物質をつくっている最も小さく基本となる粒子を原子といいます。
原子は原子核と電子からできています。
原子核は、正の電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子からなります。
電子は負の電荷を持ちます。
原子がもつ陽子と電子の数は等しいので、原子は電荷を持ちません。
原子がもつ陽子の数を、その原子の原子番号といいます。
原子がもつ陽子と中性子の数の和を、質量数といいます。
原子番号が同じで、質量数が異なる(中性子の数が異なる)原子同士を互いに同位体といいます。
放射線を出して原子が崩壊し他の原子に変わる同位体を、放射性同位体といいます。
放射性同位体が崩壊して元の半分の量になる時間を、半減期といいます。
もくじ
原子の構造
原子
物質を細かく分割していくと、それ以上分けられない粒子があるとイギリスの科学者ドルトンは考えました。この粒子をドルトンは原子と呼びました。
物質をつくっている最も小さく基本となる粒子を、原子といいます。
陽子・中性子・電子
原子は原子核と電子からできています。
原子核は、正の電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子からなります。電子は原子核の周囲の空間にあって、負の電荷を持ちます。
このとき陽子のプラスの電荷と、電子のマイナスの電荷の大きさは等しいです。
そして原子がもつ陽子と電子の数は等しいので、原子全体では電荷を持ちません。(原子は電気的に中性です。)
原子は下の図のように表されます。
上の原子の図は、陽子の数が 2 個、中性子の数が 2 個、電子の数が 2 個のヘリウム原子です。
原子の中央に原子核があり、陽子と中性子が 2 個ずつ集まっています。周囲の空間に電子が 2 個あります。
原子番号・質量数
原子は陽子を持ちますが、その個数は原子の種類によって異なります。それぞれの元素の原子は、種類ごとに違う数の陽子を持っています。
そこで原子がもつ陽子の数を、その原子の原子番号と呼びます。元素が決まればその元素の原子がもつ陽子数も決まり、原子番号が定まります。
原子は陽子と中性子、電子からなりますが、それぞれの質量は異なります。陽子と中性子の質量はほぼ一致し、電子の質量はこの 2 つより極めて小さくなります。
陽子 | 中性子 | 電子 | |
質量 ( g ) | 1.673 × 10-24 | 1.675 × 10-24 | 9.109 × 10-28 |
質量の比 | 1 | 1 | \(\frac{1}{1840}\) |
電子の質量が陽子・中性子の質量の約\(\frac{1}{1840}\)と非常に小さいので、原子全体の質量として陽子と中性子の和を考えます。
陽子の数と中性子の数の和を、その原子の質量数といいます。この質量数を用いると、他の種類の原子と質量を比較できます。
質量数 = 陽子の数 + 中性子の数
ここで、元素記号に原子番号と質量数を加えて表記することがあります。上の例は、陽子の数が 2 個、中性子の数が 2 個、電子の数が 2 個のヘリウム原子でした。
これを表記すると
となります。
ヘリウムの元素記号 He の左下に原子番号の 2 を、左上に質量数の 4 をつけます。一般に、元素記号の左下に原子番号を、左上に質量数を表示します。
同位体
同じ元素の原子なら、すべて同じ原子番号(陽子の数は同じ)です。しかし、原子核に存在する中性子の数が異なる場合があります。
このように同じ元素の原子で、中性子の数が異なる原子のことを同位体といいます。同位体をアイソトープということもあります。
陽子の数は同じで中性子の数が異なる原子なので、同位体は互いに質量数が異なると言い換えることができます。
同位体は多くの元素にあります。例として、原子番号 1 の水素をあげます。
左側の原子が最もよくある形の水素原子で、元素記号 H の左下に原子番号 1 が、左上に質量数 1 が表示されています。つまりこの水素原子は、陽子の数が 1 個で中性子の数は 0 個です。
真ん中の水素原子は重水素といいます。原子番号は 1 で(陽子の数は 1 個)、質量数は 2 です(中性子の数は 1 個)。
右側の水素原子は三重水素といいます。原子番号は 1 で(陽子の数は 1 個)、質量数は 3 です(中性子の数は 2 個)。
なお、同位体は化学的性質はほとんど変わりません。ある元素の同位体が複数あっても、どの同位体も化学的な反応はほぼ変わりません。
放射性同位体
同位体には原子核から放射線を出すものがあり、これを放射性同位体といいます。放射性同位体はラジオアイソトープともいいます。
放射線を出す同位体は原子核が不安定なので、放射線を出しながら他の原子に変化します。これを原子核の崩壊(壊変)といいます。
放射性同位体の例として、炭素原子があります。炭素原子は原子番号 6 の元素です。その多くが質量数 12 で存在しています(中性子の数が 6 )。
このほか炭素原子には、質量数 13 と 14 の同位体があります。質量数 14 の炭素原子は、放射線を出して崩壊し、窒素原子に変化します。窒素原子は原子番号 7 の元素です。
まとめると、原子番号 6 で質量数 14 の炭素原子が、原子番号 7 で質量数 14 の窒素原子に変化します。このとき原子核の中性子 1 個が、放射線を出して陽子 1 個と電子 1 個に変化します。
放射性同位体は崩壊して他の原子になりますが、はじめにあった量の半分になるまでの期間を半減期といいます。
半減期は放射性同位体ごとに決まっています。例えば、14C の半減期は 5730 年です。
問題演習
確認テスト1
次の空欄に当てはまる語句を考えましょう。
物質をつくっている最も小さく分割できない粒子を( A )という。( A )は( B )と電子から構成されている。( B )は正の電気を帯びた( C )と、電気的に中性な( D )からできている。
( C )と( D )の質量はほぼ等しいが、電子の質量はこの 2 つより極めて小さい。( A )の質量は( C )と( D )の質量の和にほぼ等しくなるので、この( C )と( D )の数の和を( E )という。
( A )に存在する( C )の数と電子の数は( F 等しい・等しくない )。そのため、( A )は電気的にプラスでもマイナスでもなく中性である。
さまざまな種類の元素の( A )では、それぞれ( C )の数が異なる。そこで、( C )の数をその原子の( G )という。
上はヘリウム原子であるが、2 が( G )であり、4 が( E )である。
多くの元素には( H )が存在する。( H )は( G )が同じで( E )が互いに異なる。
( H )には放射線を出して他の( A )になるものがある。このような( H )は( B )が不安定で、時間とともに他の( A )に変わるが、はじめに存在した量の半分になるまでの時間を( I )という。
確認テスト2
- 次の原子の陽子・電子・中性子の数を考えましょう。
- 質量数が同じ原子の組を選びましょう。
- 互いに同位体である原子の組を選びましょう。
- イの原子は放射線を出してウの原子に変わります。このような同位体を何といいますか。
実践問題1(2020追第1問問2)
同位体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 互いに同位体である原子は、陽子の数が異なる。
② 互いに同位体である原子は、中性子の数が異なる。
③ 互いに同位体である原子は、化学的な性質がほぼ同じである。
④ 放射線の放出により、放射性同位体の量が元の半分になるまでの時間を半減期という。
(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問2 より引用)