化学反応(化学変化)では、分子やイオンを構成する原子の組み合わせが変わり、反応の前後で違う物質になります。
化学式を用いて化学反応を表した式を、化学反応式といいます。
反応する前の物質を反応物、反応した後にできた物質を生成物といいます。
化学反応式の左辺と右辺では、原子の種類と数が等しくなります。
化学反応式をつくるときは、左辺と右辺で原子の数が合うように係数を決めます。
もくじ
化学反応(化学変化)とは
水は冷えて固体の氷になったり、加熱されて気体の水蒸気になったりします。これを状態変化といいますが、水 H2O 自体が何かに変わったわけではありません。
固体の氷も、液体の水も、気体の水蒸気も、すべて H2O という分子で表されます。これは水 H2O が、固体・液体・気体のどの状態でも、原子の組み合わせや結合の仕方が変化していないことを意味します。
固体・液体・気体のあいだを変化する状態変化(物理変化)では、分子そのものは変わりません。物理変化では、分子同士のつながり方(距離)が変わります。
これに対し、化学変化では物質そのものが変わります。
分子やイオンを構成する原子が組み換えられ、化学変化の前後で異なる物質となります。この化学変化は、化学反応ともいいます。
例えば、水素 H2 が燃焼して酸素 O2 と反応すると、水 H2O になります。ここでは、水素と酸素の原子は化学反応によりバラバラになり、水として原子の結合が新たにつくられます。
化学反応式の書き方
化学式を用いて化学反応を表した式を、化学反応式といいます。また、反応する前の物質を反応物、反応した後にできた物質を生成物といいます。
化学反応では原子の組み合わせが変わりますが、反応の前後で各原子の総数は保たれます。原子の種類と数は、化学反応式の左辺と右辺で等しくなります。
化学反応式の書き方は以下の通りです。
1. 反応物を左辺に書き、→ を経て、生成物を右辺に書きます。
2. 左辺と右辺で各原子の数が等しくなるように、化学式の前に係数をつけます。係数は、最も簡単な整数の比にします。
3. 係数の 1 は省略します。触媒のように、化学反応の前後で変化しない物質も省略します。
実際に、水素と酸素から水ができる化学反応式を書くと、
1. 反応物の水素 H2 と酸素 O2 を左辺に書き、矢印でつなぎ、右辺に水 H2O を書きます。
2. 左辺は H が 2 個、O が 2 個。右辺は H が 2 個、O が 1 個でつり合いません。
そこで、左辺の H2 の係数を 1 として、順番に他の化学式の係数を合わせていきます。
H2 の係数を 1 とすると、H の数を合わせるために右辺の H2O の係数も 1 となります。すると右辺の O の数は 1 に決まります。
最後の O2 は、O を 1 個にするために、係数を \frac{1}{2}\ とします。
係数を簡単な整数比にするため、両辺に 2 をかけます。
3. 係数の 1 は省略します。
例題:エタノール燃焼の化学反応式
「エタノール C2H6O を完全燃焼させたときの化学反応式を書け。」という例題を解いてみましょう。
1. 反応物と生成物を書く
まず、反応物と生成物を考えます。
完全燃焼させるので、酸素と反応することがわかります。そこで、反応物はエタノールと酸素 O2 になります。
次に、燃焼後の生成物は何ができるのか、考えます。
炭素 C と水素 H を含む化合物を燃焼させるので、二酸化炭素 CO2 と水 H2O ができます。これより、生成物は二酸化炭素と水にします。
C2H6O + O2 → CO2 + H2O
2. 係数を決める
エタノールの係数を 1 とします。すると左辺の炭素原子 C が 2 個、水素原子 H が 6 個になります。
右辺で炭素原子があるのは二酸化炭素だけなので、二酸化炭素の係数は 2 と決まります。
また右辺で水素原子があるのは水だけなので、水の係数は 3 と決まります。
1 C2H6O + O2 → 2 CO2 + 3 H2O
最後に左辺の酸素 O2 の係数を決めます。
左辺には酸素原子が 1 個あります。右辺には酸素原子が 7 個(二酸化炭素の酸素原子 4 個と水の酸素原子 3 個)あります。
左辺で酸素原子が 6 個足りないので、O2 の係数は 3 に決まります。
1 C2H6O + 3 O2 → 2 CO2 + 3 H2O
3. 係数を簡単な整数比にする
係数を簡単な整数比にします。係数が 1 であれば省略します。
C2H6O + 3 O2 → 2 CO2 + 3 H2O
未定係数法
化学反応式に登場する元素の種類が多かったり、化学式が複雑だったりすると、左辺と右辺で原子の数を合わせるのに苦労することがあります。
そのような場合は、未定係数法を使うと化学反応式を完成させることができます。
未定係数法では、反応物と生成物の係数に文字をおいて、それぞれの原子について方程式を立てて解きます。
簡単な例ですが、上の例題を未定係数法で解いてみましょう。
a C2H6O + b O2 → c CO2 + d H2O
エタノールの係数を a 、酸素の係数を b 、二酸化炭素の係数を c 、水の係数を d とします。
左辺と右辺でそれぞれの原子の数は等しいです。そこで各原子について、左辺の数と右辺の数を文字式で表し、方程式を立てます。
炭素原子 C: 2 × a = 1 × c
水素原子 H: 6 × a = 2 × d
酸素原子 O: 1 × a + 2 × b = 2 × c + 1 × d
すべての方程式を立てたら、どれかの文字を 1 とおきます。(化学反応式は最後に係数が簡単な整数比になればいいので、計算がしやすくなりそうな文字を 1 とおいてかまいません。)
a = 1 とすると、上から順に a = 1 を代入すると
2 = c
6 = 2 d
となり、c = 2 、d = 3 が決まります。
これを最後の式に代入すると
1 + 2 b = 7
これを解くと、b = 3 です。
a ~ d まで係数が定まったので、もとの化学反応式に代入して、簡単な整数比に直せば完成です。
C2H6O + 3 O2 → 2 CO2 + 3 H2O
問題演習
確認テスト1
次の化学反応式を書きましょう。
- 水素と酸素が反応して、水が生成する。
- エタノール C2H6O が燃焼する。
- メタン CH4 が燃焼する。
実践問題1(2019追第2問問2)
家庭用の燃料電池システムでは、メタンを主成分とする都市ガスを原料として水素がつくられる。このことに関連する次の化学反応式中の係数( a ~ d )の組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)
実践問題2(2016追第2問問2)
次の化学反応式の係数( a ~ c )の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
C2H4O2 + a O2 → b CO2 + c H2O
(2016年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)
実践問題3(2015本第2問問2)
1 mol のプロパン C3H8 を完全燃焼させた。このとき、a mol の酸素が消費され、 b mol の二酸化炭素と c mol の水が生成した。数値( a ~ c )の組合せとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問2 より引用)