気体の体積と物質量

ポイント

標準状態とは、温度が 0 ℃で圧力が 1.013 × 105 Pa の状態です。

どのような種類の気体でも、同温・同圧で同じ体積の気体ならば、同じ数の分子を含んでいます。これをアボガドロの法則といいます。

標準状態では、1 mol の気体は、気体の種類によらず 22.4 L の体積になります。

1 mol あたりの気体の体積のことをモル体積といいます。標準状態における気体のモル体積は、22.4 L / mol です。

アボガドロの法則

物質は固体・液体・気体のあいだで状態を変化させます。気体は温度や圧力によって、体積が膨張したり収縮したりします。

そこで化学では気体のことを考察するとき、標準状態と呼ばれる条件をよく用います。

標準状態とは、温度が 0 ℃で(絶対温度なら 273 K )、圧力が大気圧と等しい 1.013 × 105 Pa の状態です。

( Pa はパスカルと読み、圧力の単位です。)

どのような種類の気体でも、同温・同圧で同じ体積の気体ならば、同じ数の分子を含んでいます。これをアボガドロの法則といいます。

アボガドロの法則を言い換えると、同温・同圧の条件下では、同じ数だけ分子があるならば、どのような種類の気体でも同じ体積になります。

特に標準状態では、1 mol の気体(6.02 × 1023 個の気体分子)は、気体の種類によらず 22.4 L の体積になります。

このことから、標準状態の気体は、1 mol あたりの体積が 22.4 L だといえます。

モル質量と同じように、1 mol あたりの気体の体積のことをモル体積と呼びます。標準状態における気体のモル体積は、22.4 L / mol です。(モル体積の単位は L / mol )

具体的にアボガドロの法則を考えます。水素も酸素も二酸化炭素も、同温・同圧なら同じ体積に同じ数だけの分子を含みます。

特に標準状態なら、22.4 L の体積の気体には、水素でも酸素でも二酸化炭素でも 1 mol の分子が含まれます。

アボガドロの法則により、気体の体積がわかれば気体の分子数(物質量)がわかります。

例えば、「標準状態で 11.2 L の酸素」ならば、モル体積が 22.4 L / mol なので

$$\frac{11.2 [L]}{22.4 [L/mol]} = 0.500 [mol]$$

物質量は 0.500 mol だと計算できます。

気体の密度

気体 1 L あたりの質量 g を気体の密度(単位は g / L )といいます。気体分子のモル質量とモル体積がわかれば、気体の密度は求められます。

特に標準状態ならば、気体のモル体積は 22.4 L / mol であり、モル質量も分子量から求められるので、気体の密度を計算することができます。

$$気体の密度[ g/L ] = \frac{モル質量[ g/mol ]}{モル体積[ L/mol ]}$$

特に標準状態なら

$$気体の密度[ g/L ] = \frac{分子量の値[ g ]}{22.4[ L ]}$$

例えば標準状態の二酸化炭素 CO2(分子量 44.0 )の気体の密度は

$$密度[ g/L ] = \frac{44.0 [ g/mol ]}{22.4 [ L/mol ]} ≒ 1.96 [ g/L ]$$

と計算できます。

逆に気体の密度から、気体の分子量を求めることもできます。

例えば、標準状態で気体の密度を測定したら 1.43 [ g/L ] だったとき、気体の分子量は

$$分子量 = 1.43[g/L] × 22.4 [L/mol] ≒ 32.0 [g/mol]$$

となり、分子量は 32.0 と計算できます。

問題演習

確認テスト1

標準状態で 56 L の二酸化炭素の物質量はいくらですか。

正解を見る

$$\frac{56[L]}{22.4[L/mol]} = 2.5 [mol] $$

二酸化炭素は 2.5 mol あります。

確認テスト2

標準状態で気体の密度を測定したら 1.43 [ g/L ] でした。この気体の分子量はいくらですか。また、この気体に当てはまる例を考えましょう。

正解を見る

気体の密度が 1.43 [ g/L ] ということは、標準状態で 1 L の気体の質量が 1.43 g です。

標準状態でモル体積は 22.4 [ L/mol ] です。気体が 22.4 L あると、その気体の物質量は 1 mol ということです。

1.43 [g/L] × 22.4 [L/mol] = 32.0 [g/mol]

気体が 22.4 L あると、気体の質量は 32.0 g でした。

1 mol の気体があるとき、その質量が 32.0 g なので、この気体の分子量は 32.0 です。

モル質量が 32.0 g/mol にあてはまる物質は、例えば酸素 O2 があります。この気体の例としては、酸素が考えられます。

実践問題1(2015本第2問問1)

0 ℃、1.013 × 105 Pa において気体 1 g の体積が最も大きい物質を、次の①~④のうちから一つ選べ。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    C 12    N 14    O 16    S 32

① O2    ② CH4    ③ NO    ④ H2S

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

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正解 2

気体の種類によらず、0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件下では、気体は物質量 1 mol で体積が 22.4 L です。

つまり同温・同圧(ここでは 0 ℃ ・ 1.013 × 105 Pa )の条件では、物質量が多いほど気体の体積は大きくなります。

気体の質量が 1 g であるとき、気体の分子量が小さいほど、その気体の物質量は大きくなります。

例えば、気体の分子量を M とすると、1 g の気体の物質量は

$$\frac{1}{M}mol$$

となります。

このとき、M が小さいほど気体の物質量は大きくなり、1 g の気体の体積は大きくなります。

それぞれの気体の分子量は、

① O2 = 16 × 2 = 32

② CH4 = 12 + 1.0 × 4 = 16

③ NO = 14 + 16 =30

④ H2S = 1.0 × 2 + 32 =34

であり、正解は②です。

実践問題2(2018本第2問問2)

