化学反応式と量的関係

ポイント

化学反応で消費される反応物と生じる生成物の物質量の比は、化学反応式の係数の整数比と等しくなります。

化学反応式と量的関係

化学反応は化学反応式で表されます。このとき化学反応式は、反応物と生成物を示すだけでなく、その物質量の比も表しています

そこで、化学反応が起きて消費される反応物と、生じる生成物の物質量の比を考えます。

化学反応式の各物質の係数は簡単な整数比になっていますが、この整数比の数だけそれぞれの分子の粒子が反応し、生成しています。つまり化学反応に関わる物質の物質量の比が、係数の整数比と等しくなります

水素 H2 と酸素 O2 から水 H2O が生成する化学反応式を例に考えていきます。

この化学反応式は

2 H2 + O2  →  2 H2O

と表されます。

この化学反応式は、2 個の水素分子 H2 と 1 個の酸素分子 O2 が反応すると、2 個の水分子 H2O が生成することを示しています。これは化学反応式の係数の比と等しいです。

同様に考えると、2 × 6.02 × 1023 個の水素分子 H2 と、1 × 6.02 × 1023 個の酸素分子 O2 が反応すると、2 × 6.02 × 1023 個の水分子 H2O が生成するといえます。

これは 2 mol の水素分子 H2 と、1 mol の酸素分子 O2 が反応すると、2 mol の水分子 H2O が生成することです。

つまり、化学反応式の係数の比が、反応物と生成物のそれぞれの物質量の比と等しくなります。

また気体の体積は、同温・同圧では種類によらず物質量によって決まります。そこで化学反応式にある物質の気体の体積の比は、係数の比と等しくなります

標準状態で上の例を考えると、44.8 L ( = 2 mol ) の水素 H2 と、22.4 L ( = 1 mol ) の酸素 O2 が反応し、36 g ( = 2 mol ) の液体の水 H2O(気体で存在するとすれば 44.8 L ( = 2 mol ) の水蒸気)が生成したといえます。

このように、化学反応式の係数の比から、反応物と生成物の物質量の比を求めることができます。

例題:化学反応式(メタンの燃焼)

メタンが燃焼したときの化学反応式

CH4 + 2 O2 → CO2 + 2 H2O

をもとに、以下の問いに答えよ。ただし実験は標準状態下で行い、 H2O の分子量は 18 とする。

1. メタン 1 モルと酸素 2 モルが反応すると、生成する二酸化炭素の物質量はいくらか。

2. メタン 1 モルが燃焼すると、生成する二酸化炭素の体積はいくらか。ただし、酸素は十分にあるとする。

3. 酸素 11.2 L が反応したとき、生成する水の質量はいくらか。ただし、メタンは十分にあるとする。

1. 化学反応式の係数の比から、メタン 1 モルと酸素 2 モルが反応し、二酸化炭素 1 モルと水 2 モルが生成することがわかります。

したがって、生成する二酸化炭素の物質量は 1 モルです。

2. メタンが 1 モル燃焼すると、二酸化炭素は 1 モル生成します。標準状態で物質量が 1 モルの気体の体積は、22.4 L です。

したがって、生成する二酸化炭素の体積は 22.4 L です。

3. 酸素が 2 モル反応したとき、水は 2 モル生成します。標準状態で 11.2 L の酸素の物質量は、モル質量が 22.4 L/mol なので、

$$\frac{11.2 L}{22.4 L/mol} = 0.500 mol$$

したがって、生成する水の物質量は 0.500 モルです。

水の分子量は 18 なので、水のモル質量は 18 g/mol です。

したがって、物質量が 0.500 モルの水の質量は

18 [ g/mol ] × 0.500 [ mol ] = 9.0 [ g ]

生成する水の質量は 9.0 g です。

化学反応では、実際に存在している反応物の物質量の比が、化学反応式の係数の比と完全に一致していることはほとんどありません。反応物のうち、どれかが不足してどれかが余ることになります。

そのような場合、一番少ない反応物がすべて反応して無くなってしまった時点で、反応は止まります

例題:化学反応式(メタンの燃焼)不足あり

メタンが燃焼したときの化学反応式

CH4 + 2 O2 → CO2 + 2 H2O

をもとに、以下の問いに答えよ。ただし実験は標準状態下で行い、 H2O の分子量は 18 とする。

4. メタンが 44.8 L 、酸素が 112 L あるとき、反応後に生成する水の質量はいくらか。

5. メタンが 22.4 L 、酸素が 33.6 L あるとき、反応後に生成する二酸化炭素の体積はいくらか。

4. 化学反応式の係数の比から、メタンと酸素は物質量が 1:2 の比で反応します。

ここでは、メタンが 44.8 L なのでメタンの物質量は

$$\frac{44.8 L}{22.4 L/mol} = 2.00 mol $$

酸素は 112 L なので酸素の物質量は

$$\frac{112 L}{22.4 L/mol} = 5.00 mol $$

問題ではメタンと酸素の物質量の比は 2:5 となります。メタンの方が少ないので、メタンが 2.00 mol 、酸素が 4.00 mol 反応して消費された時点で、反応は止まります。

反応後はメタンがなくなりますが 、酸素は 1.00 mol 残ります。

化学反応式の係数から、メタンが 1 mol 反応すると、水は 2 mol 生成することがわかります。ここではメタンが 2.00 mol 反応しているので、水は 4.00 mol 生成します。

水の分子量は 18 なので、モル質量は 18 g/mol となります。

水 4.00 mol の質量は

18 [ g/mol ] × 4.00 [ mol ] = 72 [ g ]

