実践問題
問1(2020本第1問問6)
ある量の塩化カルシウム CaCl2 と臭化カルシウム CaBr2 を完全に溶かした水溶液に、十分な量の硫酸ナトリウム Na2 SO4 水溶液を加えると 8.6 g の硫酸カルシウム二水和物 CaSO4 ・2 H2 O (式量 172 )の沈殿が得られた。水溶液中の臭化物イオンの物質量が 0.024 mol であったとすると、溶かした CaCl2 の物質量は何 mol か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。ただし、水溶液中のカルシウムイオンはすべて CaSO4 ・2 H2 O として沈殿したものとする。
(①~⑤の数値の単位は mol )
① 0.002 ② 0.019 ③ 0.026 ④ 0.038 ⑤ 0.051
(2020年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問6 より引用)
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正解 4
得られた CaSO4 ・2 H2 O の物質量は、\(\frac{8.6[g]}{172[g/mol]}\) = 0.050[mol]です。
この沈殿は、水溶液中の Ca2+ イオンと SO4 2- イオンから生成します。そのため十分な量の硫酸ナトリウムがある場合、Ca2+ イオン 1 mol から CaSO4 ・2 H2 O の沈殿が 1 mol 得られます。
また、CaBr2 は水溶液中で以下のように電離します。
CaBr2 → Ca2+ + 2 Br-
そのため、CaBr2 を 1 mol 溶かすと、2 mol の臭化物イオン Br- が水溶液中に存在します。
したがって、水溶液中の臭化物イオン Br- が 0.024 mol 存在したということは、CaBr2 を 0.012 mol 溶解させたとわかります。
CaBr2 を 0.012 mol 溶かすと、CaSO4 ・2 H2 O は 0.012 mol 沈殿します。
したがって沈殿物のうち 0.050[mol] – 0.012[mol] = 0.038[mol] が、CaCl2 から生成したものです。
問2(2019本第1問問3)
ニッケル Ni を含む合金 6.0 g から、すべての Ni を酸化ニッケル(Ⅱ) NiO として得た。この NiO の質量が 1.5 g であるとき、元の合金中の Ni の含有率(質量パーセント)は何%か。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
(①~⑥の数値は%)
① 5.5 ② 7.8 ③ 10 ④ 16 ⑤ 20 ⑥ 25
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
O 16 Ni 59
(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問3 より引用)
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正解 5
NiO の式量は 75 です。そこで、1.5 g 中の NiO には Ni が
1.5[g] × \(\frac{59}{75}\) = 1.18[g]
含まれます。
はじめの合金は 6.0 g ですので、Ni の含有量は
\(\frac{1.18[g]}{6.0[g]}\) × 100 ≒ 20%
となります。
(別解)
1.5 g の NiO は \(\frac{1.5[g]}{75[g/mol]}\) = 0.020[mol] です。
NiO 1 mol には Ni が 1 mol 含まれているので、もとの合金には 0.020 mol の Ni がありました。
もとの合金にあった Ni は、59[g/mol] × 0.020[mol] = 1.18[g] です。
求める含有率は \(\frac{1.18[g]}{6.0[g]}\) × 100 ≒ 20%
問3(2019本第2問問1)
物質の量に関する記述として誤りを含むもの を、次の①~④のうちから一つ選べ。
① CO と N2 を混合した気体の質量は、混合比にかかわらず、同じ体積・圧力・温度の NO の気体の質量よりも小さい。
② モル濃度が 0.10 mol/L である CaCl2 水溶液 2.0 L 中に含まれる Cl- の物質量は、0.40 mol である。
③ H2 O 18 g と CH3 OH 32 g に含まれる水素原子の数は等しい。
④ 炭素(黒鉛)が完全燃焼すると、燃焼に使われた O2 と同じ物質量の気体が生じる。
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 C 12 N 14 O 16
(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問1 より引用)
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正解 3
1 〇 CO の分子量は 28 、 N2 の分子量は 28 、 NO の分子量は 30 です。 CO と N2 をどの比率で混合しても平均分子量は 28 で、 NO の分子量より小さいです。
同温・同圧・同体積の気体は、気体の種類によらず物質量は等しいです。したがって、分子量の大きい気体の方が質量は大きくなります。
2 〇 CaCl2 1 mol が電離すると、Cl- イオンは 2 mol 生じます。
CaCl2 → Ca2+ + 2 Cl-
ここではモル濃度が 0.10 mol/L の CaCl2 水溶液が 2.0 L あるので、Cl- の物質量は
0.10[mol/L] × 2.0[L] × 2 = 0.40[mol]
3 × H2 O の分子量は 18 であり、 18 g あるので物質量は 1 mol です。 CH3 OH の分子量は 32 であり、 32 g あるので物質量は 1 mol です。
H2 O 1 分子内に水素原子は 2 個あるので、 18 g の H2 O には水素原子が 2 mol あります。
CH3 OH 1 分子内に水素原子は 4 個あるので、 32 g の CH3 OH には水素原子が 4 mol あります。
4 〇 炭素を燃焼させたときの化学反応式は、次の通りです。
C + O2 → CO2
酸素が 1 mol 燃焼に使われると、CO2 が 1 mol 発生します。
