同素体

ポイント

同じ元素でできている単体で、性質の異なるものを互いに同素体といいます。

元素の粒子(原子)のつながり方が異なるため、同じ元素でも同素体は異なる性質を示します。

炭素の同素体には、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブがあります。

硫黄の同素体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄があります。

酸素の同素体には、酸素 ( O2 ) とオゾン ( O3 ) があります。

リンの同素体には、黄リンと赤リンがあります。

同素体

同じ元素でできている単体で、性質が異なるもの同士をそれぞれ同素体といいます。

じ元でできている単は、同素体です。同と素と体の漢字の部分を覚えると、同素体の定義も思い出すことができます。

例えば鉛筆の芯は黒鉛でできていて、この黒鉛の成分は炭素の元素です。またダイヤモンドも炭素の元素からできています。

どちらも炭素の元素でできていますが、黒鉛とダイヤモンドは見た目も物質としての性質も大きく異なります。

これら黒鉛とダイヤモンドは、炭素の同素体といいます。

このような同素体をもつ元素には、炭素、酸素、硫黄、リンなどがあります。

同素体が存在する理由

ではなぜ同素体は、同じ元素でできた単体なのに性質が異なるのでしょうか。

その理由は、同素体をつくっている元素の小さな粒(原子といいます)のつながり方が、それぞれの同素体では異なっているからです。

例えば黒鉛もダイヤモンドも、炭素の元素の小さな粒(原子)が数多くつながって物質(単体)をつくっています。

黒鉛は、1 個の炭素の原子が周りの 3 つの原子につながって、単体ができています。これに対しダイヤモンドは、1 個の炭素の原子が周りの 4 つの原子につながって、単体ができています。

1 つの原子が周りの 3 つの原子につながりながら組み立てられた黒鉛と、1 つの原子が周りの 4 つの原子につながりながら組み立てられたダイヤモンドでは、単体の内部の形(構造)が異なります。

このように単体が組み立てられる形が異なることで、同素体はさまざまな性質が違ってきます

炭素の同素体

炭素の同素体には、先ほどあげた黒鉛ダイヤモンドのほか、フラーレンカーボンナノチューブという物質もあります。

黒鉛

黒鉛は、炭素の元素の小さな粒(原子)1 個が、周りの 3 つの原子とつながってできています。

この構造は、正六角形をつくりながら平面状に広がります。この平面上の構造が重なって、黒鉛はできています。

黒鉛には、柔らかくてはがれやすく電気を通しやすい、という性質があります。

ダイヤモンド

ダイヤモンドは、炭素の原子 1 個が周りの 4 つの原子につながってできています。正四面体をつくるように原子がつながって、ダイヤモンドはできています。

ダイヤモンドには、非常に硬くて電気を通さない、という性質があります。

ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「ダイヤモンド」ダイヤモンドの結晶構造から引用

フラーレン

フラーレンは、1 個の炭素原子が周りの 3 つの原子とつながりながら、球状になっています。下の図は C60 と表される炭素の原子が 60 個でできたフラーレンです。

フラーレンは電子を通しにくい性質です。

カーボンナノチューブ

カーボンナノチューブは、1 個の炭素原子が周りの 3 つの原子とつながって、筒状の構造をつくります。

カーボンナノチューブには、電気を通しやすい性質があります。

硫黄の同素体

硫黄の同素体には、斜方硫黄単斜硫黄ゴム状硫黄があります。

常温で存在する黄色い結晶が、斜方硫黄です。

斜方硫黄を液体になるまで加熱して、それを冷やすと黄色の単斜硫黄となります。斜方硫黄は塊の結晶ですが、単斜硫黄はとげとげした針状結晶です。

斜方硫黄を高温まで加熱して、それを水に入れ急激に冷やすとゴム状硫黄が得られます。ゴム状硫黄は純度によって色が変わり、黄色から褐色の結晶です。ゴム状硫黄は引っ張ると伸びるゴムのような性質があります。

単斜硫黄とゴム状硫黄は、常温で放置していると少しずつ斜方硫黄に変わります。

斜方硫黄と単斜硫黄の単体では、硫黄原子が 8 個集まってできています。この 8 個の硫黄原子は、輪のような形(環状といいます)になっています。斜方硫黄と単斜硫黄の原子の集まった形を下に示します。

これに対しゴム状硫黄は、硫黄原子が一本のひものようにつながった形(鎖状といいます)をしています。

ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「硫黄」S8硫黄から引用

酸素の同素体

酸素の同素体には、酸素( O2 )オゾン( O3 )があります。

酸素は空気中に約 20 %含まれている、無色無臭の気体です。酸素の原子が 2 つつながってできている単体なので、O2 と表されます。

オゾンは空気中にごくわずかに存在する、淡青色で特異臭のある気体です。成層圏にはオゾン濃度の高いオゾン層がみられます。オゾンは酸素の原子が 3 つつながってできている単体なので、O3 と表されます。

