物質量

ポイント

6.02 × 1023 という数値をアボガドロ数といいます。

6.02 × 1023 個をひとまとまりとした粒子の集団のことを、1 mol(モル)といいます。

mol を単位として示された量を、物質量といいます。

物質量 1 mol あたり粒子が何個あるかを表す定数が、アボガドロ定数 NA です。

NA = 6.02214076 × 1023 [ mol-1 ] です。

物質 1 mol あたりの質量をモル質量といいます。モル質量の単位は g/mol です。

物質量

物質を構成している原子や分子、イオンといった基本の粒子は、非常に小さいです。そこで、これらを考えるときに、あるまとまった個数で扱うと簡単になります。

アボガドロ数と mol(モル)

これからは、原子や分子などの個数を、6.02 × 1023 個ごとにまとめて扱います。

この 6.02 × 1023 という数値をアボガドロ数といいます。(アボガドロは 19 世紀の科学者です。)

6.02 × 1023 個をひとまとまりとした粒子の集団のことを、1 mol(モル)といいます。

例えば、水素原子が 6.02 × 1023 個あるとき、水素原子が 1 mol あるといいます。また水分子が 6.02 × 1023 個あるとき、水が 1 mol あるといいます。

このように、mol を単位として示された量を、物質量といいます。

アボガドロ定数

もともとアボガドロ数は、

「質量数 12 の炭素原子 12C が 12 g となるときの原子の個数」

として定義されていました。

つまり、12C の炭素原子が 6.02 × 1023 個あると、12 g となります。

現在の定義は炭素原子の質量とは切り離されたので、アボガドロ数は単純に 6.02214076 × 1023 と決まっています。

また、物質量 1 mol あたり粒子が何個あるかを表す定数が、アボガドロ定数 NA です。

NA = 6.02214076 × 1023 [ mol-1 ] です。

アボガドロ定数の単位は、1 mol あたり何個かを表すので、mol-1 です。[ / mol ](パーモル)のように分母に mol をおいてもよいでしょう。

アボガドロ定数は、問題を解くときに、

「ただしアボガドロ定数を 6.02 × 1023 mol-1 として計算せよ」

とか

「ただしアボガドロ定数は 6.0 × 1023 /mol とする」

のように書かれています。

物質量の計算

実際に物質量の計算を練習してみましょう。

「水分子が 9.03 × 1023 個あるとき、水の物質量はいくらか。ただしアボガドロ定数を 6.02 × 1023 /mol とする。」

$$水の物質量 [ mol ] = \frac{9.03 × 10^{23}}{6.02 × 10^{23} [/mol]}$$

これより水の物質量は、1.50 mol と求められます。

「水素分子が 3.0 mol あるとき、水素分子は何個あるか。ただしアボガドロ定数を 6.0 × 1023 /mol とする。」

$$水素分子の個数 = 6.0 × 10^{23} [/mol] × 3.0 [mol]$$

これより水素分子の数は、1.8 × 1024 ( = 18 × 1023 )個と計算できます。

モル質量

物質 1 mol あたりの質量をモル質量といいます。モル質量の単位は g/mol です。

アボガドロ数の粒子が集まったとき、その物質の質量が、モル質量の値にグラムをつけたものに等しくなります。

例えば、質量数 12 の 炭素原子 12C のモル質量は 12 g/mol なので、この 12C が 1 mol あったときその質量は 12 g となります。

ところで、質量数 12 の炭素原子 12C 1 個の質量を 12 と定めて、他の原子の相対質量や原子量を決めていました。また、原子量をもとに分子量を求めることができました。

