拡散と熱運動・絶対温度

ポイント

空間にある気体の粒子(分子)や、液体の中に溶けた物質の粒子(分子)が、自然に広がっていく現象を拡散といいます。

分子は温度に応じて不規則に動き回ります。これを熱運動といいます。分子が熱運動をすることによって、拡散が起こります。

温度には -273℃ という下限があり、この温度を絶対零度といいます。絶対零度を基点とした温度の単位を絶対温度といい、K(ケルビン)で表します。

絶対温度 T [K] とセルシウス温度 t [℃] の関係は、T = t + 273 となります。

拡散と熱運動

ある空間に存在する気体の粒子(分子といいます)は、その空間のなかを自然に広がっていきます。この現象を拡散といいます。

液体でも拡散はあり、ある液体の中に物質を溶かすと、溶けた物質の粒子(分子)が液体の中に自然に広がります。

気体の分子や液体に溶けた分子は、不規則に動き回っています。この動きを熱運動といいます。分子が熱運動をするために、拡散が起こります。

拡散

部屋の中に匂いのする物質を持ち込むと、その匂いは時間とともに部屋全体に広がります。これは匂いの成分の粒子(分子)が、持ち込んだところから部屋の隅々まで広がるためです。

匂いの成分の分子が空間内に自然に広がっていく現象を、拡散といいます。

拡散は気体分子だけでなく、液体中の分子でも起こります。以下に拡散の例をあげます。

水に砂糖を溶かすと、かき混ぜなくても溶けた砂糖の分子はゆっくりと水の中で拡散し、十分に時間がたつと水全体に広がります。

水にインクをたらすと、透明な水にインクの色素の分子が広がっていきます。

拡散では、濃度の高いところから濃度の低いところへ物質の粒子が動くように観察されます。

先ほどの例では、部屋に匂いのする物質を持ち込むと、持ち込んだ匂いの強い場所から、もともと匂いのしなかった部屋の隅の方へ、匂いの成分の粒子が拡散します。そして最終的には、部屋のどの場所でも匂いの強さは同じになります。

水にインクをたらした場合でも、はじめはインクの濃い場所から薄い場所へとインクの色素の分子が拡散しますが、最後には水全体が薄く均一にインクで染まります。

熱運動

熱運動とは、気体の分子や液体中の分子が、その温度に応じて絶えず不規則に動き回っている現象のことです。分子が熱運動をするために、拡散が起こります。

熱運動は、温度が高いほうが激しくなります。温度が低いと、熱運動はゆっくりとした動きになります。

熱運動により、気体の分子は空間中をランダムに飛び回り、大きな体積となります。

液体の分子は熱運動により自由に動きますが、液体の体積は気体より非常に小さくなります。

固体の分子も熱運動をしていますが、固体の分子は位置が決まっていて、その位置で振動するだけです。

固体液体気体
温度低い高い
熱運動決まった場所を中心に振動する液体の中で自由に動く空間内を飛び回る
体積小さい小さい大きい

絶対温度

私たちが日常生活で温度を測るときは、セルシウス温度(セ氏)を単位としています。

夏の暑い日に、気温が 30 ℃ 以上で真夏日になったと聞くことがあります。身の回りでは、 0 ℃ で水が凍り、100 ℃ で水が沸騰します。この単位「℃」は、セルシウス温度(セ氏)です。

セルシウス温度は、1気圧のもとで、水の凝固点( 0 ℃)と沸点( 100 ℃)の間を 100 等分して定められた温度の単位です。

温度は高い方には限りがありませんが、低い方には限界があります。温度の下限は -273℃ で、この温度を絶対零度といいます。

絶対零度では、すべての物質の粒子は熱運動を停止します。そのため、絶対零度より低い温度は考えられません。

この絶対零度を温度の基点とした温度は、絶対温度と呼ばれます。絶対温度の単位は K(ケルビン)です。

絶対温度では -273℃ を 0 K とし、温度の目盛り幅はセルシウス温度と同じです。

ある温度をセルシウス温度で t ℃ としたとき、これを絶対温度 T K で表すと次のようになります。

T = t + 273

この関係をグラフで表すと以下の通りです。

-273 ℃ は 0 K、0 ℃ は 273 K 、100 ℃ は 373 K です。セルシウス温度と絶対温度の目盛りは同じ間隔ですから、1 ℃ 上昇すれば 1 K 上昇します。

問題演習

確認テスト1

次の文章の空欄に当てはまる適切な語句を考えましょう。

部屋に花束を持って入ると、風のない部屋の中に花の香りが広がります。これは、花の香りの粒子が自由に飛び回っているからです。このように物質の粒子が自然に広がることを( A )といいます。

このとき花の香りの粒子は、不規則に動き回っています。この運動を( B )といいます。( B )は温度によって程度が変わり、高温では( C 激しく・弱く )なり、物質の粒子は気体として存在します。

低温では物質の粒子は( D 気体・液体・固体 )となり、( B )によって決まった位置を中心に振動しています。

さらに温度が低くなると、物質の粒子の動きは止まります。このときの温度を( E )といいます。( E )をセルシウス温度で表すと -273 ℃ です。

( E )を基点として、セルシウス温度と同じ目盛りで区切った温度のことを( F )といいます。( F )では単位として K を用い、これは( G )と読みます。

正解を見る

A:拡散   B:熱運動   C:激しく   D:固体

E:絶対零度   F:絶対温度   G:ケルビン

確認テスト2

次のセルシウス温度を絶対温度に変換してみましょう。

  1. -273 ℃
  2. -100 ℃
  3. 0 ℃
  4. 27 ℃
正解を見る
  1. 0 K
  2. 173 K
  3. 273 K
  4. 300 K