リンの同素体

リンの同素体には、黄リン赤リンがあります。

黄リンは淡黄色のロウ状の固体です。猛毒で空気中で自然発火するので、水に入れて保存します。黄リンはリンの原子が4つ集まった単体なので、P4 と表されます。

赤リンは赤褐色の粉末状の固体です。黄リンより化学的に安定で毒性は低いです。マッチ箱の赤いザラザラした側面の薬剤に使われています。

問題演習

確認テスト1

次にあげる物質は何か、考えてみましょう。

  1. 赤褐色の粉末状の固体で、マッチ箱の側面に薬剤として利用されるリンの同素体です。
  2. 炭素の同素体で、炭素原子 60 個でできた C60 などが有名です。電子を通しにくいです。
  3. 硫黄の同素体で、引っ張ると伸びる性質があります。
  4. 淡青色の刺激臭がある気体で、酸素の同素体です。
  5. 炭素の同素体で、非常に硬く電子を通しにくい結晶です。
  6. 黄色で針状の結晶である、硫黄の同素体です。
  7. 毒性が強く、自然発火するため水中で保存するリンの同素体です。
  8. 柔らかくはがれやすい黒色の固体で、電気をよく通す炭素の同素体です。
  9. 大気中に約 20 %含まれる気体です。
  10. 炭素の同素体で、電気をよく通し筒状の形をしています。
  11. 常温で安定な黄色の結晶で、硫黄の同素体です。
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  1. 赤リン
  2. フラーレン
  3. ゴム状硫黄
  4. オゾン ( O3 )
  5. ダイヤモンド
  6. 単斜硫黄 ( S8 )
  7. 黄リン ( P4 )
  8. 黒鉛
  9. 酸素 ( O2 )
  10. カーボンナノチューブ
  11. 斜方硫黄 ( S8 )

実践問題1(2017本第1問問1)

同素体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① ダイヤモンドは炭素の同素体の一つである。

② 炭素の同素体には電気を通すものがある。

③ 黄リンはリンの同素体の一つである。

④ 硫黄の同素体にはゴムに似た弾性をもつものがある。

⑤ 酸素には同素体が存在しない。

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問1 より引用)

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正解 5

炭素の同素体には、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブがあります。

黒鉛とカーボンナノチューブは電子を通しやすく、ダイヤモンドとフラーレンは電気を通しにくいです。

黄リンはリンの同素体の一つで、毒性が強く自然発火する性質があります。

硫黄の同素体には、斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄があります。ゴム状硫黄には、引っ張るとゴムのように伸びる性質があります。

酸素の同素体には、O2 と表される酸素と、O3 と表されるオゾンがあります。

酸素 ( O2 ) は空気中に約 20 %含まれている、無色無臭の気体です。

オゾン ( O3 ) は空気中にごくわずかに存在する、淡青色で特異臭のある気体です。成層圏にはオゾン濃度の高いオゾン層がみられます。

1 〇 ダイヤモンドは炭素の同素体です。

2 〇 炭素の同素体のうち、黒鉛は電気をよく通します。

3 〇 リンの同素体には黄リン、赤リン、黒リンがあります。

4 〇 硫黄の同素体にはゴム状硫黄があります。

5 × 酸素の同素体には、酸素 ( O2 ) とオゾン ( O3 ) があります。

実践問題2(2020追第1問問6)

炭素の同素体に関する記述として、下線部に誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① ダイヤモンドは、炭素原子間の結合による正八面体形の構造が繰り返された立体構造をとる。

② フラーレンは、炭素の同素体の一つである。

③ 黒鉛は、それぞれの炭素原子が隣接する 3 個の炭素原子と結合して、正六角形の構造が繰り返された平面構造をつくり、それが層状に重なった構造をとる。

④ 炭素の同素体には、電気をよく通すものがある。

(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問6 より引用)

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正解 1

1 × 炭素原子は 4 つの共有結合をもち、ダイヤモンドでは正四面体形の構造が繰り返されます。

2 〇 炭素原子が球状に結合した物質をフラーレンといいますが、これは炭素の同素体です。

3 〇 黒鉛では隣接する 3 つの炭素原子と共有結合します。そのため、結合する角度が 120 度の平面上の構造となり、正六角形の構造が繰り返されます。

4 〇 黒鉛は電気を通します。