ⅱ)と、ポリエチレンの分解物( C や H )が反応物です。銅 Cu と 石灰水を白濁させる二酸化炭素 CO2 と試験管内壁の水滴 H2O が生成物です。

試験管 A に入れた酸化銅(Ⅱ)は、すべて銅になりました。このとき、1 mol の酸化銅(Ⅱ)から 1 mol の銅が生成しています。

銅のモル質量は 64 g/mol なので、0.32 g の銅の物質量は

\(\frac{0.32[g]}{64[g/mol]}\) = 0.0050[mol]

酸化銅(Ⅱ)のモル質量は 80 g/mol ですから、求める質量は

80[g/mol] × 0.0050[mol] = 0.40[g]

第2問

問1 正解 3

1 × 窒素 28 g では、窒素原子の物質量は \(\frac{28[g]}{14[g/mol]}\) = 2.0[mol]となります。

酸素 28 g では、酸素原子の物質量は \(\frac{28[g]}{16[g/mol]}\) ≒ 1.8[mol]となります。

(窒素分子で考えると N2 なので、物質量は \(\frac{28[g]}{28[g/mol]}\) = 1.0[mol]

 酸素分子で考えると O2 なので、物質量は \(\frac{28[g]}{32[g/mol]}\) ≒ 0.88[mol])

いずれにせよ物質量は等しくありません。

2 × 気体の水素分子は H2 なので、分子量は 2.0 です。

水素 1.0 g の物質量は \(\frac{1.0[g]}{2.0[g/mol]}\) = 0.50[mol] となります。

気体の性質として、0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件下では、1 mol の気体の体積が 22.4 L です。

ここでは水素は 0.50 mol なので、体積は 11.2 L です。

3 〇 一酸化炭素と酸素が反応して二酸化炭素が生成する反応式は

2 CO + O2 → 2 CO2

つまり、2 mol の一酸化炭素と 1 mol の酸素が反応して、2 mol の二酸化炭素が生成しています。

はじめに 3 mol の混合気体があり、反応後に 2 mol の気体になったのですから、気体の総物質量は減少しています。

4 × 容器は密閉されていて、外部との物質の出入りはありません。内部で化学反応が起こったとしても、内部の物質(原子)そのものは増減しないので、容器全体の質量は一定です。

問2 正解 3

各原子ごとに、両辺で数がそろうように式を立てます。

炭素原子から考えます。左辺に CH4 分子のなかに 1 個あります。右辺には CO2 分子のなかに 1 個あります。

それぞれに係数をかけて、両辺の数をそろえると

a × 1 = d × 1  

C: a = d

同様に水素原子と酸素原子で考えます。

水素原子を考えます。

左辺に CH4 分子のなかに 4 個あります。H2O のなかに 2 個あります。

右辺には H2 分子のなかに 2 個あります。

それぞれに係数をかけて、両辺の数をそろえると

H: 4a + 2b = 2c

酸素原子を考えます。

左辺に H2O 分子のなかに 1 個あります。

右辺には CO2 分子のなかに 2 個あります。

それぞれに係数をかけて、両辺の数をそろえると

O: b = 2d

が成り立ちます。

ここで仮に a = 1 とすると、順番に d = 1、b = 2、c = 4 となり、すべての係数が定まります。

問3 正解 2

下の化学反応式のように、酢酸は水溶液中で一部が電離します。

CH3COOH ⇆ CH3COO + H+

はじめに 0.10 mol/L の酢酸水溶液が 1.0 L あったので、酢酸は 0.10 mol ありました。

酢酸イオン CH3COO と水素イオン H+ は 0 mol です。

CH3COOH ⇆ CH3COO + H+

0.10 mol    0 mol    0 mol

この水溶液中の酢酸の電離度は α = 1.6 × 10-2 です。

十分に時間がたつと、この電離した水溶液中では、酢酸の物質量は 0.10(1-α) mol となります。

酢酸イオン CH3COO と水素イオン H+ の物質量は 0.10 α mol となります。

CH3COOH ⇆ CH3COO + H+

0.10(1-α)    0.10 α   0.10 α

求める酢酸イオンの個数は、酢酸イオンの物質量とアボガドロ定数の積として計算できます。

したがって、

0.10 [mol] × 1.6 × 10-2 × 6.0 × 1023 [/mol] = 9.6 × 1020 [個]

となります。

問4 正解 4

実験では、2 価の弱酸であるシュウ酸 H2C2O4 を、1 価の強塩基である水酸化ナトリウム NaOH で中和滴定します。

フェノールフタレインの変色域はおおよそ pH 8.0 ~ 9.8 で、pH = 8.0 より酸性側で無色で、pH = 9.8 より塩基性側で赤くなります。

シュウ酸と水酸化ナトリウムの中和反応は

H2C2O4 + 2 NaOH → Na2C2O4 + 2 H2O

となります。

(シュウ酸は (COOH)2 と書いてもよいので、下のような化学反応式でもかまいません。)

(COOH)2  + 2 NaOH →  (COO)2Na2 + 2 H2O

中和点における水酸化ナトリウムの滴下量を X ml とすると、

0.10[mol/L] × \(\frac{10[ml]}{1000[ml]}\) × 2価 = 0.10[mol/L] × \(\frac{X[ml]}{1000[ml]}\) × 1価

X = 20

まとめると、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は 20 mL です。

また、中和点 ( 20 mL ) 以前は pH 8.0 ~ 9.8 のフェノールフタレインの変色域に入らず無色で、中和点を超えると塩基性側に移り、水溶液は赤色となります。

これらを満たすのは④です。

問5 正解 3

中和滴定実験の流れを確認します。

 まず標準溶液(濃度が正確にわかっている溶液のこと)をビュレットに入れます。

標準溶液は既に濃度が正確に決まっているので、ビュレット内でも濃度が変わらないようにします。

ですから、ビュレットを純水で洗ってそのまま使うと、ビュレットの内壁に残った水滴で標準溶液が薄まってしまい、標準溶液の濃度が変わってしまいます。

そのためビュレットを純水で洗ったあと、ビュレットの内壁を標準溶液ですすぎます。

ビュレットの内壁を標準溶液で流しておくことで、このあと標準溶液をビュレットに入れても濃度は変わりません。

 試料溶液(濃度がわからないので、中和滴定でこの濃度を調べます)をホールピペットで採取して、コニカルビーカーに入れます。

ホールピペットは、正確に一定量の液体を吸い上げてはかり取る器具です。

そのため、ホールピペットを純水で洗ってそのまま使うと、ホールピペットの内壁に水滴が残ってしまいます。

水滴が残ったまま試料溶液をホールピペットで吸い上げると、わずかに試料溶液に純水が混ざります。

すると、一定量の試料溶液を正確にはかり取るはずが、水滴が混ざった分だけ試料溶液の体積が少なくなってしまいます。

試料溶液の量が正確にはかり取れないと、誤差になります。

ですから、ホールピペットは純水で洗ったあと、試料溶液ですすぎます。ホールピペットの内壁に試料溶液の水滴が残っていても、試料溶液は正確な量をはかり取ることができます。

 ホールピペットではかり取った試料溶液を、コニカルビーカーに移すときの注意。

一定量の試料溶液を、ホールピペットで正確にはかり取ることができました。そのあと、コニカルビーカーに正確な量の試料溶液を移します。

コニカルビーカーを純水で洗い、そこにホールピペットで試料溶液を入れます。水滴が残っていても、コニカルビーカーに入れた試料溶液の量は一定のままです。

もしコニカルビーカーを純水で洗い、さらに試料溶液ですすいでいたら、コニカルビーカーには試料溶液の水滴が残ってしまいます。

試料溶液の水滴が残っているコニカルビーカーに、ホールピペットで試料溶液を入れると、コニカルビーカー内の試料溶液の体積は、はかり取った一定量より大きくなってしまいます。

