物質の状態変化

ポイント

物質は温度や圧力の条件によって、固体・液体・気体の 3 つの状態のあいだを変化します。この 3 つの状態を物質の三態といいます。

固体から液体への状態変化は融解といい、融解する温度を融点といいます。

液体から気体への状態変化は蒸発といい、沸騰して蒸発する温度を沸点といいます。

気体から液体への状態変化は凝縮といいます。

液体から固体への状態変化は凝固といい、凝固する温度を凝固点といいます。

固体から気体へ、または気体から固体への状態変化は昇華といいます。

物質そのものが変化することを化学変化、物質は変わらずに状態などが変わることを物理変化といいます。

物質の三態

物質は温度や圧力に応じて、固体・液体・気体の 3 つの状態のあいだで変化します。この 3 つの状態を物質の三態といいます。

水を例とすると、固体が氷、液体が水、気体が水蒸気です。

固体から液体への状態変化は融解といい、融解する温度を融点といいます。例えば、氷(水の固体)が融解して水となります。このとき氷の融点は 0 ℃ です。

液体から気体への状態変化は蒸発といい、沸騰して蒸発する温度を沸点といいます。

注意点として、液体は沸騰していなくても表面から蒸発し、少しずつ気体となっています。これに対し沸騰とは、液体の内部からも物質が気体となって蒸発が起こる現象です。

水は室温でも蒸発して水蒸気(気体の水)になっていますが、加熱して沸点の 100 ℃ になると、液体である水の内部からも水蒸気の泡が発生して、速く蒸発するようになります。

気体から液体への状態変化は凝縮といいます。

水蒸気は凝縮すると水になります。寒い季節にお湯を沸かすと、冷たい窓に水滴がつきます。これは水蒸気が冷やされて凝縮して、水になったためです。

液体から固体への状態変化は凝固といい、凝固する温度を凝固点といいます。

水は冷やすと凝固点の 0 ℃ で氷(固体の水)になります。

固体から気体へ、または気体から固体への状態変化は昇華といいます。

昇華する物質の例には、ドライアイス(二酸化炭素でできた結晶)、ヨウ素ナフタレンなどがあります。

ヨウ素が昇華する性質は、混合物中から純物資としてヨウ素を取り出すときに利用されます。これは昇華法と呼ばれます。

ナフタレンは防虫剤として用いられています。固体の防虫剤が時間の経過とともに小さくなることで、ナフタレンが固体から気体に昇華していることがわかります。

温度と状態変化の関係

物質を冷却したり加熱したりすると、状態はどう変化するのでしょうか。水が加熱される状態を表現した図で確認します。

はじめの A 点では、水は固体の状態で、氷です。

A 点から B 点のあいだは氷を加熱していて、水は固体として存在します。

B 点で融点に達し、氷は融解しはじめます。

B 点から C 点のあいだは、氷が融解し続けています。融解を続けるあいだは温度は変わりません。氷と水(固体と液体)が存在します。

C 点ですべての氷が融解して、水(液体)だけになりました。

C 点から D 点のあいだは、水(液体)が加熱されています。液面から水蒸気(気体)が少しずつ蒸発しています。

D 点で沸点に到達し、水は沸騰を始めます。

D 点から E 点のあいだは、水(液体)が沸騰して水蒸気(気体)が生じています。液体の水が残っているあいだは温度は変わりません。

E 点ですべての水が気体となります。

E 点から F 点のあいだは、すべて水蒸気(気体)となっています。

物理変化と化学変化

物質は変わらずに状態などが変わることを物理変化、物質そのものが変化することを化学変化といいます。

物理変化

物理変化では、物質そのものは変化しません。水は氷や水蒸気に変化しますが、これは液体が固体や気体に変わっただけで、水そのものは変わりません。

水も氷も水蒸気も、物質をつくっている粒子(分子)は H2O と表されます。状態が変化しても物質は変化していません。

食塩を水に溶かして食塩水にする変化も、物理変化です。

食塩が水の中に溶け込んだだけで、食塩という物質は変化していません。水を蒸発させると、食塩の結晶が再び得られます。

化学変化

物質そのものが変わるとき、これを化学変化といいます。

例えば、水を電気分解すると水素と酸素が発生するという実験があります。この実験では、水の分子が水素の分子や酸素の分子に変化します。

水 H2O が水素 H2 や酸素 O2 になっているので、物質そのものが変化したことがわかります。

物質が燃焼することも化学変化です。

水素と酸素が燃焼して水になる変化は、物質が変化するので化学変化です。

問題演習

確認テスト1

次の状態変化を何といいますか。

  1. 冷凍庫から出したアイスクリームが融けた。
  2. 真冬に窓ガラスに水滴がついた。
  3. 保冷剤のドライアイスが小さくなった。
  4. 水を 253 K の状態に保ったら凍った。
  5. ストーブの上にやかんを放置したら水蒸気が出てきた。
  6. ヨウ素と砂粒が混ざっている。ヨウ素を分離するため、この混合物を加熱した。
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  1. 融解 固体が液体になった状態変化です。
  2. 凝縮 気体が液体になった状態変化です。
  3. 昇華 固体が気体になった状態変化です。
  4. 凝固 液体が固体になった状態変化です。
  5. 蒸発 液体が気体になった状態変化です。
  6. 昇華 固体が気体になった状態変化です。

