イオン(2)

ポイント

単原子でできた陽イオンは、元素名をそのままつけてイオンの名称にします。

2つ以上の価数をもつ元素では、ローマ数字を用いて表します。

単原子で陰イオンとなるものは、元素名の語尾を~化物と変えて名前をつけます。

酸素元素をもつ酸が、電離して陰イオンとなったとき、~酸イオンといいます。

イオンが生成するとき、電荷の合計はその変化の前後で一定です。

イオンの名称

イオンの名前のつけ方を覚えましょう。

陽イオン

単原子でできた陽イオンは、元素名をそのままつけてイオンの名称にします。

水素イオン H+ 、ナトリウムイオン Na+ 、カルシウムイオン Ca2+ 、アルミニウムイオン Al3+ などです。

元素のなかには、2 つ以上のイオン価数をもつものがあります。これらは括弧内にローマ数字を入れて表します

例えば鉄 Fe は、2 価の陽イオン Fe2+ と 3 価の陽イオン Fe3+ があります。これは Fe2+ を鉄(Ⅱ)イオン、Fe3+ を鉄(Ⅲ)イオンと書きます。

また、銅(Ⅰ)イオンは 1 価の陽イオンで Cu+ と書け、銅(Ⅱ)イオンは 2 価の陽イオンで Cu2+ と書けます。

このほか 2 価の陽イオンでは、スズ(Ⅱ)イオンは Sn2+ 、マンガン(Ⅱ)イオンは Mn2+ 、ニッケル(Ⅱ)イオンは Ni2+ のように書けます。

3価の陽イオンでは、クロム(Ⅲ)イオンは Cr3+ 、コバルト(Ⅲ)イオンは Co3+ のように書けます。

陰イオン

単原子で陰イオンとなるものは、元素名の語尾を~化物と変えて名前をつけます。

塩素原子 Cl が陰イオン Cl となると、 これを塩化物イオンと呼びます。

その他、臭素原子 Br が陰イオン Br となると臭化物イオンといい、酸素原子 O が陰イオン O2- となると酸化物イオンといいます。

また OH は単原子イオンではないですが、水酸化物イオンと呼ばれます。

酸素元素をもつ酸が、電離して陰イオンとなったとき、~酸イオンといいます。

例えば硝酸は HNO3 で、これが電離すると NO3 という陰イオンが生じます。この陰イオン NO3 を硝酸イオンと呼びます。

他にも、酢酸イオン CH3COO 、硫酸イオン SO42- 、炭酸イオン CO32- 、リン酸イオン PO43- などがあります。

イオンが生成する式をつくる

原子が電子を受け取るか放出すると、イオンになります。この変化を式で表してみましょう。

このとき電子は e のように、アルファベット小文字の e にマイナス 1 の電荷をつけて表記します。

ナトリウム原子 Na が 1 個の電子 e を放出してナトリウムイオン Na+ になる変化は、

と表されます。

このとき、イオンが生成する変化の前後で、電荷の合計は一定のままです。

はじめの左辺にあるナトリウム原子は、電気的に中性です。

反応後に右辺にあるように、ナトリウムイオン Na+ と電子 e に分かれても、電子 1 個分のプラス( Na+ )と電子 1 個分のマイナス( e )なので、合計すると電気的に中性です。

したがって変化の前も後も、合計の電荷は 0 で一定でした。

逆にナトリウムイオン Na+ が1個の電子 e を受け取ってナトリウム原子 Na になる変化は、

となります。

こちらも、変化の前後で電荷の合計は一定です。

原子だけでなく電解質でも、イオンとなる変化は同様に式で書けます。

塩化ナトリウム NaCl は水に溶かすと、ナトリウムイオン Na+ と塩化物イオン Cl に電離するので、

と書けます。

電荷について確認すると、イオンが生成しても電荷の合計に変化はありません。

式の左側では、NaCl は電気的に中性です。

式の右側では、Na+ は 1 個分の電子がプラスであり、Cl は 1 個分の電子がマイナスです。したがって合計すると、電気的に中性です。

問題演習

確認テスト1

さまざまなイオンの名称を答えましょう。

H+
Na+
K+
NH4+
Cu+
Mg2+
Ca2+
Fe2+
Cu2+
Ba2+
Zn2+
Al3+
Fe3+
F
Cl
Br
I
OH
NO3
HCO3
CH3COO
O2-
S2-
CO32-
SO42-
(COO)22-
PO43-
正解を見る
H+水素イオン
Na+ナトリウムイオン
K+カリウムイオン
NH4+アンモニウムイオン
Cu+銅(Ⅰ)イオン
Mg2+マグネシウムイオン
Ca2+カルシウムイオン
Fe2+鉄(Ⅱ)イオン
Cu2+銅(Ⅱ)イオン
Ba2+バリウムイオン
Zn2+亜鉛イオン
Al3+アルミニウムイオン
Fe3+鉄(Ⅲ)イオン
Fフッ化物イオン
Cl塩化物イオン
Br臭化物イオン
Iヨウ化物イオン
OH水酸化物イオン
NO3硝酸イオン
HCO3炭酸水素イオン
CH3COO酢酸イオン
O2-酸化物イオン
S2-硫化物イオン
CO32-炭酸イオン
SO42-硫酸イオン
(COO)22-シュウ酸イオン
PO43-リン酸イオン