ですから、コニカルビーカーは純水で洗うだけで、試料溶液ですすぐことはありません。

 ビュレットの目盛りを読み取るときは、ビュレットの内側の液面と、読み取る視線を一直線になるようにします。

つまりビュレット内の液面と目の高さを合わせ、液面の延長線上に自分の目があるようにして、液面と自分が読み取る視線を一致させます。

 目盛りを読み取って記録するとき、ビュレットについている目盛りより 1 桁下まで読み取ります。

ビュレットの最少目盛りが 0.1 mL ならば、目分量で 0.01 mL の位まで読み取ります。

例えば 8.4 mL と 8.5 mL の間に液面があるときは、さらに自分で目盛りの間を 10 等分しておおよそ読み取り、8.44 mL などと記録します。

1 〇 ビュレット内の標準溶液の濃度が水で薄まると正確な実験ができないので、水滴を標準溶液で洗い流します。

2 〇 ホールピペットは試料溶液を正確にはかりとる器具です。内部が水でぬれていると試料溶液が薄まってしまうので、ホールピペット内をあらかじめ試料溶液で洗い流します。

3 × コニカルビーカーには正確にはかりとった量の試料溶液を入れます。コニカルビーカーを試料溶液ですすいでしまうと、試料溶液の量が増えてしまい正確な実験ができません。

4 〇 液面の高さに目を合わせて、水平な視線で目盛りを読み取ります。

5 〇 最少目盛りの 1 桁下まで数値を読み取ります。

問6 正解 1

酸化数は、化合物内の水素原子が +1 、酸素原子が -2 となるのが基本です。アルカリ金属の原子は +1 とします。

そのほか、

化合物を構成する各原子の酸化数の総和はゼロになる

イオンとなった原子の電荷とその原子の酸化数は等しい

多原子イオンの電荷とイオンを構成する各原子の酸化数の総和は等しい

といった原則があります。

1 酸化数は H = +1 、 O = -2 、 HClO4 は全体で酸化数が 0 です。

これより

(+1) + Cl + (-2) × 4 = 0

となります。

したがって Cl の酸化数は、Cl = +7

2 酸化数は H = +1 、 O = -2 、 H3PO4 = 0 です。

1 と同様に計算すると、P の酸化数は、P = +5

3 酸化数は K = +1 、 O = -2 、 KNO3 = 0 です。

これより N の酸化数は、N = +5

4 酸化数は Na = +1 、 O = -2 、 Na2SO4 = 0 です。

これより S の酸化数は、S = +6

2018年(平成30年)本試験 化学基礎 解答解説

第1問

問1 正解 a 3     b 1

a

最外殻の電子数が 1 個の原子が、1 個の電子を失って 1 価の陽イオンになりやすいです。

1 × ベリリウム Be は原子番号が 4 で、 2 族元素の原子です。

最外殻の電子数は 2 個なので、2 価の陽イオンになりやすいです。

2 × フッ素 F は原子番号が 9 で、17 族元素の原子です。

最外殻の電子数が 7 個で、1 個の電子を受け取って希ガスと同じ電子配置になりやすいです。

したがって 1 価の陰イオンであるフッ化物イオン F になりやすいです。

3 〇 アルカリ金属( 1 族)の元素は、最外殻の電子数が 1 個です。そのため 1 価の陽イオンになりやすいです。

リチウム原子は、原子番号が 3 で 1 族元素です。最外殻の電子数は 1 個なので、この電子を失って 1 価の陽イオンになりやすいです。

4 × ネオン原子は希ガスです。最外殻の電子数は 8 個で、安定な電子配置です。そのためイオンにはとてもなりにくい原子です。

5 × 酸素 O は原子番号が 8 で、16 族元素の原子です。最外殻の電子数は 6 個で、2 価の陰イオンとなりやすいです。

b

1 〇 ダイヤモンドとケイ素は、共有結合の結晶です。

ダイヤモンドは、多くの炭素原子 C が共有結合してできています。炭素原子 C の価電子は 4 なので、正四面体の頂点方向に共有結合はつながります。

そのためダイヤモンドは、正四面体形の構造を繰り返す、立体網目状の結晶となります。

ケイ素の結晶もダイヤモンドと同じように、正四面体形が繰り返された共有結合の結晶です。

ケイ素 Si は炭素と同じ 14 族の元素です。ケイ素の価電子の数も 4 個なので、ケイ素原子は 4 つの共有結合をつくっています。

2 × ドライアイスとヨウ素は、分子間力でできた結晶(分子結晶)です。

分子が規則正しく並んでできた固体を、分子結晶といいます。

ドライアイスは二酸化炭素であり、CO2 と表される分子です。ヨウ素は I2 と表される分子です。

CO2 や I2 といった分子が、分子間力という弱い引力で規則正しく固定されると、分子結晶になります。

3 × 塩化アンモニウムはイオン結晶、氷は分子間力(水素結合)による結晶です。

塩化アンモニウム NH4Cl は、陽イオンであるアンモニウムイオン NH4+ と、陰イオンである塩化物イオン Cl が静電気的な引力(クーロン力)で固定されてできたイオン結晶です。

氷は水 H2O が冷やされて固体になったものです。水分子が規則正しく並んで固体になったものなので、氷は分子結晶です。

4 × 銅とアルミニウムは、金属結晶です。

金属の原子が規則正しく並んでできた固体を、金属結晶といいます。

銅 Cu もアルミニウム Al も金属であり、これらの原子からできた結晶は金属結晶です。

5 × 酸化カルシウムと硫酸カルシウムは、イオン結晶です。

酸化カルシウム CaO は、陽イオンであるカルシウムイオン Ca2+ と、陰イオンである酸化物イオン O2- が静電気的な引力(クーロン力)で固定されてできたイオン結晶です。

硫酸カルシウム CaSO4 は、陽イオンであるカルシウムイオン Ca2+ と、陰イオンである硫酸イオン SO42- が静電気的な引力(クーロン力)で固定されてできたイオン結晶です。

問2 正解 3

ホウ素原子は原子番号が 5 の原子です。

原子番号が 5 なので、陽子の数が 5 個となり、原子核にある正の電荷は 5+ になります。

また原子がもつ陽子と電子の数は等しいので、ホウ素原子の電子は 5 個になります。

電子が 5 個あるので、内側の電子殻から電子は収容されます。

K 殻に入る電子の最大数は 2 個なので、電子は一番内側にある K 殻に 2 個入ります。そして、その外側の L 殻に 3 個入ります。

以上より、最も適当な選択肢は③です。

問3 正解 2

窒素原子が 7 個電子を持っているので、 N2 分子には電子は 14 個あります。

H2O 分子には 10 個 ( 1 × 2 + 8 ) の電子があります。

CO 分子には 14 個 ( 6 + 8 ) の電子があります。

OH イオンには 10 個 ( 8 + 1 + 1 価の陰イオンなので 1 個の電子を受け取っています) の電子があります。

O2 分子には 16 個 ( 8 × 2 ) の電子があります。

Mg2+ イオンには 10 個 ( Mg は 12 個の電子を持つ原子ですが、これが 2 個の電子を失い 2 価の陽イオンになっています ) の電子があります。

問4 正解 3

1 つの X2Z3 分子のなかに、X 原子が 2 個と Z 原子が 3 個あります。

そこで、化学式が X2Z3 で表される物質の分子量(モル質量)は、2Mx + 3Mz となります。

物質 X2Z3 が 5g あるとき、この物質量は

$$\frac{5[g]}{2Mx + 3Mz[g/mol]}$$

となります。

X2Z3 が \(\frac{5}{2Mx + 3Mz}\) [mol]あることがわかりましたが、この X2Z3 1 分子には X 原子が 2 分子含まれます。

したがって、X 原子は \(\frac{5}{2Mx + 3Mz}\) × 2 [mol]あります。

X の質量は、X の物質量と X のモル質量 の積として求まります。

まとめると、X の質量は

$$\frac{5}{2Mx + 3Mz} \times 2 \times Mx [g]$$

です。

正解は③の

$$\frac{10Mx}{2Mx + 3Mz}[g]$$

問5 正解 ア 6     イ 3

実験Ⅰで、アが水に溶けるかどうか確認できます。

水に溶けるのは①、②、⑤、⑥です。ほとんど溶けないのが③、④です。

実験Ⅱで炎色反応が黄色となるのは、ナトリウム(ナトリウムイオン)が含まれているためと考えられます。

また、硝酸銀水溶液を混合させて沈殿が生じるのは、塩素元素(塩化物イオン)が含まれているためと考えられます。(塩化銀 AgCl の沈殿は白色です。)