0 ℃、1.013 × 105 Pa において、体積比 2:1 のメタンと二酸化炭素からなる混合気体 1.0 L の質量は何 g か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    C 12    O 16

① 0.71 g    ② 1.1 g    ③ 1.5 g    ④ 2.0 g    ⑤ 2.2 g

(2018年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問2 より引用)

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正解 2

混合気体の体積が 1.0 L で、その体積比が 2:1 なので、

メタンは 1.0 × \(\frac{2}{3}\) [L]、二酸化炭素は 1.0 × \(\frac{1}{3}\) [L]あります。

また、メタン CH4 の分子量は 16 で、二酸化炭素 CO2 の分子量は 44 です。

この問題では、分子量が 16 で体積が \(\frac{2}{3}\) [L] のメタンの質量と、分子量が 44 で体積が \(\frac{1}{3}\) [L] の二酸化炭素の質量の和を求めます。

0 ℃、1.013 × 105 Pa の条件下では、気体 1 mol の体積は 22.4 L です。

したがって、メタンの質量は

1.0 [L] × \(\frac{2}{3}\) × \(\frac{1}{22.4[L/mol]}\) × 16 [g/mol]

同様に、二酸化炭素の質量は

1.0 [L] × \(\frac{1}{3}\) × \(\frac{1}{22.4[L/mol]}\) × 44 [g/mol]

これらの和が求める混合気体の質量です。

実際に計算すると

\(\frac{76}{67.2}\) = 1.13 ≒ 1.1

となり、②が正解です。

実践問題3(2018追第1問問4)

空気(大気)を窒素と酸素の体積比が 4:1 の混合気体とすると、同温・同圧において、空気の密度に最も近い密度をもつ気体を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

C 12    N 14    O 16    S 32    Ar 40

① アルゴン    ② 一酸化窒素    ③ オゾン

④ 二酸化硫黄    ⑤ 二酸化炭素

(2018年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問4 より引用)

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正解 2

気体の種類によらず、0 ℃で 1.013 × 105 Pa の条件下なら、物質量 1 mol の気体の体積は 22.4 L です。

気体の種類によらず体積は等しいので、1 mol の質量が大きいほど気体の密度は大きくなります。

1 mol の質量が大きくなるのは分子量が大きいときなので、それぞれの気体の分子量を比較します。

空気の分子量の値と近い分子量をもつ気体は、空気の密度に近くなります。

なお、空気は窒素 80 %、酸素 20 %の混合気体なので、その平均分子量は

14 × 2 × 0.80 + 16 × 2 × 0.20 = 28.8

28.8 となります。

各選択肢の気体の分子量は

1 アルゴンは 1 原子で気体分子となります。そのため、原子量 = 分子量 = 40

2 一酸化窒素 NO の分子量は 14 + 16 = 30

3 オゾン O3 の分子量は 16 × 3 = 48

4 二酸化硫黄 SO2 の分子量は 32 + 16 × 2 = 64

5 二酸化炭素 CO2 の分子量は 12 + 16 × 2 = 44

最も空気の分子量に近いのは、②の一酸化窒素です。

実践問題4(2016追第2問問1)

次の気体のうち、同じ温度・圧力において質量が最も大きいものを、①~⑤のうちから一つ選べ。

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0    C 12    N 14    O 16    Ar 40

① 1.0 L のアルゴン    ② 1.0 L の二酸化炭素

③ 3.0 L の水素    ④ 3.0 L のメタン    ⑤ 3.0 L のアンモニア

(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問1 より引用)

正解を見る

正解 5

同温・同圧で比較するので、わかりやすく標準状態( 0 ℃、1.013 × 105 Pa)として考えます。

標準状態では、気体の種類によらず 22.4 L の体積の気体は、物質量が 1 mol です。

1 1.0 L のアルゴン Ar の物質量は、\(\frac{1.0[L]}{22.4[L/mol]}\) です。

物質量と気体の分子量(モル質量)の積が、求める質量です。

アルゴンの分子量は 40 です。

求める質量 = \(\frac{1.0}{22.4}\)[mol] × 40[g/mol] = \(\frac{40}{22.4}\)[g]

以下も同様に計算します。

2 二酸化炭素 CO2 の分子量は 44 なので

求める質量 = \(\frac{1.0}{22.4}\)[mol] × 44[g/mol] = \(\frac{44}{22.4}\)[g]

3 水素 H2 の分子量は 2.0 なので

求める質量 = \(\frac{3.0}{22.4}\)[mol] × 2.0[g/mol] = \(\frac{6.0}{22.4}\)[g]

4 メタン CH4 の分子量は 16 なので

求める質量 = \(\frac{3.0}{22.4}\)[mol] × 16[g/mol] = \(\frac{48}{22.4}\)[g]

5 アンモニア NH3 の分子量は 17 なので

求める質量 = \(\frac{3.0}{22.4}\)[mol] × 17[g/mol] = \(\frac{51}{22.4}\)[g]

分母の値は共通なので、分子の値を比べると 3.0 L のアンモニアが最も質量が大きいことがわかります。

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