確認テスト2

以下の物質がイオンになるときの式を考えましょう。

  1. H
  2. Na
  3. Ca
  4. KCl
  5. HNO3
  6. CH3COOH
  7. Na2SO4
正解を見る

1. H → H+ + e

2. Na → Na+ + e

3. Ca → Ca2+ + 2 e

カルシウム原子はイオンになるときに 2 個の電子を放出し、2 価の陽イオンとなります。2 価の陽イオンが 1 個と、1 価の陰イオンに相当する電子が 2 個なので、電荷の合計は一定です。

左辺の電荷 = 0(中性)

右辺の電荷 =  (+2) × 1 + (-1) × 2 = 0

4. KCl → K+ + Cl

5. HNO3 → H+ + NO3

6. CH3COOH → CH3COO + H+

7. Na2SO4 → 2 Na+ + SO42-

左辺の硫酸ナトリウム Na2SO4 は電気的に中性です。これを水に溶かすと、電離して 2 個のナトリウムイオンと 1 個の硫酸イオンになります。

ナトリウムイオンは 1 価の陽イオンであり、硫酸イオンは 2 価の陰イオンです。

右辺の電荷  = (+1) × 2 + (-2) × 1 = 0

1 価の陽イオンが 2 個と 2 価の陰イオンが 1 個なので、電離しても電荷の合計は一定です。

実践問題1(2015本第1問問2)

原子やイオンの電子配置に関連する記述として誤りを含むものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① ナトリウム原子の K 殻には、2 個の電子が入っている。

② マグネシウム原子の M 殻には、2 個の電子が入っている。

③ リチウムイオン( Li+ )とヘリウム原子の電子配置は同じである。

④ カルシウムイオン( Ca2+ )とアルゴン原子の電子配置は同じである。

⑤ フッ素原子は、6 個の価電子をもつ。

⑥ ケイ素原子は、4 個の価電子をもつ。

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問2 より引用)

正解を見る

正解 5

この問題を解くには、原子番号 20 のカルシウムまでの周期表の配置を覚えている必要があります。

また、原子がイオンになったときの電子の数の変化も、理解しておきましょう。

1 〇 ナトリウム Na は原子番号 11 の原子で、K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 1 個の電子を持っています。

2 〇 マグネシウム Mg は原子番号 12 の原子で、K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 2 個の電子を持っています。

3 〇 リチウム Li 原子は原子番号 3 の原子で、リチウムイオン Li+ になるとき 1 個の電子を失います。

リチウム原子からイオンが生成する式は次の通りです。

Li → Li+ + e

リチウム原子では 3 個あった電子が 1 個失われ、リチウムイオンは 2 個の電子を持っています。

またヘリウム He 原子は原子番号 2 の原子なので、2 個の電子を持っています。

このように、リチウムイオンとヘリウム原子はともに 2 つの電子を持ち、同じ電子配置です。

4 〇 カルシウム Ca 原子は原子番号 20 の原子で、カルシウムイオン Ca2+ になるとき 2 個の電子を失います。

カルシウム原子からイオンが生成する式は次の通りです。

Ca → Ca2+ + 2 e

カルシウム原子では 20 個あった電子が 2 個失われ、カルシウムイオンは 18 個の電子を持っています。

またアルゴン原子は原子番号 18 の原子なので、18 個の電子を持っています。

このように、カルシウムイオンとアルゴン原子はともに 18 個の電子を持ち、同じ電子配置です。

5 × フッ素は原子番号 9 の原子であり、K 殻に 2 個、L 殻に 7 個の電子を持っています。最外殻の電子数は 7 個なので、価電子は 7 個です。

なお、フッ素はハロゲン( 17 族元素)であり、フッ化物イオンとして 1 価の陰イオンになりやすい原子です。

6 〇 ケイ素は原子番号 14 の原子で、K 殻に 2 個、L 殻に 8 個、M 殻に 4 個という電子配置です。14 族元素であり最外殻の電子数は 4 個なので、価電子は 4 個です。