アを水に溶かすと、その水溶液にはナトリウムと塩素が含まれています。

これらより、アは塩化ナトリウム NaCl です。

①~⑥の純物質のうち、水にほとんど溶けないのは炭酸カルシウム CaCO3 と硫酸バリウム BaSO4 です。

この 2 つの純物質のうち、弱酸の塩の炭酸カルシウムに強酸の塩酸を加えると、二酸化炭素が発生します。

(炭酸カルシウムは、弱酸の炭酸と強塩基の水酸化カルシウムの塩です。ここでは弱酸の遊離が起こり、炭酸が遊離します。炭酸は水と二酸化炭素に分解します。)

CaCO3 + 2 HCl  →  CaCl2 + CO2 + H2O

したがって、イは炭酸カルシウム CaCO3 です。

硫酸バリウム BaSO4 は塩酸と反応しません。

問6 正解 5

1 〇 少量の水が加熱され水蒸気となり、体積が増え袋が膨らみます。

2 〇 コップの外側に接する気体は冷やされます。水は高い温度では多くの水蒸気が気体の状態で存在しますが、低い温度では少量の水蒸気しか存在しません。このため、湿度の高い空気が冷やされ、水蒸気が水となってコップの外側につきます。

3 〇 水の融点、凝固点は 0 ℃です。(固体から液体になる温度、液体から固体になる温度は 0 ℃です。)純物質である水が融解するときは、氷が融け始めてから完全に液体になるまで 0 ℃を保ちます。

4 〇 水の沸点は 100 ℃です。(沸騰して液体から気体になる温度は 100 ℃です。)

5 × 水を凍らせると、その氷は水より体積が大きくなります。氷が水に浮くのは、氷の密度が水より小さいからです。

問7 正解 1

1 × 次亜塩素酸ナトリウム NaClO が塩素性漂白剤の主成分です。

2 〇 アルミニウムは 1 円硬貨やアルミ缶の材料です。

3 〇 銅は電気伝導性が大きい金属です。また、黄銅(真ちゅう)・青銅(ブロンズ)・白銅のように合金の材料となっています。

4 〇 Pポリ Eエチレン Tテレフタラートが、PETボトルの原料です。

5 〇 メタンは天然ガスから得られる無色無臭の気体で、都市ガスなどの燃料に利用されています。

第2問

問1 正解 1

水分子 H2O の分子量は 18 であり、モル質量は 18 g/mol です。

したがって 180 g の水の物質量は

$$\frac{180 [g]}{18 [g/mol]} = 10 [mol]$$

であるので、10 mol となります。

水分子が 10 mol あるので、水分子の個数は 10 N 個あります。

(1 mol の水分子があると、その個数はアボガドロ数の N 個となるので。)

1 × 水分子 1 個の中に水素原子は 2 個あります。いま水分子は 10 N 個あるので、水素原子は 20 N 個です。

2 〇 水分子 1 個には、水素原子 2 個と酸素原子 1 個があります。

それぞれの原子 1 個の中に原子核 1 個があるので、水分子 1 個のなかには、原子核が 3 個あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、原子核は 30 N 個です。

3 〇 水 1 分子の中に共有電子対は 2 対あるので、共有結合している電子は 4 個あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、共有結合に使われている電子は 40 N 個です。

4 〇 水 1 分子内の非共有電子対は、酸素原子に 2 対あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、非共有電子対の数は 20 N 個です。

問2 正解 2

混合気体の体積が 1.0 L で、その体積比が 2:1 なので、

メタンは 1.0 × \(\frac{2}{3}\) [L]、二酸化炭素は 1.0 × \(\frac{1}{3}\) [L]あります。

また、メタン CH4 の分子量は 16 で、二酸化炭素 CO2 の分子量は 44 です。

この問題では、分子量が 16 で体積が \(\frac{2}{3}\) [L] のメタンの質量と、分子量が 44 で体積が \(\frac{1}{3}\) [L] の二酸化炭素の質量の和を求めます。

0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件下では、気体 1 mol の体積は 22.4 L です。

したがって、メタンの質量は

1.0 [L] × \(\frac{2}{3}\) × \(\frac{1}{22.4[L/mol]}\) × 16 [g/mol]

同様に、二酸化炭素の質量は

1.0 [L] × \(\frac{1}{3}\) × \(\frac{1}{22.4[L/mol]}\) × 44 [g/mol]

これらの和が求める混合気体の質量です。

実際に計算すると

\(\frac{76}{67.2}\) = 1.13 ≒ 1.1

となり、②が正解です。

問3 正解 3

モル濃度とは、溶液 1 L に含まれる溶質の物質量です。単位は mol/L です。

溶液の密度と質量パーセント濃度がわかっているときは、まず 1 L の溶液の質量を求め、そこから溶質の質量を計算し、その溶質の質量をモル質量で割ることでモル濃度が求まります。

式で表すと

密度[g/cm3] × 1000[cm3/L] × \(\displaystyle\frac{質量パーセント濃度[%]}{100}\) × \(\displaystyle\frac{1}{モル質量[g/mol]}\)‥‥(A)

となります。

この問題の塩酸で計算してみると、

1.2[g/cm3] × 1000[cm3/L] × \(\frac{36.5[%]}{100}\) × \(\frac{1}{36.5[g/mol]}\) = 12[mol/L]

となります。

塩酸のモル濃度は、12 mol/L と計算できました。

他の3つの物質も、計算すれば解答できます。

ただし表を見ると、どの物質でも質量パーセント濃度とモル質量の値が同じです。

それならば、(A)式を見れば気付くように、密度が大きい物質がそのままモル濃度が一番高いとわかります。

したがって正解は、最も密度の大きい③です。

問4 正解 4

1 〇 炭酸水は弱酸性で、血液の pH の正常範囲は pH = 7.35 ~ 7.45 です。

2 〇 食酢は酸性で、牛乳はほぼ中性です。

3 〇 レモン果汁は酸性で、水道水はほぼ中性です。

4 × セッケン水は弱塩基性で、食塩水は中性(pH = 7)です。

問5 正解 5

炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は、強塩基と弱酸の塩であり、弱塩基性です。

強酸である塩酸を加えていくと

NaHCO3 + HCl  →  NaCl + CO2 + H2O

という中和反応が進みます。

滴定の途中で CO2 が発生しており、炭酸水となるので pH は酸性側に動きます。

中和点の 25 mL を大きく超えると、強酸の 0.10 mol/L 塩酸を加えていくので、pH は 1 に近づいていきます。

まとめると、弱塩基の領域から中和滴定の操作が始まり、中和点では中性( pH = 7 )よりは酸性側であり、最終的に pH = 1 に近づいていきます。

当てはまる滴定曲線は⑤です。

問6 正解 2

ア × 酢酸ナトリウム CH3COONa は、弱酸である酢酸 CH3COOH と強塩基である水酸化ナトリウム NaOH の塩です。(この塩を水に溶かすと、塩基性を示します。)

アの反応式は、弱酸の塩である CH3COONa と強酸である塩酸 HCl が反応して、弱酸の CH3COOH が遊離する反応です。

この反応では、酸化数に変化はありません。

イ 〇 一酸化炭素 CO が酸化される反応です。C の酸化数が +2 → +4 となっています。

ウ × 金属の水酸化物 Cu(OH)2 と、強酸である硫酸 H2SO4 の反応です。

Cu(OH)2 は塩基なので、中和反応が起きて、水が生成します。

この反応では、どの原子も酸化数は変化しません。

エ 〇 マグネシウム原子が酸化され(酸化数 0 → +2)、水素原子が還元されています(酸化数 +1 → 0)。

それぞれの反応式は以下の通りです。

Mg → Mg2+ + 2e

2H2O + 2e → H2 + 2OH

このように電子の受け渡しがあります。

この 2 式を足し合わせれば、エの反応式になります。

オ × 弱塩基であるアンモニア NH3 と強酸である硝酸 HNO3 の中和反応です。酸化数に変化はありません。

問7 正解 4

1 〇 アルカリマンガン乾電池は、正極が酸化マンガン(Ⅳ) MnO2 、負極が亜鉛 Zn 、電解質水溶液が水酸化カリウム KOH です。

なおマンガン乾電池は、正極が酸化マンガン(Ⅳ) MnO2 、負極が亜鉛 Zn です。電解質水溶液は塩化亜鉛 ZnCl2 で少量の塩化アンモニウム NH4Cl が加えられている場合もあります。電解質水溶液はのり状になっています。

