電子配置と価電子

ポイント

原子核の周りには電子が存在できる空間の層があり、これを電子殻といいます。

電子殻は原子核に近い内側から、K 殻、L 殻、M 殻、N 殻‥‥といいます。

それぞれの電子殻には、収まる電子の数の上限が決まっています。K 殻は 2 個、L 殻は 8 個、M 殻は 18 個、N 殻は 32 個です。

原子核から n 番目の電子殻には、最大 2n2 個の電子が入ります。

どの電子殻に何個の電子が収容されているかを、原子の電子配置といいます。電子は内側の電子殻から収容されます。

最も外側の電子殻のことを最外殻といい、最外殻にあって反応などに関与する電子を価電子といいます。

価電子は、最外殻にある電子の数と一致します。ただし希ガスは価電子を 0 とします。

電子配置

原子の構造を簡単に考えると、原子の中心に原子核があって、その周りを電子が動いています。

このとき、電子が存在できる空間はいくつかの層に分かれています。この層のことを電子殻といいます。

それぞれの電子殻に電子が何個入っているのかを、その原子の電子配置といいます。

電子殻

原子核の周りには、電子が存在できるいくつかの空間の層があります。この層のことを電子殻といいます。

電子殻は原子核から近い順に、K 殻、L 殻、M 殻、N 殻‥‥といいます。

またそれぞれの電子殻には、入ることができる電子の数に上限があります。入れられる電子の最大数は K 殻で 2 個、L 殻で 8 個、M 殻で 18 個、N 殻で 32 個と決まっています。

電子殻に入る電子の最大数には、規則性があります。原子核から n 番目の電子殻に収容できる電子数は、2n2 個と表すことができます。

K 殻は原子核から 1 番目の電子殻なので、2 × 12 = 2 となり、最大で 2 個の電子が入ります。同様に L 殻は 2 番目の電子殻なので、2 × 22 = 8 のように最大 8 個の電子が入ります。

電子配置のルール

原子内の電子は、一般に内側の電子殻から順に入っていきます。これは原子核に近い電子殻に入ると、エネルギーが低い状態となって安定になるためです。

例えば、原子番号 6 の炭素原子 C は電子が 6 個あるので、まず K 殻に 2 個の電子が入り、そのあと L 殻に 4 個の電子が入ります。

原子番号 11 のナトリウム原子 Na では電子が 11 個あるので、まず K 殻に 2 個の電子が入り、そのあと L 殻に 8 個の電子が入り、M 殻に残りの 1 個の電子が入ります。

原子内の電子殻に電子が収容された状態を電子配置といいますが、各原子の電子配置はルールに従って決まります。

また、原子の最も外側にある電子殻のことを最外殻といい、最外殻に入っている電子のことを最外殻電子といいます。

価電子

この最も外側の電子殻にあり、反応や結合に関与する電子のことを、特に価電子と呼んでいます。

原子の最も外側にある電子は、他の原子と結合したり反応するときに大きな役割をするので、価電子(最外殻電子)は重要です。

価電子は、0 個から 7 個のあいだの数をとります。一般に、最外殻の電子数と価電子の数は一致します。

例えば、ナトリウム原子は一番外側の電子殻( M 殻)に 1 個の電子をもつので、価電子は 1 個です。

炭素原子は一番外側の電子殻( L 殻)に 4 個の電子をもつので、炭素原子の価電子の数は 4 個です。

ただし、ヘリウム He やネオン Ne 、アルゴン Ar など希ガスといわれる元素の原子は、価電子を 0 とします。希ガスの原子はとても安定なので、他の原子と結合しにくいことを考慮して価電子は 0 です。

間違いやすいのは、希ガスの原子の最外殻の電子の数は 0 ではないということです。

例えば、ヘリウム He は原子番号が 2 なので電子が 2 個あり、K 殻に 2 個の電子が入っています。He は希ガスなので価電子の数は 0 個ですが、最外殻の電子の数は 2 個です。

ネオン Ne は原子番号が 10 なので電子が 10 個あり、K 殻に 2 個、L 殻に 8 個の電子が入っています。Ne は希ガスなので価電子の数は 0 個ですが、最外殻電子数は 8 個です。

まとめると、原子の最外殻電子数と価電子の数は(希ガス以外では)一致します。

希ガスの価電子の数は常に 0 個です。希ガスの原子のうち、ヘリウム He の最外殻電子数は 2 個、その他の希ガスの原子であるネオン Ne 、アルゴン Ar 、クリプトン Kr などの最外殻電子数は 8 個です。