12C のモル質量が 12 g/mol となるので、他の原子や分子についても、原子量や分子量からモル質量を考えることができます。

相対質量が 12 の 12C 原子が 1 mol まとまったとき、質量は 12 g で、モル質量は 12 g/mol でした。

他の原子や分子も、12C 原子の相対質量との比であらわされているので、同じように考えることができます。

原子量が 1.0 の水素原子 H が 1 mol あったとき、モル質量は 1.0 g/mol であり、この水素原子の質量は 1.0 g です。

原子量が 16 の酸素原子 O が 1 mol あったとき、モル質量は 16 g/mol であり、この酸素原子の質量は 16 g です。

分子量が 18 の水分子 H2O が 1 mol あったとき、モル質量は 18 g/mol であり、この水の質量は 18 g です。

分子量が 44 の二酸化炭素分子 CO2 が 1 mol あったとき、モル質量は 44 g/mol であり、この二酸化炭素の質量は 44 g です。

現在、アボガドロ数の定義は炭素原子の質量とは無関係になりましたが、以前と数値はほぼ変わっていないので、実質的にはこの定義の変更は無視できます。

ですから、物質のモル質量は、その物質の原子量や分子量、式量に単位の [ g/mol ] をつけたもの、と覚えておいてよいでしょう。

モル質量の計算

実際にモル質量の計算を練習してみましょう。

「水が 2.0 mol あるとき、水の質量はいくらか。ただし原子量は H = 1 、O = 16 とする。」

水 H2O の分子量は、水素原子 2 個と酸素原子 1 個の原子量の和なので

1 × 2 + 16 × 1 = 18

となります。したがって水のモル質量は 18 g/mol です。

水 2.0 mol の質量は、モル質量 × 物質量ですから

18 [g/mol] × 2.0 [mol] = 36 [g]

水の質量は 36 g となります。

「メタン CH4 が 32 g あるとき、このメタンの物質量はいくらか。ただし原子量は H = 1 、C = 12 とする。」

メタンの分子量は、炭素原子 1 個と水素原子 4 個の原子量の総和なので、

12 × 1 + 1 × 4 = 16

となります。したがってメタンのモル質量は 16 g/mol です。

メタンは 1 mol あたり 16 g であり、ここではメタンが 32 g あるので、メタンの物質量は

$$\frac{32 [g]}{16 [g/mol]} = 2 [mol]$$

となり、2 mol です。

問題演習

確認テスト1

  1. 水素原子が 6.02 × 1023 個あるとき、水素原子は A mol です。
  2. 水分子が 9.03 × 1023 個あるとき、水は B mol です。
  3. 水素分子が 3.00 mol あるとき、水素分子は C 個あります。

A、B、C に入る、小数点以下第 2 位までの適切な数値を計算しましょう。ただし、アボガドロ定数を 6.02 × 1023 /mol とします。

正解を見る

A:1.00   B:1.50   C:18.06 × 1023 ( 1.81 × 1024

確認テスト2

  1. 水分子 H2O の分子量は A なので、モル質量は B g/mol となります。水が 2.0 mol あるとき、水の質量は C g です。ただし原子量は H = 1 、O = 16 とします。
  2. 分子量が D の二酸化炭素分子 CO2 のモル質量は E g/mol です。ただし原子量は C = 12、O = 16 とします。
  3. メタン CH4 が 32 g あるとき、このメタンの物質量は F モルです。ただし原子量は H = 1 、C = 12 とします。

A ~ F までに入る適切な数値を計算しましょう。

正解を見る

A:18   B:18   C:36   D:44   E:44   F:2

実践問題1(2018追第2問問2)

純粋なエタノール 9.2 g 中に含まれる分子数はいくつか。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。ただし、アボガドロ定数を 6.0 × 1023 /mol とする。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    C 12    O 16

① 1.2 × 1023    ② 1.7 × 1023    ③ 2.1 × 1024

④ 3.0 × 1024    ⑤ 1.8 × 1026    ⑥ 2.5 × 1026

(①~⑥の数値の単位は個)

(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)

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正解 1

まずはじめに、エタノールの分子量を求めます。

エタノール C2H5OH の分子量は、分子を構成する原子の原子量の総和として計算できるので、

12 × 2 + 1.0 × 6 + 16 = 46 です。

次に、9.2 g のエタノールは何モルなのかを計算します。

エタノールの分子量が 46 なので、エタノールのモル質量は 46 g/mol です。

9.2 g のエタノールの物質量は

\(\frac{9.2[g]}{46[g/mol]}\) = 0.20[mol]

エタノールが 0.20 mol あることがわかりました。またアボガドロ定数の定義より、6.0 × 1023 個の粒子が集まると、1 mol となります。

分子数を求めるのでアボガドロ定数をかけると

0.20[mol] × 6.0 × 1023[/mol]

= 1.2 × 1023[個]

エタノール分子は 1.2 × 1023 個あるとわかりました。

実践問題2(2016本第2問問1)

1.0 カラットのダイヤモンドに含まれる炭素原子の物質量として最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。ただし、カラットは質量の単位で、1.0 カラットは 0.20 g である。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