問4(2019追第1問問3)
次の物質が、それぞれの水溶液中で完全に電離しているときに、溶けている陰イオンのモル濃度と価数の積が最も大きいものはどれか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。ただし、それぞれの水溶液における物質のモル濃度はすべて等しいとする。
① KMnO4 ② AlCl3 ③ NH4 NO3 ④ FeSO4 ⑤ CaCl2
(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問3 より引用)
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正解 2
仮にそれぞれの物質 1 mol を水に溶かし、1 L の水溶液として電離するとどうなるか示します。
① K+ が 1 mol 、MnO4 - が 1 mol 水溶液の中に存在します。
② Al3+ が 1 mol 、Cl- が 3 mol 水溶液の中に存在します。
③ NH4 + が 1 mol 、NO3 - が 1 mol 水溶液の中に存在します。
④ Fe2+ が 1 mol 、SO4 2- が 1 mol 水溶液の中に存在します。
⑤ Ca2+ が 1 mol 、Cl- が 2 mol 水溶液の中に存在します。
ここで、陰イオンのモル濃度と価数の積が大きくなるものを探します。
②の 3 mol/L × 価数は 1 = 3 が最大です。
④は 1 mol/L × 価数は 2 = 2
⑤は 2 mol/L × 価数は 1 = 2
①と③は 1 mol/L × 価数は 1 = 1
問5(2019追第1問問5)
水酸化ナトリウム NaOH と炭酸ナトリウム Na2 CO3 のみからなる混合物 9.3 g 中に含まれる炭酸イオンの物質量が 0.050 mol であるとき、混合物中に含まれる NaOH の質量は何 g か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(①~⑤の数値の単位は g )
① 4.0 ② 5.2 ③ 6.3 ④ 7.3 ⑤ 8.8
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 C 12 O 16 Na 23
(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問5 より引用)
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正解 1
炭酸イオン CO3 2- が 0.050 mol 存在するので、炭酸ナトリウム Na2 CO3 も 0.050 mol あることがわかります。
炭酸ナトリウムのモル質量は 106 g/mol なので、0.050 mol の質量は
106[g/mol] × 0.050[mol] = 5.3[g]
混合物の残りが NaOH なので求める質量は
9.3 - 5.3 = 4.0[g]
問6(2017本第2問問1)
物質の量に関する記述として誤りを含むもの を、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 0 ℃、1.013 × 105 Pa において、4 L の水素は 1 L のヘリウムより軽い。
② 16 g のメタンには水素原子が 4.0 mol 含まれている。
③ 水 100 g に塩化ナトリウム 25 g を溶かした水溶液の質量パーセント濃度は 20 % である。
④ 水酸化ナトリウム 4.0 g を水に溶かして 100 mL とした水溶液のモル濃度は 1.0 mol/L である。
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 He 4.0 C 12 O 16 Na 23
(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問1 より引用)
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正解 1
1 × 気体の水素分子は H2 であり、分子量は 2.0 です。気体のヘリウム分子は He であり、分子量は 4.0 です。したがって、4 L の H2 は 2 L の He と同じ重さです。
H2 の質量 = \(\frac{4[L]}{22.4[L]}\) × 2.0[g/mol]
He の質量 = \(\frac{1[L]}{22.4[L]}\) × 4.0[g/mol]
4 L の水素 H2 の方が、1 L のヘリウム He より重くなります。
2 〇 メタン CH4 の分子量は 16 です。16 g のメタンの物質量は 1.0 mol になります。
メタン 1 分子に水素原子は 4 個あるので、メタン 1.0 mol には水素原子が 4.0 mol あります。
3 〇 水 100 g に塩化ナトリウム 25 g を溶かした溶液の質量は 125 g です。質量パーセント濃度は次のように計算できます。
\(\displaystyle\frac{25}{(100 + 25)}\) × 100 = 20%
4 〇 水溶液 100 mL に水酸化ナトリウム 4.0 g が溶けているので、この水溶液 1000 mL には水酸化ナトリウムが 40 g 溶けています。
4.0[g] × \(\displaystyle\frac{1000}{100}\) = 40[g]
水酸化ナトリウムの式量(モル質量)は 40 なので、水溶液のモル濃度は
\(\displaystyle\frac{40[g]}{40[g/mol]}\) = 1.0[mol/L]
問7(2016本第1問問5)
青銅は銅とスズの合金である。2.8 kg の青銅 A(質量パーセント:Cu 96 %、Sn 4.0 %)と 1.2 kg の青銅 B(Cu 70 %、Sn 30 %)を混合して融解し、均一な青銅 C をつくった。1.0 kg の青銅 C に含まれるスズの物質量は何 mol か。最も適当な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
(①~⑤の数値の単位は mol )
① 0.12 ② 0.47 ③ 0.99 ④ 4.0 ⑤ 12
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
