炎色反応と沈殿反応で元素を調べる

ポイント

ある物質を炎に入れたとき、その物質に含まれる元素が特有な色を示す現象を炎色反応といいます。

溶液中で反応が起こり、溶けにくい固体が生じて沈殿が観察できるとき、これを沈殿反応といいます。

炎色反応や沈殿を利用すると、物質に含まれる元素や化合物を確かめることができます。

炎色反応と沈殿

溶液中にどんな元素が含まれているか、捕集した気体が何であるかなど、物質の成分を確認したいことがあります。

このようなとき、炎色反応と呼ばれる現象や、溶液に生じる沈殿から確認することができます。

炎色反応

洗浄した白金線(白金でできた細長い棒)を調べたい溶液に浸し、ガスバーナーの外炎に入れると、元素に特有な色の炎が観察できます。これを炎色反応といいます。

炎色反応の色は元素によって違うので、炎色反応を利用して、溶液中に何の元素が含まれていたかを調べることができます。

以下に代表的な元素の炎色反応を示します。なお、Cu は銅、Ba はバリウム、Sr はストロンチウムの元素記号です。

元素名Li NaKCuBaCaSr 
黄 赤紫青緑黄緑赤橙紅 
リチウム   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」リチウムの画像から引用
ナトリウム   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」ナトリウムの画像から引用
カリウム   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」カリウムの画像から引用
   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」銅の画像から引用
カルシウム   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」カルシウムの画像から引用
ストロンチウム   ウィキペディア(Wikipedia)より、項目「炎色反応」ストロンチウムの画像から引用

沈殿

溶液に溶けにくい固体が生じる反応を、沈殿反応といいます。沈殿反応を利用して、物質の成分を確かめることができます。

食塩水に硝酸銀水溶液を加えると、水溶液が白く濁ります。これは食塩水中にあった塩素元素が銀と反応して、塩化銀という水に溶けない白い固体が発生したからです。

この塩化銀の沈殿反応から、食塩水中に塩素元素が存在することが確認できます。

また、調べたい気体を石灰水に通じると白く濁りました。

石灰水と二酸化炭素が反応すると、水に溶けにくい炭酸カルシウムが生じます。このとき水溶液中に炭酸カルシウムの小さな粒が漂って、白濁します。

白濁する理由は炭酸カルシウムの沈殿なので、調べたい気体に二酸化炭素が含まれていることが確認できます。

問題演習

確認テスト1

花火の着色に利用されるなど、特定の元素が特有の色を示す炎色反応は身近なものです。以下の代表的な元素ではどのような色の炎色反応を示すのか、表を埋めてみましょう。

元素名Li NaKCuBa Ca Sr 
      
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炎色反応で各元素が呈する色は次の通りです。

元素名Li NaKCuBaCaSr 
黄 赤紫青緑黄緑赤橙紅 

確認テスト2

次の( )に入る物質を選びましょう。

海水に硝酸銀水溶液を加えると、白色の沈殿が生じた。海水には元素の( )が成分として含まれることが確認できた。

  1. ナトリウム
  2. 塩素
  3. カリウム
  4. 水素
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正解 2

硝酸銀水溶液中の銀と海水中の塩素から、白色沈殿の塩化銀が生じます。この沈殿反応から、海水には塩素元素が含まれることがわかります。

確認テスト3

次の( )に入る物質を選びましょう。

石灰水の入った集気びんに、実験で得られた気体を送り込んだ。そのあと集気びんを密閉して振り混ぜたら、石灰水が白く濁った。実験で得られた気体は( )であることが確認できた。

  1. 水素
  2. 酸素
  3. 二酸化炭素
  4. メタン
  5. 塩素
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正解 3

吹き込むと石灰水を白濁させる気体は二酸化炭素です。この沈殿反応から、気体が二酸化炭素であることがわかります。

実践問題1(2018本第1問問5)

純物質をビーカーに入れ、次の実験Ⅰを行った。に当てはまる純物質として最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

実験Ⅰ の固体に水を加えてかき混ぜると、はすべて溶けた。

実験Ⅱ 実験Ⅰで得られたの水溶液の炎色反応を観察したところ、黄色を呈した。また、の水溶液に硝酸銀水溶液を加えると、白色沈殿が生じた。

① 硝酸カリウム    ② 硝酸ナトリウム    ③ 炭酸カルシウム

④ 硫酸バリウム    ⑤ 塩化カリウム    ⑥ 塩化ナトリウム

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問5 より一部を引用)

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正解 6

実験Ⅰで、アが水に溶けるかどうか確認できます。

水に溶けるのは①、②、⑤、⑥です。ほとんど溶けないのが③、④です。

実験Ⅱで炎色反応が黄色となるのは、ナトリウム(ナトリウムイオン)が含まれているためと考えられます。

また、硝酸銀水溶液を混合させて沈殿が生じるのは、塩素元素(塩化物イオン)が含まれているためと考えられます。(塩化銀 AgCl の沈殿は白色です。)

アを水に溶かすと、その水溶液にはナトリウムと塩素が含まれています。

これらより、アは塩化ナトリウム NaCl です。

実践問題2(2017追第1問問6)

炎色反応に関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① 炎色反応は、物質を高温の炎の中で熱したとき、炎がその物質の成分元素に特有の色を示す現象である。

② 実験室で炎色反応を観察するときは、調べたい物質を含む水溶液をつけた白金線を炎に入れる

③ ガスバーナーを用いて炎色反応を観察するときは、外炎を用いる

④ ナトリウムは、黄色の炎色反応を示す

⑤ 花火には、炎色反応が利用されている

⑥ 遷移元素は、炎色反応を示さない

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問6 より引用)

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正解 6

洗浄した白金線(白金でできた細長い棒)を調べたい溶液に浸し、ガスバーナーの外炎に入れると、元素に特有な色の炎が観察できます。これを炎色反応といいます。

炎色反応の色は元素によって違うので、炎色反応を利用して、溶液中に何の元素が含まれていたかを調べることができます。

1 〇

2 〇

3 〇 外炎のほうが内炎より温度が高いです。

4 〇

5 〇

6 × 遷移元素は現時点でまだ学んでいない事柄なので、この選択肢だけ正誤を判別できないかもしれません。

遷移元素には、鉄やニッケル、銅、銀、金、白金などの金属の元素が含まれます。

このうち遷移元素である銅 Cu は、炎色反応(青緑色)を示すので、⑥が誤りとなります。