C 12

① 0.0017 mol    ② 0.0024 mol    ③ 0.017 mol

④ 0.024 mol    ⑤ 0.17 mol    ⑥ 0.24 mol

(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

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正解 3

ダイヤモンドは炭素原子が共有結合してできています。

炭素の原子量は 12 なので、炭素原子のモル質量は 12 g/mol となります。

問題では 0.1 カラットのダイヤモンド、つまり 0.20 g の炭素の共有結合結晶には、炭素原子が何モルあるかを計算します。

求める炭素の物質量は

\(\frac{0.20[g]}{12[g/mol]}\) ≒ 0.017[mol]

です。

実践問題3(2018本第1問問4)

原子 X および Z からなり、化学式が X2Z3 で表される物質がある。X および Z のモル質量がそれぞれ Mx [ g/mol ] および Mz [ g/mol ] であるとき、物質 X2Z3 5 g に含まれている X の質量を求める式として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

(①~⑥の式の単位は g )

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問4 より引用)

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正解 3

1 つの X2Z3 分子のなかに、X 原子が 2 個と Z 原子が 3 個あります。

そこで、化学式が X2Z3 で表される物質の分子量(モル質量)は、2Mx + 3Mz となります。

物質 X2Z3 が 5g あるとき、この物質量は

$$\frac{5[g]}{2Mx + 3Mz[g/mol]}$$

となります。

X2Z3 が \(\frac{5}{2Mx + 3Mz}\) [mol]あることがわかりましたが、この X2Z3 1 分子には X 原子が 2 分子含まれます。

したがって、X 原子は \(\frac{5}{2Mx + 3Mz}\) × 2 [mol]あります。

X の質量は、X の物質量と X のモル質量 の積として求まります。

まとめると、X の質量は

$$\frac{5}{2Mx + 3Mz} \times 2 \times Mx [g]$$

です。

正解は③の

$$\frac{10Mx}{2Mx + 3Mz}[g]$$

実践問題4(2018本第2問問1)

180 g の水に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。ただし、アボガドロ数( 6.02 × 1023 )を N とする。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    O 16

① 水素原子の数は、10 N である。

② 原子核の数は、30 N である。

③ 共有結合に使われている電子の数は、40 N である。

④ 非共有電子対の数は、20 N である。

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

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正解 1

水分子 H2O の分子量は 18 であり、モル質量は 18 g/mol です。

したがって 180 g の水の物質量は

$$\frac{180 [g]}{18 [g/mol]} = 10 [mol]$$

であるので、10 mol となります。

水分子が 10 mol あるので、水分子の個数は 10 N 個あります。

(1 mol の水分子があると、その個数はアボガドロ数の N 個となるので。)

1 × 水分子 1 個の中に水素原子は 2 個あります。いま水分子は 10 N 個あるので、水素原子は 20 N 個です。

2 〇 水分子 1 個には、水素原子 2 個と酸素原子 1 個があります。

それぞれの原子 1 個の中に原子核 1 個があるので、水分子 1 個のなかには、原子核が 3 個あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、原子核は 30 N 個です。

3 〇 水 1 分子の中に共有電子対は 2 対あるので、共有結合している電子は 4 個あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、共有結合に使われている電子は 40 N 個です。

4 〇 水 1 分子内の非共有電子対は、酸素原子に 2 対あります。

いま水分子は 10 N 個あるので、非共有電子対の数は 20 N 個です。

実践問題5(2017本第2問問2)

物質 A は、図 1 に示すように、棒状の分子が水面に直立してすき間なく並び、一層の膜(単分子膜)を形成する。物質 A の質量が w [ g ] のとき、この膜の全体の面積は X [ cm2 ] であった。物質 A のモル質量を M [ g/mol ] 、アボガドロ定数を NA [ /mol ] としたとき、分子 1 個の断面積 s [ cm2 ] を表す式として正しいものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

(①~⑥の式の単位は cm2

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問2 より引用)

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正解 2

物質 A の質量が w [ g] でモル質量が M [ g/mol ] なので、

物質 A の物質量は \(\frac{w[g]}{M[g/mol]}\) です。

物質 A が \(\frac{w}{M}\) モルあることがわかったので、

物質 A の分子の数は、\(\frac{w}{M}\) × NA [個] となります。

分子 1 個の断面積と分子の数の積が、膜の全体の面積になります。

s × \(\frac{w}{M}\) × NA = X

式を変形すると

s = \(\displaystyle\frac{XM}{wN_A}\)