なお、ヘリウムやネオンのように電子殻が電子で満たされているとき、この状態を閉殻といいます。

問題演習

確認テスト1

( )に入る適切な語句を考えてみましょう。

原子内の電子は、原子核の周りにある( A )という層に収容されます。( A )は何層にも分かれており、原子核に近い順に( B )、L 殻、( C )、N 殻‥‥と呼ばれます。

それぞれの( A )に入る電子の最大数は決まっていて、( B )は( D )個です。また、L 殻に入る電子数は最大で 8 個、( C )に入る電子数は最大で( E )個です。

このように、( A )に入る電子の最大数には規則性があり、内側からn番目の( A )には( F )個の電子が入ります。

どの( A )に何個の電子が収容されているかを、原子の( G )といいます。

原子が他の原子と結合するとき、最も外側の電子殻にある電子が大きな役割を果たします。そこで、最外殻の電子を特に( H )といいます。一般に( H )の数は最外殻の電子数と同じですが、希ガスの原子では( H )の数は( I )個となります。

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A:電子殻   B:K 殻   C:M 殻   D:2   E:18

F:2n2   G:電子配置   H:価電子   I:0

確認テスト2

原子内の電子がどのように配置されているか、次の表の空欄を埋めましょう。

原子原子番号K殻L殻M殻N殻
水素 H11
ヘリウム He2
ホウ素 B53
窒素 N7
フッ素 F9
マグネシウム Mg128
ケイ素 Si142
硫黄 S16
アルゴン Ar1828
カリウム K19
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原子原子番号K殻L殻M殻N殻
水素 H11
ヘリウム He22
ホウ素 B523
窒素 N725
フッ素 F927
マグネシウム Mg12282
ケイ素 Si14284
硫黄 S16286
アルゴン Ar18288
カリウム K192881

原子番号 18 のアルゴン Ar までは、内側の電子殻から順に電子が入っていきます。

カリウム K 原子では違いがあります。カリウムの原子番号は 19 で、原子内に電子は 19 個あります。

K 殻と L 殻には閉殻となるまで電子が入ります。次の M 殻は 8 個の電子が入ったあと、まだ M 殻に 10 個の電子が入りますが、先に N 殻へ電子が入ります。

これは M 殻に電子が 8 個入ったあと N 殻に電子が続けて入った方が、原子が安定な状態になるためです。

原子番号 20 のカルシウム Ca も同様に、M 殻に 8 個の電子が入ったら、次に N 殻に 2 個の電子が入ります。

(したがってカルシウムの電子配置は、K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 8 個、N 殻に 2 個の電子となります。)

確認テスト3

次の原子の最外殻電子数と価電子の数を答えましょう。

  1. He
  2. N
  3. Mg
  4. S
  5. Ar
  6. K
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  1. 最外殻電子:2 個   価電子:0 個
  2. 最外殻電子:5 個   価電子:5 個
  3. 最外殻電子:2 個   価電子:2 個
  4. 最外殻電子:6 個   価電子:6 個
  5. 最外殻電子:8 個   価電子:0 個
  6. 最外殻電子:1 個   価電子:1 個

実践問題1(2019本第1問問1)

次のように表される原子 A に関する記述として誤りを含むものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

① 最外殻には、7 個の電子が存在する。

② 原子核には、9 個の陽子が含まれる。

③ 原子核には、9 個の中性子が含まれる。

④ 質量数は、19 である。

(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問1 より引用)

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正解 3

この問題は、元素が A である原子 A の例です。元素記号 A の左上と左下に数字が書かれています。

左下の数字は原子番号で、左上の数字は質量数です。

原子番号は、その原子がもつ陽子の数と一致します。また質量数は、その原子の陽子の数と中性子の数の和です。

したがって原子 A は、原子番号 9(つまり陽子数が 9 個)の原子です。

原子がもつ陽子の数と電子の数は等しいので、原子 A がもつ電子の数も 9 個です。

質量数は 19 なので、中性子の数は

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

ですから

19 = 9 + 中性子の数

となり、中性子の数は 10 個です。

1 〇 電子が 9 個ある原子では、まず一番内側の殻( K 殻)に 2 個の電子が入ります。そのあと、7 個の電子がその外側の L 殻に入ります。したがって、最外殻の電子数は 7 個です。

2 〇 原子番号が 9 なので、陽子の数は 9 個です。

3 × 質量数は陽子の数と中性子の数の和です。中性子の数は正しくは 10 個です。

4 〇 元素記号の左上に書かれた数字は、質量数です。

実践問題2(2018本第1問問2)