2 〇 鉛蓄電池は、正極が酸化鉛(Ⅳ) PbO2 、負極が鉛 Pb 、電解質水溶液が希硫酸 H2SO4 です。

3 〇 酸化銀電池は、正極が酸化銀 Ag2O 、負極が亜鉛 Zn 、電解質水溶液が水酸化カリウム KOH などである一次電池です。

4 × リチウムイオン電池は充電が可能な二次電池です。充電できない電池が一次電池です。

2018年(平成30年)追試験 化学基礎 解答解説

第1問

問1 正解 a 2     b 3

a は単体と化合物の組合せなので、1 種類の元素からできている単体と、2 種類以上の元素からできている化合物の組合せを選びます。

b は純物質と混合物の組合せなので、1 種類の物質からなる純物質と、2 種類以上の純物質が含まれている混合物の組合せを選びます。

1 ダイヤモンドと黒鉛は、どちらも炭素元素の単体で C と表されます。単体なのでこれらは純物質です。また、それぞれ同素体の関係です。

2 塩素 Cl2 と塩化ナトリウム NaCl はただ塩素原子が共通なだけで、物質として関係はありません。

塩素は 1 種類の元素からできているので単体で純物質、塩化ナトリウムは 2 種類の元素からできているので化合物で純物質です。

単体と化合物の組合せなので、a に当てはまります。

3 塩化水素 HCl は 2 種類の元素からできているので、化合物で純物質です。

また、塩化水素 HCl を水に溶かしたものを塩酸といいます。

塩酸は、純物質である塩化水素 HCl と水 H2O が任意に混合した(濃度はさまざまな)溶液なので、混合物です。

純物質と混合物の組合せなので、b に当てはまります。

4 メタン CH4 とエタン C2H6 はどちらも似た性質の有機化合物ですが、物質としては関係ありません。

メタンとエタンは 2 種類の元素からできているので、ともに化合物で純物質です。

5 希硫酸は硫酸 H2SO4 を水に(薄めに)溶かした溶液です。

アンモニア水はアンモニア NH3 を水に溶かした溶液です。

どちらも(溶かせる範囲内なら)任意の割合で水と混ぜることができます。

希硫酸は、純物質である硫酸と水を混ぜているので混合物です。アンモニア水は、純物質であるアンモニアと水を混ぜているので混合物です。

問2 正解 4

1 × 非共有電子対は 2 組

窒素原子 N は 15 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 5 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 1 組と不対電子が 3 個あります。

この窒素原子が 2 個結合してできる窒素分子 N2 は、それぞれの不対電子 3 個が共有結合をつくります。

これにより三重結合ができます。それぞれの窒素原子は、3 つの共有結合(三重結合)と 1 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

窒素分子 N2 全体では、非共有電子対は 2 組あります。

2 × 非共有電子対は 1 組

窒素原子 N は 15 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 5 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 1 組と不対電子が 3 個あります。

水素原子 H は 1 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 1 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 1 個あります。

これら窒素原子 1 個と水素原子 3 個から、1 つのアンモニア分子ができます。

窒素原子と水素原子は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。

アンモニア分子内の窒素原子は、3 つの共有電子対と 1 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

アンモニア分子内の水素原子は、1 つの共有電子対があるので、最外殻に 2 個の電子をもつことになり、安定します。

(K 殻に 2 個の電子が入ったヘリウムの電子配置をとると、水素原子は安定します。)

アンモニア分子 NH3 全体では、非共有電子対は 1 組あります。

3 × 非共有電子対は 2 組

酸素原子 O は 16 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 6 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 2 組と不対電子が 2 個あります。

水素原子 H は 1 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 1 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 1 個あります。

これら酸素原子 1 個と水素原子 2 個から、1 つの水分子ができます。

酸素原子と水素原子は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。

水分子内の酸素原子は、2 つの共有電子対と 2 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

水分子内の水素原子は、1 つの共有電子対があるので、最外殻に 2 個の電子をもつことになり、安定します。

(K 殻に 2 個の電子が入ったヘリウムの電子配置をとると、水素原子は安定します。)

水分子 H2O 全体では、非共有電子対は 2 組あります。

4 〇 非共有電子対は 6 組

塩素原子 Cl は 17 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 7 個です。そこで下の電子式のように、電子対が 3 組と不対電子が 1 個あります。

この塩素原子が 2 個結合してできる塩素分子 Cl2 は、それぞれの不対電子 1 個が共有結合をつくります。

それぞれの塩素原子は、1 つの共有結合と 3 つの非共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

塩素分子 Cl2 全体では、非共有電子対は 6 組あります。

5 × 非共有電子対は無い

炭素原子 C は 14 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 4 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 4 個あります。

水素原子 H は 1 族元素であり、価電子は(最外殻電子数は) 1 個です。そこで下の電子式のように、不対電子が 1 個あります。

これら炭素原子 2 個と水素原子 4 個から、1 つのエチレン分子ができます。

炭素原子同士は 2 つの共有結合(二重結合)をつくります。炭素原子と水素原子は、それぞれが不対電子を 1 個ずつ出して共有結合をつくります。

エチレン分子内の炭素原子は、1 つの二重結合と 2 つの共有電子対があるので、最外殻に 8 個の電子をもつことになり、安定します。

エチレン分子内の水素原子は、1 つの共有電子対があるので、最外殻に 2 個の電子をもつことになり、安定します。

(K 殻に 2 個の電子が入ったヘリウムの電子配置をとると、水素原子は安定します。)

エチレン分子内の電子対はすべて共有結合に使われており、6 個の共有電子対があります。エチレン分子には非共有電子対はありません。

まとめると、以下の電子式のようになります。

非共有電子対の数は、1 は 2 個、2 は 1 個、3 は 2 個、4 は 6 個、5 は 0 個です。

問3 正解 4

原子番号が増えていくとき、価電子はどう変化するのかという問題です。

まずはじめに、原子番号とその原子がもつ陽子の数は等しいことを思い出します。また、原子がもつ陽子の数と電子の数は等しいことを考えます。

つまり原子がもつ電子が 1 個ずつ増えていくと、価電子はどうなるのかを調べます。

価電子は、最外殻の電子数と一致します。ただし、希ガス元素のときは価電子は 0 です。

そこで、原子番号が増えて原子のもつ電子数が増加していくと、その電子配置はどうなるのか(最外殻の電子数はいくつか)を考えれば、この問題を解けます。

グラフは原子番号 20 までなので、原子番号 1 の水素原子から、原子番号 20 のカルシウム原子までの電子配置を考えます。

そしてそれぞれの価電子を決めれば、正しいグラフを選ぶことができます。

以下は原子番号 1 の水素原子から原子番号 20 のカルシウム原子までの電子配置の表です。

原子原子番号K殻L殻M殻N殻価電子
水素 H111
ヘリウム He220
リチウム Li3211
ベリリウム Be4222
ホウ素 B5233
炭素 C6244
窒素 N7255
酸素 O8266
フッ素 F9277
ネオン Ne10280
ナトリウム Na112811
マグネシウム Mg122822
アルミニウム Al132833
ケイ素 Si142844
リン P152855
硫黄 S162866
塩素 Cl172877
アルゴン Ar182880
カリウム K1928811
カルシウム Ca2028822