Cu 64 Sn 119
(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第1問問5 より引用)
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正解 3
2.8 kg の青銅 A にはスズが 2.8 × \(\frac{4.0}{100}\) = 0.112[kg] 含まれます。
1.2 kg の青銅 B にはスズが 1.2 × \(\frac{30}{100}\) = 0.36[kg] 含まれます。
したがって、融解してできた 4.0 kg の青銅 C には、スズが
0.112 + 0.36 = 0.472[kg] = 472[g]
含まれています。
1.0 kg の青銅 C に含まれるスズの物質量は、スズのモル質量が 119 g/mol なので、
472[g] × \(\frac{1.0[kg]}{4.0[kg]}\) × \(\frac{1}{119[g/mol]}\) ≒ 0.99[mol]
問8(2016本第2問問2)
ある有機化合物 0.80 g を完全に燃焼させたところ、1.1 g の二酸化炭素と 0.90 g の水のみが生成した。この化合物の化学式として最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① CH4 ② CH3 OH ③ HCHO
④ C2 H4 ⑤ C2 H5 OH ⑥ CH3 COOH
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
H 1.0 C 12 O 16
(2016年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問2 より引用)
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正解 2
1.1 g 生成した CO2 の分子量は 44 です。このなかの炭素原子の質量は、
1.1[g] × \(\frac{12}{44}\) = 0.30[g]
0.90 g 生成した H2 O の分子量は 18 です。このなかの水素原子の質量は、
0.90[g] × \(\frac{2.0}{18}\) = 0.10[g]
この有機化合物が完全燃焼した化学反応式は
有機化合物 + O2 → CO2 + H2 O
となります。(係数の数値は無視しています。)
ある有機化合物は 0.80 g はじめにあったので、このなかにある酸素原子の質量は、
0.80 - ( 0.30 + 0.10 ) = 0.40[g]
なお、有機化合物に含まれていた元素があとは酸素だけとは書かれていませんが、完全燃焼後に残った化合物からわかります。
CO2 と H2 O しか生成していないので、有機化合物には C と H と O だけが含まれていました。
これら 3 つの原子について、存在する質量を原子量で割ると有機化合物の組成式がわかります。
\(\frac{0.30}{12}\) : \(\frac{0.10}{1.0}\) : \(\frac{0.40}{16}\) = 0.025:0.10:0.025 = 1:4:1
つまり、CH4 O の整数倍がこの有機化合物の分子式です。
この原子の比率に合うのは、CH3 OH しかありません。
問9(2015追第2問問2)
十分な量の水にナトリウムを加えたところ、次の反応により水素が発生した。
2 Na + 2 H2 O → 2 NaOH + H2
反応したナトリウムの質量と発生した水素の物質量の関係を表す直線として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
Na 23
(2015年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問2 より引用)
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正解 3
反応式より Na 2 mol が反応すると、H2 が 1 mol 生成することがわかります。
Na の原子量は 23 なので、Na のモル質量は 23 g/mol です。
グラフの横軸 0.23 g の位置は、Na の物質量が 0.01 mol にあたります。この Na 0.01 mol が反応したら、H2 は 0.005 mol 生成します。
横軸 0.23 g のところから垂直に上を見ていくと、発生した H2 の物質量が 0.005 mol となっている直線が正しい直線です。
直線③は Na が 0.23 g ( = 0.01 mol ) のとき、H2 が 0.005 mol 生成していることを示します。
問10(2020追第1問問5)
質量パーセント濃度が 20 %の塩化マグネシウム MgCl2 水溶液がある。この水溶液の密度は、1.2 g/cm3 であった。この水溶液 50 mL に含まれる塩化物イオンの物質量は何 mol か。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
(①~⑥の数値の単位は mol )
① 0.11 ② 0.13 ③ 0.25 ④ 1.1 ⑤ 1.3 ⑥ 2.5
必要があれば、原子量は次の値を使うこと。
Mg 24 Cl 35.5
(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第1問問5 より引用)
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正解 3
水溶液の密度が 1.2[g/cm3 ] で 50[mL] あるので、この水溶液の質量は
1.2[g/cm3 ] × 50[cm3 ] = 60[g] です。
質量パーセント濃度が 20 % なので、この水溶液に溶けている MgCl2 の質量は
60[g] × \(\frac{20}{100}\) = 12[g] です。
MgCl2 のモル質量は 24 + 35.5 × 2 = 95[g/mol] となります。
したがって、水溶液中の MgCl2 の物質量は
\(\frac{12[g]}{95[g/mol]}\) ≒ 0.126[mol] です。
MgCl2 を 1 mol 溶かすと水溶液中の塩化物イオン Cl- は 2 mol となるので、求める塩化物イオンの物質量は
0.126[mol] × 2 ≒ 0.25[mol] です。