ホウ素原子の電子配置の模式図として最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問2 より引用)

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正解 3

ホウ素原子は原子番号が 5 の原子です。

原子番号が 5 なので、陽子の数が 5 個となり、原子核にある正の電荷は 5+ になります。

また原子がもつ陽子と電子の数は等しいので、ホウ素原子の電子は 5 個になります。

電子が 5 個あるので、内側の電子殻から電子は収容されます。

K 殻に入る電子の最大数は 2 個なので、電子は一番内側にある K 殻に 2 個入ります。そして、その外側の L 殻に 3 個入ります。

以上より、最も適当な選択肢は③です。

実践問題3(2018追第1問問3)

原子番号と価電子の数の関係を表すグラフとして正しいものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問3 より引用)

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正解 4

原子番号が増えていくとき、価電子はどう変化するのかという問題です。

まずはじめに、原子番号とその原子がもつ陽子の数は等しいことを思い出します。また、原子がもつ陽子の数と電子の数は等しいことを考えます。

つまり原子がもつ電子が 1 個ずつ増えていくと、価電子はどうなるのかを調べます。

価電子は、最外殻の電子数と一致します。ただし、希ガス元素のときは価電子は 0 です。

そこで、原子番号が増えて原子のもつ電子数が増加していくと、その電子配置はどうなるのか(最外殻の電子数はいくつか)を考えれば、この問題を解けます。

グラフは原子番号 20 までなので、原子番号 1 の水素原子から、原子番号 20 のカルシウム原子までの電子配置を考えます。

そしてそれぞれの価電子を決めれば、正しいグラフを選ぶことができます。

以下は原子番号 1 の水素原子から原子番号 20 のカルシウム原子までの電子配置の表です。

原子原子番号K殻L殻M殻N殻価電子
水素 H111
ヘリウム He220
リチウム Li3211
ベリリウム Be4222
ホウ素 B5233
炭素 C6244
窒素 N7255
酸素 O8266
フッ素 F9277
ネオン Ne10280
ナトリウム Na112811
マグネシウム Mg122822
アルミニウム Al132833
ケイ素 Si142844
リン P152855
硫黄 S162866
塩素 Cl172877
アルゴン Ar182880
カリウム K1928811
カルシウム Ca2028822

原子番号 1 の H は K 殻に電子が 1 個入り、最外殻電子数が 1 なので価電子は 1 となります。

原子番号 2 の He は K 殻に電子が 2 個入り、K 殻が電子で埋まり閉殻となります。He は希ガスと呼ばれる元素なので、価電子は 0 となります。

原子番号 3 の Li から原子番号 10 の Ne までは、電子は L 殻に入ります。

原子番号 3 の Li は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 1 個入ります。最外殻電子は L 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 4 の Be は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 2 個入ります。最外殻電子は L 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

原子番号 9 の F までは、同じように価電子が 1 ずつ増えていきます。

原子番号 10 の Ne は、K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個入ります。最外殻電子は L 殻の 8 個で、L 殻はすべて埋まり閉殻となります。

Ne は希ガスと呼ばれる元素で、L 殻に電子が 8 個入り閉殻なので、価電子は 0 です。

原子番号 11 の Na から原子番号 18 の Ar までは、電子は M 殻に入ります。

原子番号 11 の Na は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 1 個入ります。最外殻電子は M 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 12 の Mg は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 2 個入ります。最外殻電子は M 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

原子番号 17 の Cl までは、同じように価電子が 1 ずつ増えていきます。

原子番号 18 の Ar は、K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個入ります。最外殻電子は M 殻の 8 個です。

最外殻の電子数が 8 個になると、原子は安定します。Ar は希ガスと呼ばれる元素で、M 殻に電子が 8 個入っているので、価電子は 0 です。

原子番号 19 の K から原子番号 20 の Ca までは、電子は N 殻に入ります。

原子番号 19 の K は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個、さらに次の電子は N 殻に 1 個入ります。最外殻電子は N 殻の 1 個なので、価電子は 1 となります。

同様に原子番号 20 の Ca は K 殻に電子が 2 個入り、次の電子は L 殻に 8 個、さらに次の電子は M 殻に 8 個、さらに次の電子は N 殻に 2 個入ります。最外殻電子は N 殻の 2 個なので、価電子は 2 となります。

以上の結果をまとめると、正しいグラフは④となります。