原子番号 1 の H は K 殻に電子が 1 個入り、最外殻電子数が 1 なので価電子は 1 となります。

原子番号 2 の He は K 殻に電子が 2 個入り、K 殻が電子で埋まり閉殻となります。He は希ガスと呼ばれる元素なので、価電子は 0 となります。

原子番号 3 の Li から原子番号 10 の Ne までは、電子は L 殻に入ります。

原子番号 3 の Li は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 1 個入ります。最外殻電子は L 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 4 の Be は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 2 個入ります。最外殻電子は L 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

原子番号 9 の F までは、同じように価電子が 1 ずつ増えていきます。

原子番号 10 の Ne は、K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個入ります。最外殻電子は L 殻の 8 個で、L 殻はすべて埋まり閉殻となります。

Ne は希ガスと呼ばれる元素で、L 殻に電子が 8 個入り閉殻なので、価電子は 0 です。

原子番号 11 の Na から原子番号 18 の Ar までは、電子は M 殻に入ります。

原子番号 11 の Na は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 1 個入ります。最外殻電子は M 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 12 の Mg は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 2 個入ります。最外殻電子は M 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

原子番号 17 の Cl までは、同じように価電子が 1 ずつ増えていきます。

原子番号 18 の Ar は、K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個入ります。最外殻電子は M 殻の 8 個です。

最外殻の電子数が 8 個になると、原子は安定します。Ar は希ガスと呼ばれる元素で、M 殻に電子が 8 個入っているので、価電子は 0 です。

原子番号 19 の K から原子番号 20 の Ca までは、電子は N 殻に入ります。

原子番号 19 の K は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個、さらに次の電子は N 殻に 1 個入ります。最外殻電子は N 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 20 の Ca は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個、さらに次の電子は N 殻に 2 個入ります。最外殻電子は N 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

以上の結果をまとめると、正しいグラフは④となります。

問4 正解 2

気体の種類によらず、0 ℃で 1.013 × 105 Pa の条件下なら、物質量 1 mol の気体の体積は 22.4 L です。

気体の種類によらず体積は等しいので、1 mol の質量が大きいほど気体の密度は大きくなります。

1 mol の質量が大きくなるのは分子量が大きいときなので、それぞれの気体の分子量を比較します。

空気の分子量の値と近い分子量をもつ気体は、空気の密度に近くなります。

なお、空気は窒素 80 %、酸素 20 %の混合気体なので、その平均分子量は

14 × 2 × 0.80 + 16 × 2 × 0.20 = 28.8

28.8 となります。

各選択肢の気体の分子量は

1 アルゴンは 1 原子で気体分子となります。そのため、原子量 = 分子量 = 40

2 一酸化窒素 NO の分子量は 14 + 16 = 30

3 オゾン O3 の分子量は 16 × 3 = 48

4 二酸化硫黄 SO2 の分子量は 32 + 16 × 2 = 64

5 二酸化炭素 CO2 の分子量は 12 + 16 × 2 = 44

最も空気の分子量に近いのは、②の一酸化窒素です。

問5 正解 6

実験Ⅰ

塩化カルシウム CaCl2 とグルコース C6H12O6 は水に溶けますが、二酸化ケイ素 SiO2 は水に溶けません。

実験Ⅱ

塩化カルシウムは水溶液中で電離して、Ca2+ イオンと Cl イオンになります。これらの電解質があるので、塩化カルシウム水溶液は電気を通します。

グルコースは水溶液中で電離しないので、グルコース水溶液は電気をほとんど通しません。

問6 正解 2

弱塩基の塩の塩化アンモニウム NH4Cl に強塩基の水酸化ナトリウム NaOH を加えると

NH4Cl + NaOH  →  NaCl + NH3 + H2O

のように弱塩基であるアンモニアが遊離します。

このとき 1 mol の塩化アンモニウムが反応すると、1 mol のアンモニアが生成します。

質量パーセント濃度 5.35 % の水溶液 100 g には、溶質(塩化アンモニウム)は

100[g] × \(\frac{5.35}{100}\) = 5.35[g]

含まれます。

塩化アンモニウムのモル質量は 14 + 1.0 × 4 + 35.5 = 53.5[g/mol] なので、

反応した塩化アンモニウムの物質量は

\(\frac{5.35[g]}{53.5[g/mol]}\) = 0.100[mol]

したがって、生成したアンモニアも 0.100 mol です。

アンモニアのモル質量は 14 + 1.0 × 3 = 17[g/mol] であるので、求めるアンモニアの質量は

17[g/mol] × 0.100[mol] = 1.7[g]

問7 正解 5

1 〇 青銅(ブロンズ)は銅とスズの合金です。

2 〇 アルミニウムは密度の小さい金属で、合金の材料に使われます。ジュラルミンはアルミニウムのほか銅やマグネシウムなどが含まれる合金です。

3 〇 鉄は湿った空気中で赤褐色にさびて酸化鉄(Ⅲ) Fe2O3 となります。

4 〇 金は化学的に安定した金属です。

5 × 銀は電気や熱を伝えやすい金属です。

第2問

問1 正解 3

1 × メスシリンダーでは正確な体積をはかれないので、メスフラスコを使います。

2 × こまごめピペット、メスシリンダーともに正確な体積をはかることはできません。

3 〇 正確な体積をはかりとるには、ホールピペットとメスフラスコが必要です。

4 × こまごめピペットでは正確な体積をはかりとれません。

問2 正解 1

まずはじめに、エタノールの分子量を求めます。

エタノール C2H5OH の分子量は、分子を構成する原子の原子量の総和として計算できるので、

12 × 2 + 1.0 × 6 + 16 = 46 です。

次に、9.2 g のエタノールは何モルなのかを計算します。

エタノールの分子量が 46 なので、エタノールのモル質量は 46 g/mol です。

9.2 g のエタノールの物質量は

\(\frac{9.2[g]}{46[g/mol]}\) = 0.20[mol]

エタノールが 0.20 mol あることがわかりました。またアボガドロ定数の定義より、6.0 × 1023 個の粒子が集まると、1 mol となります。

分子数を求めるのでアボガドロ定数をかけると

0.20[mol] × 6.0 × 1023[/mol]

= 1.2 × 1023[個]

エタノール分子は 1.2 × 1023 個あるとわかりました。

問3 正解 2

水が酸としてはたらくということは、化学反応式の左辺にある H2O が相手に H+ を与えて、右辺で OH が生成していることになります。

左辺の H2O が相手に H+ を与えて自身が OHとなっているのは、ウとオです。

また、化学反応式で使われている ⇄ は、化学反応が左から右、あるいは右から左のどちらにも進むことを示しています。

( → のときは、化学反応が左から右だけに進み、反応物から生成物が生じます。)

ただし本問では、特に気にすることなく、左辺の水 H2O が H+ を相手に与えるかどうかだけを考えれば解けます。

ア × H2O は塩化水素 HCl から水素イオン H+ を受け取っているので、塩基としてはたらいています。

イ × H2O は硝酸 HNO3 から水素イオン H+ を受け取っているので、塩基としてはたらいています。

ウ 〇 H2O は水素イオン H+ を相手(酢酸イオン CH3COO)に与えているので、酸としてはたらいています。

エ × H2O は酢酸 CH3COOH から水素イオン H+ を受け取っているので、塩基としてはたらいています。

オ 〇 H2O は水素イオン H+ を相手(炭酸イオン CO32-)に与えているので、酸としてはたらいています。

問4 正解 a 4     b 4

a

酸化数は -1 から 0 へと変化します。

H2O2 では H の酸化数 が +1 で、O の酸化数は -1 、H2O2 全体の酸化数は 0 です。

(過酸化水素 H2O2 の酸素原子の酸化数は、-2 ではなく例外的に -1 です。)

O2 は単体なので、分子全体では酸化数は 0 。したがって O の酸化数は 0 です。

b

2つの半反応式の両辺を加えて、反応式を導きます。

(1)式 × 2 + (2)式 × 5 より

2 MnO4 + 5 H2O2 + 6 H+  →  2 Mn2+ + 5 O2 + 8 H2O

グラフより、過マンガン酸カリウムが 0.10 mol あるときに反応が完了しています。

過マンガン酸イオン 2 mol と過酸化水素 5 mol が反応するので、過マンガン酸カリウム 0.10 mol と反応する過酸化水素は

0.10[mol] × \(\frac{5}{2}\) = 0.25[mol]