実践問題6(2017追第2問問1)

物質 1 g 中に含まれる酸素の質量が最も小さいものはどれか。次の①~④のうちから一つ選べ。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    C 12    N 14    O 16    Si 28

① 二酸化ケイ素    ② 水

③ 二酸化炭素    ④ 一酸化二窒素

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

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正解 4

これらの物質はすべて化合物ですので、複数の元素からできています。

このなかで酸素原子の含有率が最も低いものが、1 g 中に含まれる酸素の質量が最も小さいものとなります。

1 二酸化ケイ素 SiO2 の式量は 28 + 16 × 2 = 60

SiO2 1 分子のなかに酸素原子は 2 個あるので、

二酸化ケイ素 SiO2 分子の質量のうち、酸素原子の質量の比率は \(\frac{32}{60}\) ≒ 0.53

したがって、この物質 1 g 中に含まれる酸素の質量は約 0.53 g です。

2 水 H2O の分子量は 1.0 × 2 + 16 = 18

H2O 1 分子のなかに酸素原子は 1 個あるので、

水 H2O 分子の質量のうち、酸素原子の質量の比率は \(\frac{16}{18}\) ≒ 0.89

したがって、この物質 1 g 中に含まれる酸素の質量は約 0.89 g です。

3 二酸化炭素 CO2 の分子量は 12 + 16 × 2 = 44

CO2 1 分子のなかに酸素原子は 2 個あるので、

二酸化炭素 CO2 分子の質量のうち、酸素原子の質量の比率は \(\frac{32}{44}\) ≒ 0.73

したがって、この物質 1 g 中に含まれる酸素の質量は約 0.73 g です。

4 一酸化二窒素 N2O の分子量は 14 × 2 + 16 = 44

N2O 1 分子のなかに酸素原子は 1 個あるので、

一酸化二窒素 N2O 分子の質量のうち、酸素原子の質量の比率は \(\frac{16}{44}\) ≒ 0.36

したがって、この物質 1 g 中に含まれる酸素の質量は約 0.36 g です。

実践問題7(2017追第2問問2)

分子量 M の物質 1 g 中の分子の個数を N としたとき、分子量 18 の物質 100 g 中にある分子の個数を表す式として最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)

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正解 3

M や N の関係がわかりにくいので、アボガドロ定数を使って整理します。

アボガドロ定数を NA とします。

分子量 M の物質 1 g の物質量は、\(\frac{1}{M}\) モルです。

また定義より、分子が 1 モルあるとき、その分子の個数は NA 個になります。

分子量 M の物質 1 g 中の分子の個数が N なので、

\(\frac{1}{M}\) × NA = N

が成立します。この式を変形して NA を表すと

NA = MN  ‥‥(1)

また、分子量 18 の物質 100 g の物質量は、\(\frac{100}{18}\) モルです。

分子量 18 の物質 100 g 中にある分子の個数を X とすると

X = \(\frac{100}{18}\) × NA

となります。

上の式に (1) 式を代入すれば

$$X = \frac{100MN}{18}$$

となり、③が正解です。

実践問題8(2018試第1問問1)

生理食塩水は、塩化ナトリウムを水に溶かしたもので、ヒトの体液と塩分濃度がほぼ等しい水溶液であり、 10 mL の生理食塩水にはナトリウムイオンが 35 mg 含まれている。

1.0 L の生理食塩水に含まれるナトリウムイオンの物質量は何 mol か。最も適当な数値を、次の①~④のうちから一つ選べ。

(①~④の数値の単位は mol )

① 0.060   ② 0.10   ③ 0.15   ④ 0.35

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

Na 23

(第2回 共通テスト試行調査 化学基礎 第1問問1 より一部を引用)

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正解 3

10 mL の生理食塩水には 35 mg のナトリウムイオン Na+ が含まれています。

そこで、1.0 L ( = 1000 mL )の生理食塩水には 3500 mg のナトリウムイオンが含まれることになります。

3500 mg = 3.5 g なので、ナトリウムイオンのモル質量 23 g/mol より、

求める 1.0 L の生理食塩水中のナトリウムイオンの物質量は

\(\frac{3.5[g]}{23[g/mol]}\) ≒ 0.15[mol]

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