一定量の液体を正確にはかりとる器具が、ホールピペットです。
ビュレットは、滴定実験でビーカーに加える液体の量を、正確に測定するための器具です。
正確に一定量の溶液をつくるために使うガラス容器を、メスフラスコといいます。
中和滴定では、中和反応を利用して、濃度がわからない溶液の濃度を正確に調べます。
もくじ
中和滴定とは
中和滴定の実験について学ぶ前に、必要な情報を知っておきましょう。まず、実験で使う器具の名前と用途を覚えます。
実験器具
ホールピペット
一定量の液体を正確にはかりとる器具が、ホールピペットです。
ホールピペットは細長いガラス管で、真ん中あたりに膨らみがあり、上部に標線という線が 1 本あります。
安全ピペッターなどの器具を使い、溶液を下から吸い上げ、標線まで溶液が上ってくるようにします。
こうやって標線の位置まで溶液を吸い込むと、正確な量の溶液を得ることができます。ホールピペットで得た溶液は、ビーカーなどに移して次の操作をします。

ビュレット
ビュレットは細長いガラス管で、中に入れた液体をコックを開いて下部から排出します。
ビュレットは側面に目盛りがついているので、下から落とした液体の量を正確に知ることができます。
つまりビュレットは、滴定実験で下のビーカーに加える液体の量を、正確に測定するための器具です。

コニカルビーカー
通常のビーカーより上の口の部分がやや細くなって、振り混ぜやすくなったビーカーです。滴定実験のときにビュレットの下に置き、途中で振り混ぜつつ実験をします。
メスフラスコ
正確に一定量の溶液をつくるために使うガラス容器を、メスフラスコといいます。
上部が細くなったガラス容器で、細長い上部に標線という線があり、ここに溶液を合わせることで正確な体積にすることができます。
電子天秤などで正確に物質の質量をはかり、これを蒸留水に溶かしたあと、メスフラスコに入れることで正確な濃度の水溶液がつくれます。
または既に準備した他の溶液から、ホールピペットで正確に一定量をメスフラスコにはかりとり、標線まで蒸留水を加えて希釈することで、新たに正確な体積の溶液をつくれます。

中和滴定の目的
そもそも、中和滴定は何のためにするのでしょうか。
滴定とは、濃度のわからない溶液の濃度を正確に知るために行います。
例えば、A という物質が溶けている溶液の濃度を正確に調べます。この物質 A は、物質 B と化学反応を起こします。
化学反応式を考えればわかるように、化学反応では反応物の物質量が、簡単な整数比で反応します。これを利用します。
中和滴定の場合は、中和反応を利用しています。
例: A + B → AB なら A と B は 1 対 1 の物質量の比で反応する
B が溶けていて濃度が正確にわかっている溶液を用意します。これをビュレットに入れます。
濃度が未知の A の溶液を一定量、ビーカー(コニカルビーカー)にホールピペットで正確にはかりとります。
このビーカーにビュレットから B の溶液を落としていき(滴下といいます)、A と B の反応が完全に終わったときのビュレットの目盛りを読み取ります。
中和滴定では、pH指示薬の色が変わることで、反応が終わったことを確認します。
B の溶液の濃度と滴下した体積、ビーカーに入れた A の溶液の体積から、A の溶液の濃度が計算できます。
中和滴定実験の簡単な考え方を、下の模式図で示します。




問題演習
確認テスト1
次の特徴をもつ実験器具の名称を A ~ F から選びましょう。
1. 安全ピペッターなどで液体を吸い上げ、一定量の液体を正確にはかりとる器具。
2. 滴定実験で滴下した液体の量を、正確に測定するための器具。
3. 正確に一定の体積の溶液をつくるために使うガラス容器。
4. 通常のビーカーより上部がやや細くなっていて、振り混ぜやすいビーカー。
A:コニカルビーカー B:ビュレット C:ホールピペット
D:メスフラスコ E:メスシリンダー F:こまごめピペット
実践問題1(2019追第2問問5)
標準溶液をビュレットに入れ、試料溶液をホールピペットで採取してコニカルビーカーに入れて中和滴定を行うとき、用いられるガラス器具の適切な使い方に関する記述として下線部に誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ビュレットの内壁を純水で洗ってから標準溶液で 2 ~ 3 回すすいだのち、標準溶液をビュレットに注ぎ入れる。
② ホールピペットは、内壁を純水で洗ってから試料溶液で 2 ~ 3 回すすいだのち、一定量の試料溶液をはかり取る。
③ コニカルビーカーの内壁を純水で洗ってから試料溶液で 2 ~ 3 回すすいだのち、一定量の試料溶液を入れる。
④ ビュレットの目盛りは、目の位置を標準溶液の液面と同じ高さにして読み取る。
⑤ ビュレットの最少目盛りが 0.1 mL のとき、目分量で 0.01 mL の位まで読み取る。
(2019年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問5 より引用)
実践問題2(2017本第2問問4)
ある物質の水溶液をホールピペットではかりとり、メスフラスコに移して、定められた濃度に純水で希釈したい。
次の問い( a ・ b )に答えよ。
a ホールピペットの図として正しいものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

b このとき行う操作Ⅰ・Ⅱの組合せとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
操作Ⅰ
A ホールピペットは、洗浄後、内部を純水ですすぎそのまま用いる。
B ホールピペットは、洗浄後、内部をはかりとる水溶液ですすぎそのまま用いる。
操作Ⅱ
C 純水は、液面の上端がメスフラスコの標線に達するまで加える。
D 純水は、液面の底面がメスフラスコの標線に達するまで加える。

(2017年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問4 より引用)