したがって、反応後に生成する水の質量は 72 g です。

5. 化学反応式の係数の比から、メタンと酸素は物質量が 1:2 の比で反応します。

ここでは、メタンが 22.4 L なのでメタンの物質量は

$$\frac{22.4 L}{22.4 L/mol} = 1.00 mol $$

酸素は 33.6 L なので酸素の物質量は

$$\frac{33.6 L}{22.4 L/mol} = 1.50 mol $$

問題ではメタンと酸素の物質量の比は 1:1.5 となります。酸素の方が少ないので、メタンが 0.75 mol 、酸素が 1.50 mol 反応して消費された時点で、反応は止まります。

反応後は酸素がなくなりますが 、メタンは 0.25 mol 残ります。

化学反応式の係数から、メタンが 1 mol 反応すると、二酸化炭素は 1 mol 生成することがわかります。ここではメタンが 0.75 mol 反応しているので、二酸化炭素は 0.75 mol 生成します。

標準状態なので、モル体積は 22.4 L/mol となります。生成する二酸化炭素の体積は

22.4 [ L/mol ] × 0.75 [ mol ] = 16.8 [ L ]

したがって、反応後に生成する二酸化炭素の体積は 16.8 L です。

問題演習

実践問題1(2017本第2問問3)

トウモロコシの発酵により生成したエタノール C2H5OH を完全燃焼させたところ、44 g の二酸化炭素が生成した。このとき燃焼したエタノールの質量は何 g か。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① 22 g    ② 23 g    ③ 32 g

④ 44 g    ⑤ 46 g    ⑥ 64 g

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問3 より引用)

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正解 2

完全燃焼なので、酸素と反応して二酸化炭素と水が発生します。

C2H5OH + 3 O2 → 2 CO2 + 3 H2O

1 mol のエタノールから 2 mol の二酸化炭素が発生します。

CO2 の分子量は 44 なので、44 g の二酸化炭素の物質量は 1.0 mol です。

つまりエタノールは 0.50 mol 反応しています。

エタノールの分子量は 46 ですから、 0.50 mol の質量は

46[g/mol] × 0.50[mol] = 23[g]

燃焼したエタノールの質量は 23 g です。

実践問題2(2017本第2問問7)

濃度が不明の塩酸 25 mL と炭酸カルシウム CaCO3 が反応して二酸化炭素を発生した。この反応は次の化学反応式で表される。

CaCO3 + 2 HCl → CaCl2 + H2O + CO2

炭酸カルシウムの質量と発生した二酸化炭素の物質量の関係は図 2 のようになった。反応に用いた塩酸の濃度は何 mol/L か。最も適当な数値を、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

(①~⑥の数値の単位は mol/L )

① 0.20    ② 0.50    ③ 1.0

④ 2.0    ⑤ 10    ⑥ 20

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問7 より引用)

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正解 4

図 2 からわかるように、炭酸カルシウムの質量が増えると、発生した二酸化炭素の物質量も増えます。

また炭酸カルシウムの質量が 2.5 g のとき、発生した二酸化炭素の物質量は 0.025 mol です。炭酸カルシウムの質量がこれ以上増えても、発生した二酸化炭素の物質量は 0.025 mol のまま一定です。

これより、炭酸カルシウムの質量を 2.5 g まで増やすと、存在する塩酸が完全に反応して、0.025 mol の二酸化炭素が発生したとわかります。

反応式より HCl が 2 mol 反応すると CO2 が 1 mol 発生します。

したがって、存在する HCl の物質量は

0.025 × 2 = 0.050 mol

です。

求める塩酸のモル濃度を X mol/L とすると、塩酸の溶液は 25 mL なので

X[mol/L] × \(\frac{25[mL]}{1000[mL]}\) = 0.050[mol]

これを解くと X = 2.0[mol/L]

実践問題3(2015本第2問問7)

次のように、ある金属 M は塩酸と反応して水素を発生する。

M + 2 HCl → MCl2 + H2

反応する M の質量と発生する水素の物質量の関係が図 1 のようになるとき、M の原子量はいくらか。最も適当な数値を、下の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 20    ② 25    ③ 40    ④ 50    ⑤ 80

(2015年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問7 より引用)

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正解 3

図 1 のグラフからわかるように、金属 M が 4 g 反応すると、水素 H2 が 0.10 mol 発生しています。

また化学反応式を見ると、M が 1 mol 反応すると水素 H2 が 1 mol 生成しています。

ですから水素が 0.10 mol 発生しているときは、M も 0.10 mol 反応しています。

金属 M は質量 4 g で 0.10 mol であり、また原子量を X とすると質量 X g で 1 mol となります。

したがって、 4 g : 0.10 mol = X g : 1 mol となるので、

\(\frac{4[g]}{0.10[mol]}\) = X[g/mol]

X = 40

実践問題4(2020追第2問問2)

ナトリウム Na 0.92 g を水 H2O 90 g に加えて反応させたとき、何 g の水素が発生するか。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

① 0.020   ② 0.040   ③ 0.46   ④ 0.92   ⑤ 2.5   ⑥ 5.0

(①~⑥の数値の単位は g )

必要があれば、原子量は次の値を使うこと。

H 1.0   O 16   Na 23

(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)

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正解 2

ナトリウムと水の反応は

2 Na + 2 H2O → 2 NaOH + H2

となるので、2 mol のナトリウムと 2 mol の水が反応すると、1 mol の水素が発生します。

ナトリウムは \(\frac{0.92[g]}{23[g/mol]}\) = 0.040[mol] 存在します。

水は \(\frac{90[g]}{18[g/mol]}\) = 5.0[mol] 存在します。

水は十分あるので、ナトリウム全量と反応します。このとき水素は 0.020 mol 発生します。

水素の分子量は 2.0 なので、求める質量は 2.0[g/mol] × 0.020[mol] = 0.040[g] です。