したがって、反応前の過酸化水素の物質量 x は 0.25 mol です。

問5 正解 3

1 〇 純水は中性であり pH = 7 なので、純水中の水素イオン濃度は

[ H+ ] = [ OH] = 1.0 × 10-7 mol/L

です。

強酸を純水で希釈していくと、水素イオン濃度は 1.0 × 10-7 mol/L に近づきます。

強酸を純水で希釈しても、中性を超えて塩基性になることはありません。

2 〇 pH の定義は

$$[H^+] = 1 × 10^{-pH}[mol/L]$$

です。

3 × 0.010 mol/L の塩酸は 1 価の強酸でほぼ電離するので、電離度を 1 とすると

[H+] = 0.010 mol/L × 1 = 1.0 × 10-2 mol/L です。

0.010 mol/L の硫酸は 2 価の強酸で、ほとんど完全に電離します。

水素イオン H+ は、硫酸 1 分子から 2 つ生成するので、電離度をほぼ 1 とすると

[H+] ≒  0.010 mol/L × 2 × 1 =  2.0 × 10-2 mol/L です。

このように同濃度の塩酸と硫酸では、硫酸が 2 価の強酸であることから、硫酸の水素イオン濃度の方が高くなります。

4 〇 KOH は 1 価の強塩基です。(アルカリ金属の水酸化物は強塩基です。)

問6 正解 1

1 × 電子の授受だけでも酸化還元反応は起こります。

例えばヨウ化カリウムと塩素の反応では、酸素原子も水素原子も存在しませんが、酸化還元反応が起きています。

2 KI + Cl2 → 2 KCl + I2

I は酸化され、酸化数は -1 から 0 と変わります。

Cl は還元され、酸化数は 0 から -1 へと変わります。

2 〇 O3 + 2 H+ + 2 e  →  O2 + H2O

オゾン O3 は酸化剤としてはたらくと、O2 と H2O に変化します。

オゾンは酸化剤としてはたらいたとき、反応後の H2O 酸素原子の酸化数は 0 から -2 と変化します。(単体の O2 の酸素原子は酸化数 0 のままです。)

3 〇 C2H2O4  →  2 CO2 + 2 H+ + 2 e

あるいは (COOH)2  →  2 CO2 + 2 H+ + 2 e

シュウ酸 C2H2O4 は還元剤としてはたらくと、CO2 に変化します。

シュウ酸は還元剤としてはたらいたとき、炭素原子の酸化数は +3 から +4 と変化します。

4 〇 二酸化硫黄 SO2 の硫黄原子の酸化数は +4 です。

酸化剤としてはたらく場合は、酸化数 0 の S に還元されます。

SO2 + 4 H+ + 4 e  →  S + 2 H2O

還元剤としてはたらく場合は、酸化数 +6 の SO42- に酸化されます。

SO2 + 2 H2O  →  SO42- + 4 H+ + 2 e

問7 正解 6

イオン化傾向の大きい金属は、水溶液中で陽イオンとなりやすいです。

イオン化傾向の大きな金属の板を、それよりイオン化傾向の小さい金属イオンが含まれる溶液に浸すと、イオン化傾向の大きな金属が溶けてイオンとなり溶液中に拡散します。

このとき金属が溶けて陽イオンとなるので、そのとき放出された電子を受け取って、水溶液中のイオン化傾向の小さい金属イオンが金属として析出します。

金属 A の板を水溶液に浸すと、Cu2+ 、Pb2+ 、Sn2+ 、いずれの陽イオンも析出しています。そこで、金属 A はそれらよりイオン化傾向の大きい Zn とわかります。

金属 B の板を水溶液に浸すと、Ag+ イオンが金属として析出し、Pb2+ と Sn2+ の 2 つのイオンは金属として析出しませんでした。

これより、金属 B は Pb と Sn よりイオン化傾向は小さく、Ag よりはイオン化傾向が大きいことがわかります。以上より、金属 B は Cu です。

2017年(平成29年)本試験 化学基礎 解答解説

第1問

問1 正解 5

炭素の同素体には、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブがあります。

黒鉛とカーボンナノチューブは電子を通しやすく、ダイヤモンドとフラーレンは電気を通しにくいです。

黄リンはリンの同素体の一つで、毒性が強く自然発火する性質があります。

硫黄の同素体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄があります。ゴム状硫黄には、引っ張るとゴムのように伸びる性質があります。

酸素の同素体には、O2 と表される酸素と、O3 と表されるオゾンがあります。

酸素 ( O2 ) は空気中に約 20 %含まれている、無色無臭の気体です。

オゾン ( O3 ) は空気中にごくわずかに存在する、淡青色で特異臭のある気体です。成層圏にはオゾン濃度の高いオゾン層がみられます。

1 〇 ダイヤモンドは炭素の同素体です。

2 〇 炭素の同素体のうち、黒鉛は電気をよく通します。

3 〇 リンの同素体には黄リン、赤リン、黒リンがあります。

4 〇 硫黄の同素体にはゴム状硫黄があります。

5 × 酸素の同素体には、酸素 ( O2 ) とオゾン ( O3 ) があります。

問2 正解 2

原子番号 20 の Ca まで、周期表の配置を覚えていないと解けない問題です。

原子番号順に元素を 20 個語呂合わせで覚えておくか、周期表の配置としてそのまま記憶しておく必要があります。

センター試験に出題されているので、最低限の知識として、水素 H から カルシウム Ca までの周期表の配列を習得することが求められているようです。

元素記号の左上の数字は質量数を表します。

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

ですから、求める中性子の数は、質量数と陽子の数の差になります。

中性子の数 = 質量数 - 陽子の数

Cl の原子番号は 17(つまり陽子の数は 17 )、Ar の原子番号は 18(陽子の数 18 )、K の原子番号は 19(陽子の数 19 )、Ca の原子番号は 20(陽子の数 20 )です。