確認テスト2

次の変化は物理変化と化学変化のどちらですか。

  1. 鉄くぎを湿った場所に置いていたら、表面が赤くさびた。
  2. クローゼットに防虫剤のナフタレンを置いたら、3か月後に小さくなった。
  3. 落ち葉を集めて焚火をしたら、煙が上がった。
  4. 水を電気分解した。
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  1. 化学変化 表面の赤さびは、鉄から変化した物質です。
  2. 物理変化 固体のナフタレンが気体となって小さくなりました。
  3. 化学変化 落ち葉と空気中の酸素が反応して、物質が変化しました。
  4. 化学変化 水が変化して、水素と酸素になりました。

実践問題1(2015本第1問問3)

図 1 は物質の三態の間の状態変化を示したものである。a ~ c に当てはまる用語の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 3

状態変化の用語です。

a :固体から気体になることを昇華といいます。逆方向の気体から固体になることも昇華といいます。

b :気体から液体になることを凝縮といいます。逆方向の液体から気体になることを蒸発といいます。

c :固体から液体になることを融解といいます。逆方向の液体から固体になることを凝固といいます。

実践問題2(2019追第1問問6)

次の現象に関する記述のうち、下線部が化学変化によるものはどれか。最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 氷砂糖を水のなかに入れておくと、氷砂糖が小さくなった

② やかんで水を加熱して沸騰させると、湯気が出た

③ ドライアイスを室温で放置すると、ドライアイスが小さくなった

④ 貝殻を希塩酸のなかに入れておくと、貝殻が小さくなった

(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問6 より引用)

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正解 4

物質そのものが変わる変化を、化学変化といいます。物質そのものは変化せず、状態などが変わる変化を、物理変化といいます。

固体が溶液の中に溶けるとき、固体が小さな粒子になって、溶液の粒子の中に混ざり込んでいきます。物質そのものは変わらないので、物理変化です。

固体・液体・気体の三態のあいだで物質が変わっているときは、物質そのものが変化したわけではないので、物理変化です。

1 × 砂糖が水に溶けただけで、物質が反応して変化したわけではありません。水が蒸発すると溶けていた砂糖が結晶化して固体として現れます。

2 × 液体の水が気体の水になっただけで、物質が変化したわけではありません。湯気は気体の水(水蒸気)が冷えて液体の水の微粒子になったものです。

3 × ドライアイスが固体から気体になって(昇華)、固体の量が減っただけなので物質に変化はありません。

4 〇 貝殻は主成分が炭酸カルシウム CaCO3 で、希塩酸 HCl と反応し、物質が変化します。

CaCO3 + 2 HCl → CaCl2 + H2O + CO2

炭酸カルシウムと塩酸は化学反応によって、塩化カルシウム CaCl2 と水 H2O と二酸化炭素 CO2 に変化します。

物質そのものが変化したので、④は化学変化です。

実践問題3(2017本第1問問5)

1 種類の分子のみからなる物質の大気圧下での三態に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 気体の状態より液体の状態のほうが分子間の平均距離は短い。

② 液体中の分子は熱運動によって相互の位置を変えている。

③ 大気圧が変わっても沸点は変化しない。

④ 固体を加熱すると、液体を経ないで直接気体に変化するものがある。

⑤ 液体の表面では常に蒸発が起こっている。

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問5 より引用)

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正解 3

1 〇 気体になっている分子(粒子)は、激しく熱運動をしています。そのため、気体分子は空間の中を飛び回っています。気体の分子同士は遠くに離れています。

液体の分子(粒子)は、気体のときほど激しく熱運動をしないので、分子は全体がまとまって一定の体積になっています。

液体の分子は、限られた体積の液体の中で動いています。したがって、気体より液体の方が分子同士の距離は近いです。

2 〇 液体中の分子は、熱運動で不規則に動いています。それぞれの分子が不規則に動くので、位置も変わります。

3 × この問題はまだ学習していない内容ですが、他の選択肢の正誤は判別できるはずです。

(液体が沸騰し気体になる温度である)沸点とはどういうことか、を知っている必要があります。

液体の蒸気圧が大気圧と等しくなったときに、沸騰が始まり液体は気体になります。液体の表面だけでなく、液体の内側からも分子が気体となる状態が沸騰です。

(ただし沸騰していない液体の状態でも、液体の表面から蒸発してゆっくりと気体になっています。)

液体の蒸気圧と大気圧が等しくなる温度が沸点なので、大気圧が変わると沸点の温度も変わります。

例えば、水は一般に 100 ℃が沸点ですが、高い山の上など大気圧の低い場所では 100 ℃より沸点は低くなります。

4 〇 固体から気体に直接状態が変化することを、昇華といいます。二酸化炭素(ドライアイス)やヨウ素 I2 などは、固体から気体に昇華します。

5 〇 沸騰していなくても、液体の表面から液体の分子は蒸発して気体になっています。グラスに水を入れておいても、長時間放置すれば蒸発して水がなくなる例からわかるでしょう。

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