中和反応の量的関係

ポイント

酸の価数を a 、酸の濃度を c [ mol/L ] 、酸の体積を v [ mL ] とします。

塩基の価数を b 、塩基の濃度を c’ [ mol/L ] 、塩基の体積を v’ [ mL ] とします。

$$a × c × \frac{v}{1000} = b × c’ × \frac{v’}{1000}$$

が成り立つとき、中和反応が完了します。

中和反応の量的関係

中和反応では、酸からの水素イオン H+ と塩基からの水酸化物イオン OH が反応して、水 H2O が生成します。

H+ + OH → H2O

中和反応が終わるのは、H+ と OH が両方ともちょうど消費されて、溶液からなくなったときです。

つまり、酸からの H+ の物質量と、塩基からの OH の物質量が等しくなったとき、中和反応が終了します

酸からの H+ の物質量は、酸の価数と酸の濃度と酸の体積の積より求められます。

酸からの H+ の物質量 = 酸の価数 × 酸の濃度 × 酸の体積

これは塩基についても同様なので、

塩基からの OH の物質量 = 塩基の価数 × 塩基の濃度 × 塩基の体積

と表されます。

酸の価数を a 、酸の濃度を c [ mol/L ] 、酸の体積を v [ mL ] とします。この溶液から得られる H+ の物質量は、以下のようになります。

H+ の物質量 = a × c × \(\frac{v}{1000}\)

c の単位はモル濃度であり、v の単位は mL なので、1 L = 1000 mL より体積を 1000 で割っています。

同様に塩基の価数を b 、塩基の濃度を c’ [ mol/L ] 、塩基の体積を v’ [ mL ] とすると、この溶液から得られる OH の物質量は、以下のようになります。

OH の物質量 = b × c’ × \(\frac{v’}{1000}\)

酸からの H+ の物質量と、塩基からの OH の物質量が等しくなったとき、中和反応が終了するので、

$$a × c × \frac{v}{1000} = b × c’ × \frac{v’}{1000}$$

が成り立つとき、中和反応が完了します。

ところで、これまでの説明は、簡単に H+ と OH で中和反応としていました。これはアレーニウスの定義による酸と塩基でした。

アレーニウスの定義から外れる、アンモニア NH3 (弱塩基)のような化合物であっても、上の式で計算できます。例えば NH3 ならば、1 価の塩基として同じように計算します。

中和の例題(1)

0.2 mol/L の硫酸 10 mL があります。これを中和するのに 0.1 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液は、どれだけ必要でしょうか。

硫酸 H2SO4 は 2 価の酸です。水酸化ナトリウム NaOH は 1 価の塩基です。これより、水酸化ナトリウム水溶液の体積を V mL とすると、

$$2 × 0.2 × \frac{10}{1000} = 1 × 0.1 × \frac{V}{1000}$$

これを解くと V = 40 mL です。

中和の化学反応式も確認しておきましょう。

H2SO4 + 2 NaOH → Na2SO4 + 2 H2O

弱酸・弱塩基の中和

弱酸は電離度が小さいので、酸の濃度に対して電離している H+ の物質量が小さくなります。そこで、弱酸が中和反応するときは、H+ が不足しそうな気がします。

しかし実際には、弱酸も強酸も区別せずに、上のような計算をすることができます。

その理由は、弱酸が中和して H+ が少なくなると、新たに弱酸が電離して H+ が生じるためです。

中和反応が進むとどんどん弱酸が電離していくので、最終的にはすべての弱酸が中和されます。

弱塩基も同じように考えられます。弱塩基も強塩基と同様に、中和反応の計算ができます。

中和の例題(2)

濃度が 0.1 mol/L の酢酸は、電離度が 0.01 です。この酢酸 5 mL を中和するのに、水酸化ナトリウム水溶液が 10 mL 必要でした。水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度はいくらですか。

酢酸は弱酸で、電離している H+ はわずかです。しかし中和反応が終わりまで進むときは、次々と酢酸分子が電離していきます。

最後にはすべての酢酸分子が電離するので、強酸と同じように計算できます。

酢酸は 1 価の酸、水酸化ナトリウムは 1 価の塩基です。水酸化ナトリウム水溶液の濃度を C mol/L とすると、

$$1 × 0.1 × \frac{5}{1000} = 1 × C × \frac{10}{1000}$$

これを解くと C = 0.05 mol/L

中和の化学反応式は以下のようになります。

CH3COOH + NaOH → CH3COONa + H2O

問題演習

確認テスト1

0.30 mol/L の塩酸 10 mL を中和するのに、0.10 mol/L の水酸化バリウム Ba(OH)2 はどれだけ必要ですか。

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塩酸 HCl は 1 価の酸で、水酸化バリウム Ba(OH)2 は 2 価の塩基です。必要な Ba(OH)2 の体積を V mL とすると、

$$1 × 0.30 × \frac{10}{1000} = 2 × 0.10 × \frac{V}{1000}$$

これを解くと V = 15 mL

実践問題1(2017追第2問問5)

濃度が不明の n 価の酸の水溶液 x [ mL ] を、濃度が c [ mol/L ] で m 価の塩基の水溶液を用いて過不足なく中和するには y [ mL ] を要した。この酸の水溶液の濃度 [ mol/L ] を求める式として最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

(①~⑥の式の単位は mol/L )

(2017年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問5 より引用)

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正解 1

中和点では以下の等式が成り立っています。

酸のモル濃度 × 酸の価数 × 酸の体積 = 塩基のモル濃度 × 塩基の価数 × 塩基の体積

そこで、求める酸のモル濃度を A [mol/L] とすると、

$$A[mol/L] × n × \frac{x[ml]}{1000[ml]} = c[mol/L] × m × \frac{y[ml]}{1000[ml]}$$

式を変形して A を表すと

$$A = \frac{cmy}{nx}[mol/L]$$

となります。

実践問題2(2019本第2問問4)

0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で、濃度不明の酢酸水溶液 20 mL を滴定した。この滴定に関する記述として誤りを含むものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 滴定前の酢酸水溶液では、一部の酢酸が電離している。

② 滴定に用いた水酸化ナトリウム水溶液の pH は 13 である。

③ 滴定に用いた水酸化ナトリウム水溶液は、5.0 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を正確に 10 mL 取り、これを 500 mL に希釈して調製した。

④ 中和に要する水酸化ナトリウム水溶液の体積が 10 mL であったとき、もとの酢酸水溶液の濃度は 0.20 mol/L である。

(2019年度センター試験 本試験 化学基礎 第2問問4 より引用)

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正解 4

1 〇 酢酸は弱酸で、一部が電離します。

2 〇 0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液では、OH イオンの濃度は

[OH] = 1.0 × 10-1 mol/L

水のイオン積は

Kw = [H+] [OH] = 1.0 × 10-14 mol2/L2

ですから

[H+] = 1.0 × 10-13 mol/L

となり、pH = 13 となります。

3 〇 この操作で 50 倍に希釈しています。濃度は\(\frac{1}{50}\)になります。

4 × 水酸化ナトリウムは 1 価の塩基、酢酸は 1 価の酸です。

酢酸の濃度を a [mol/L] とすると、中和点では

0.10[mol/L] × 1 × \(\frac{10[ml]}{1000[ml]}\) = a[mol/L] × 1 × \(\frac{20[ml]}{1000[ml]}\)

となります。

これを解くと

a = 0.050 mol/L

実際の酢酸水溶液の濃度は 0.050[mol/L] です。

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