これより、①の質量数 38 の Ar の中性子の数は 20 個です。

同様に、

②質量数 40 の Ar は中性子 22 個

③質量数 40 の Ca は中性子 20 個

④質量数 37 の Cl は中性子 20 個

⑤質量数 39 の K は中性子 20 個

⑥質量数 40 の K は中性子 21 個

です。

問3 正解 3

分子内に単結合しかないものを探します。二重結合や三重結合がある選択肢を除きます。

1 × 窒素原子 N は、不対電子を 3 個もつので(原子価が 3 )、N からは共有結合の価標が 3 つ出ています。

窒素原子 N が 2 個あるので、これらは共有結合を 3 つつくって三重結合になります。

2 × 酸素原子 O は、不対電子を 2 個もつので(原子価が 2 )、O からは共有結合の価標が 2 つ出ています。

酸素原子 O が 2 個あるので、これらは共有結合を 2 つつくって二重結合になります。

3 〇 酸素原子 O は、不対電子を 2 個もつので(原子価が 2 )、O からは共有結合の価標が 2 つ出ています。

水素原子 H は、不対電子を 1 個もつので(原子価が 1 )、H からは共有結合の価標が 1 つ出ています。

水素原子 H が 2 個、酸素原子 O が 1 個あるので、水素原子と酸素原子の間で共有結合を 2 つつくります。

この 2 つの共有結合は単結合です。

4 × 酸素原子 O は、不対電子を 2 個もつので(原子価が 2 )、O からは共有結合の価標が 2 つ出ています。

炭素原子 C は、不対電子を 4 個もつので(原子価が 4 )、C からは共有結合の価標が 4 つ出ています。

炭素原子 C が 1 個、酸素原子 O が 2 個あるので、炭素原子と酸素原子の間で二重結合をつくります。

CO2 分子内には二重結合が 2 つできます。

5 × 炭素原子 C は、不対電子を 4 個もつので(原子価が 4 )、C からは共有結合の価標が 4 つ出ています。

水素原子 H は、不対電子を 1 個もつので(原子価が 1 )、H からは共有結合の価標が 1 つ出ています。

炭素原子 C が 2 個、水素原子 H が 2 個あります。

炭素原子と水素原子の間で、共有結合を 2 つつくります。この 2 つの共有結合は単結合です。

炭素原子と炭素原子の間で、共有結合を 3 つつくります。これは三重結合になります。

6 × 炭素原子 C は、不対電子を 4 個もつので(原子価が 4 )、C からは共有結合の価標が 4 つ出ています。

水素原子 H は、不対電子を 1 個もつので(原子価が 1 )、H からは共有結合の価標が 1 つ出ています。

炭素原子 C が 2 個、水素原子 H が 4 個あります。

炭素原子と水素原子の間で、共有結合を 4 つつくります。この 4 つの共有結合は単結合です。

炭素原子と炭素原子の間で、共有結合を 2 つつくります。これは二重結合になります。

分子の構造式は次の通りです。単結合だけでできている分子は水 H2O です。

問4 正解 a 1     b 3

a

二酸化ケイ素 SiO2 は共有結合でできた結晶です。それ以外は以下のように、すべてイオン同士が電気的な引力で結晶を作っています。

硝酸ナトリウム Na+ と NO3 、塩化銀 Ag+ と Cl 、硫酸アンモニウム NH4+ と SO42- 、酸化カルシウム Ca2+ と O2- 、炭酸カルシウム Ca2+ と CO32-

b

メタンは正四面体形、水は折れ線形、二酸化炭素は直線形、アンモニアは三角錐形です。

水が折れ線形、アンモニアが三角錐形、メタンが正四面体形となる理由は以下の通りです。

これは分子の中心にある原子から見て、4 つある電子対がなるべく電気的な反発が小さくなるような構造となるためです。

H2O では、分子の中心を酸素原子と考えると、O-H 結合をつくっている共有電子対が 2 個、酸素原子につく非共有電子対が 2 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

しかし、非共有電子対は分子の形としては見えませんので、残るのは中心の酸素原子と、そこから正四面体の頂点方向にある水素原子 2 個です。そこで水分子の形は折れ線形に見えます。

NH3 では、分子の中心を窒素原子と考えると、N-H 結合をつくっている共有電子対が 3 個、窒素原子につく非共有電子対が 1 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

しかし、非共有電子対は分子の形としては見えませんので、残るのは中心の窒素原子と、そこから正四面体の頂点方向にある水素原子 3 個です。そこでアンモニアの形は三角錐形に見えます。

CH4 では、分子の中心を炭素原子と考えると、C-H 結合をつくっている共有電子対が 4 個あります。

この 4 つの電子対がなるべく離れるような形は、それぞれの電子対が正四面体の頂点にあるような構造です。

二酸化炭素が直線形となる理由は以下の通りです。

CO2 では、炭素原子と酸素原子は二重結合をつくります。

分子の中心を炭素原子と考えると、この二重結合が炭素原子を挟んで正反対の位置にあるので、分子全体では直線形になります。

炭素原子のまわりには二重結合の電子の塊が 2 つあるので、これらの反発が最も小さくなるのが直線形です。

問5 正解 3

1 〇 気体になっている分子(粒子)は、激しく熱運動をしています。そのため、気体分子は空間の中を飛び回っています。気体の分子同士は遠くに離れています。

液体の分子(粒子)は、気体のときほど激しく熱運動をしないので、分子は全体がまとまって一定の体積になっています。

液体の分子は、限られた体積の液体の中で動いています。したがって、気体より液体の方が分子同士の距離は近いです。

2 〇 液体中の分子は、熱運動で不規則に動いています。それぞれの分子が不規則に動くので、位置も変わります。

3 × この問題はまだ学習していない内容ですが、他の選択肢の正誤は判別できるはずです。

(液体が沸騰し気体になる温度である)沸点とはどういうことか、を知っている必要があります。

液体の蒸気圧が大気圧と等しくなったときに、沸騰が始まり液体は気体になります。液体の表面だけでなく、液体の内側からも分子が気体となる状態が沸騰です。

(ただし沸騰していない液体の状態でも、液体の表面から蒸発してゆっくりと気体になっています。)

液体の蒸気圧と大気圧が等しくなる温度が沸点なので、大気圧が変わると沸点の温度も変わります。

例えば、水は一般に 100 ℃が沸点ですが、高い山の上など大気圧の低い場所では 100 ℃より沸点は低くなります。

4 〇 固体から気体に直接状態が変化することを、昇華といいます。二酸化炭素(ドライアイス)やヨウ素 I2 などは、固体から気体に昇華します。

5 〇 沸騰していなくても、液体の表面から液体の分子は蒸発して気体になっています。グラスに水を入れておいても、長時間放置すれば蒸発して水がなくなる例からわかるでしょう。

問6 正解 6

実験で起きた現象は、次のように考えられます。

乾いたフラスコ内にアンモニアが充満しているところに、スポイトから水を少量入れました。

アンモニアは非常に水に溶けやすいので、スポイトから入れた水にアンモニア気体の一部が溶け、フラスコ内の圧力が下がってビーカーの水を吸い上げました。

1 〇 アンモニア NH3 の分子量は 17 で、平均分子量が約 28.8 の空気より軽いです。また空気より軽いアンモニアは水に溶けやすいので、上方置換法で捕集します。

2 〇 ゴム栓の隙間から空気が入ると、フラスコ内の圧力が下がらず、水を吸い上げない可能性があります。

3 〇 アンモニアの量が少ないと、フラスコ内の圧力の下がり方が小さく、あまり水を吸い上げません。

4 〇 フラスコ内が水でぬれていると、はじめからアンモニアがフラスコ内の水滴に溶けて、アンモニアが減ってしまいます。

5 〇 フラスコ内に噴き上がった水にアンモニアが溶けると、水は塩基性になります。ブロモチモールブルー溶液は塩基性で青くなるので、水は青くなります。

6 × メタンは水にほとんど溶けないので、スポイトで水を入れてもフラスコ内の圧力は変わらず、水を吸い上げません。

問7 正解 3

1 〇 アルミニウムはボーキサイトから電気分解によって製錬されますが、このとき大量の電力を消費します。リサイクルした場合、必要なエネルギーは製錬の約 3 %とされています。

2 〇 空気中の酸素で酸化されるのを防ぎます。

3 × 水道水に塩素が含まれているのは、殺菌のためです。塩素を水に溶かすと、殺菌・漂白作用のある次亜塩素酸が生成します。

Cl2 + H2O  →  HCl + HClO

4 〇 プラスチックは耐久性や耐食性が非常に高いので、自然界ではほとんど分解されません。

5 〇 雨水には空気中の二酸化炭素が溶けており、雨水に十分量の二酸化炭素が溶けたときの pH は約 5.6 となっています。

6 〇 洗剤には水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(疎水基)があり、油汚れを疎水基が取り込んで汚れを落とします。

第2問

問1 正解 1

1 × 気体の水素分子は H2 であり、分子量は 2.0 です。気体のヘリウム分子は He であり、分子量は 4.0 です。したがって、4 L の H2 は 2 L の He と同じ重さです。

H2 の質量 = \(\frac{4[L]}{22.4[L]}\) × 2.0[g/mol]

He の質量 = \(\frac{1[L]}{22.4[L]}\) × 4.0[g/mol]

4 L の水素 H2 の方が、1 L のヘリウム He より重くなります。

2 〇 メタン CH4 の分子量は 16 です。16 g のメタンの物質量は 1.0 mol になります。

メタン 1 分子に水素原子は 4 個あるので、メタン 1.0 mol には水素原子が 4.0 mol あります。

3 〇 水 100 g に塩化ナトリウム 25 g を溶かした溶液の質量は 125 g です。質量パーセント濃度は次のように計算できます。

\(\displaystyle\frac{25}{(100 + 25)}\) × 100 = 20%

4 〇 水溶液 100 mL に水酸化ナトリウム 4.0 g が溶けているので、この水溶液 1000 mL には水酸化ナトリウムが 40 g 溶けています。

4.0[g] × \(\displaystyle\frac{1000}{100}\) = 40[g]

水酸化ナトリウムの式量(モル質量)は 40 なので、水溶液のモル濃度は

\(\displaystyle\frac{40[g]}{40[g/mol]}\) = 1.0[mol/L]

問2 正解 2

物質 A の質量が w [ g] でモル質量が M [ g/mol ] なので、

物質 A の物質量は \(\frac{w[g]}{M[g/mol]}\) です。

物質 A が \(\frac{w}{M}\) モルあることがわかったので、

物質 A の分子の数は、\(\frac{w}{M}\) × NA [個] となります。

分子 1 個の断面積と分子の数の積が、膜の全体の面積になります。

s × \(\frac{w}{M}\) × NA = X

式を変形すると

s = \(\displaystyle\frac{XM}{wN_A}\)

問3 正解 2

完全燃焼なので、酸素と反応して二酸化炭素と水が発生します。

C2H5OH + 3 O2 → 2 CO2 + 3 H2O

1 mol のエタノールから 2 mol の二酸化炭素が発生します。

CO2 の分子量は 44 なので、44 g の二酸化炭素の物質量は 1.0 mol です。

つまりエタノールは 0.50 mol 反応しています。

エタノールの分子量は 46 ですから、 0.50 mol の質量は

46[g/mol] × 0.50[mol] = 23[g]

燃焼したエタノールの質量は 23 g です。

問4 正解 a 4     b 4

a

器具の名称は、1 はこまごめピペット、2 はビュレット、3 はメスシリンダー、4 はホールピペット、5 はメスフラスコです。

それぞれの器具の用途は、

1 は大体の量の液体を滴下(正確には測定できない)

2 は正確な量の液体を滴下(滴定実験で用いる)

3 は液体の大まかな体積を測定する(正確には測定できない)

4 は決められた正確な量の液体をはかりとる(そのあとビーカーやメスフラスコなど別の容器に移す)

5 は決められた正確な量の液体をつくる(メスフラスコ内に正確にはかりとった液体を入れ、蒸留水などを加えて決められた正確な体積の溶液とする)

などです。

b

操作Ⅰ 

ホールピペット内を純水ですすぎ、水滴がついたまま溶液をはかりとると、はかりとる溶液の濃度が薄まってしまいます。そのため、同じ溶液ですすぎます。

操作Ⅱ

メスフラスコの標線と、溶液の液面のくぼんで平らになった線を合わせます。

(参考)

容器に液体を入れたときに、液面が屈曲する現象をメニスカスといいます。ガラス容器内の液面を読み取るとき、ガラス器具の標線と液面の底面を合わせます。

ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「メニスカス」A:凹型メニスカスの下面。B:凸型メニスカスの上面。の図から引用

ここでは左の A の図のように、下にへこんだ形の液面となります。図の点線のように、液面の底面で数値を読み取ります。

ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「メニスカス」ビュレット内の水のメニスカス。の図から引用

上の画像は、実際のガラス器具内の液面です。やや見にくいですが、液面の底面と目盛り線から、21.00 mL と読み取れます。

問5 正解 5

化合物群の水溶液は以下の通りです。

アンモニア NH31 価の弱塩基
水酸化カリウム KOH1 価の強塩基
水酸化カルシウム Ca(OH)22 価の強塩基
酢酸 CH3COOH1 価の弱酸
硝酸 HNO31 価の強酸

0.01 mol/L の A~C の水溶液 100 mL を中和滴定するとき、 0.1 mol/L の塩酸もしくは NaOH 水溶液を使うと、中和に要する液量は 10 mL または 20 mL です。

0.01[mol/L] × \(\frac{100[ml]}{1000[ml]}\) × A~C溶液の価数 = 0.1[mol/L] × \(\frac{10 or 20[ml]}{1000[ml]}\) × 1価

2価の化合物は Ca(OH)2 だけであり、中和に 20 mL 必要なのはこの化合物しかないので、化合物 B は Ca(OH)2 です。

また指示薬を加えたときの様子から、水溶液 A は

フェノールフタレインを用いたとき赤から無色に徐々に変化した

とあるので、

フェノールフタレインの変色域が pH 8.0 ~ 9.8 であることから、中和点までのあいだに水溶液は弱塩基性の領域で徐々に pH が変化した

とわかります。

同時に、メチルオレンジを用いたとき黄から赤に急激に変化した

とあるので、

メチルオレンジの変色域が pH 3.1 ~ 4.4 であることから、中和点付近から中和点を超えたとき、急激に酸性側で pH が変化した

ことがわかります。

まとめると、塩基性側で pH の変化がゆっくりで、中和点付近を過ぎ酸性側で pH の変化が大きくなっています。

これらを考えると、弱塩基に強酸を滴下しているので、化合物 A は NH3 です。

水溶液 C は

フェノールフタレインを用いたとき無色から赤に急激に変化した

とあるので、

フェノールフタレインの変色域が pH 8.0 ~ 9.8 であることから、中和点付近から中和点を超えたとき、塩基性側で急激に pH が変化していることがわかります。

同時に、メチルオレンジを用いたとき赤から黄に徐々に変化した

とあるので、

メチルオレンジの変色域が pH 3.1 ~ 4.4 であることから、中和点までのあいだに水溶液は弱酸性の領域で徐々に pH が変化した

ことがわかります。

まとめると、酸性側で pH の変化がゆっくりで、中和点付近から中和点を超えたとき、 塩基性側で pH の変化が大きくなっています。

これらを考えると、弱酸に強塩基を滴下しているので、化合物 C は CH3COOH です。

問6 正解 6

MnO4 は、中性または塩基性水溶液中で酸化剤としてはたらきます。

このとき、MnO4 の Mn 原子の酸化数は +7 で、MnO2 の Mn 原子の酸化数は +4 です。

反応後に酸化数は 3 減っているので、 Mn 原子が 1 個あたり電子を 3 個受け取り、還元されていることがわかります。

Mn 原子 1 個あたり電子を 3 個受け取るので、b = 3 となります。

そこで Mn の半反応式は

MnO4 + a H2O + 3 e  →  MnO2 + 2 a OH

となります。

この半反応式の酸素原子の数を、両辺で合わせます。

4 + a × 1 = 2 + 2a × 1

これを解くと a = 2 です。

よって半反応式は

MnO4 + 2 H2O + 3 e  →  MnO2 + 4 OH‥‥(A)

電子を消去するためには、金属 M2+ の半反応式を 3 倍して

3 M2+  →  3 M3+ + 3 e‥‥(B)

とします。

(A)(B)両式を足し合わせれば

MnO4 + 3 M2+ + 2 H2O  →  MnO2 + 3 M3+ + 4 OH

となり、⑥と解答できます。

(参考)

なお本問のように、過マンガン酸カリウムは中性・塩基性の条件下でも酸化剤として用いられます。

これまでの学習では、過マンガン酸カリウム水溶液は、硫酸を加えることにより酸性条件としていました。

酸性条件下での過マンガン酸カリウムの半反応式は

MnO4 + 8 H+ + 5 e  →  Mn2+ + 4 H2O

と表されます。

これに対し、中性・塩基性条件下で過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いたときの半反応式は、

MnO4 + 2 H2O + 3 e  →  MnO2 + 4 OH

となります。

問7 正解 4

図 2 からわかるように、炭酸カルシウムの質量が増えると、発生した二酸化炭素の物質量も増えます。

また炭酸カルシウムの質量が 2.5 g のとき、発生した二酸化炭素の物質量は 0.025 mol です。炭酸カルシウムの質量がこれ以上増えても、発生した二酸化炭素の物質量は 0.025 mol のまま一定です。

これより、炭酸カルシウムの質量を 2.5 g まで増やすと、存在する塩酸が完全に反応して、0.025 mol の二酸化炭素が発生したとわかります。

反応式より HCl が 2 mol 反応すると CO2 が 1 mol 発生します。

したがって、存在する HCl の物質量は

0.025 × 2 = 0.050 mol

です。

求める塩酸のモル濃度を X mol/L とすると、塩酸の溶液は 25 mL なので

X[mol/L] × \(\frac{25[mL]}{1000[mL]}\) = 0.050[mol]

これを解くと X = 2.0[mol/L]

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