酸化剤と還元剤(2)

ポイント

過酸化水素 H2O2 と二酸化硫黄 SO2 は、酸化剤にも還元剤にもなります。

これらの酸化還元反応式を学びます。

過酸化水素 H2O2 は、通常は酸化剤としてはたらきます。しかし反応の相手が、過マンガン酸カリウムや二クロム酸カリウムのような強い酸化剤の場合は、還元剤になります

同様に、二酸化硫黄 SO2 は、通常は還元剤としてはたらきます。しかし反応の相手が、硫化水素のような強い還元剤の場合は、酸化剤になります

H2O2 の酸化還元反応

H2O2 が酸化剤の場合

H2O2 は普通は酸化剤です。酸化剤としてはたらくときの半反応式は、

H2O2 + 2 H+ + 2 e → 2 H2O

です。

練習として、これと還元剤のヨウ化カリウムの反応を考えましょう。過酸化水素水に硫酸を加えて、酸性条件下で反応させます。

ヨウ化カリウムの半反応式は、

2 I → I2 + 2 e

となります。

この 2 つの半反応式から電子 e を消去します。ここでは 2 つの半反応式を足し合わせればよいので、

H2O2 + 2 H+ + 2 I → 2 H2O + I2  ‥‥(*)

となります。

この例では、過酸化水素水とヨウ化カリウム水溶液を混合しています。そのためこの水溶液には、ほかに K+ と SO42- が存在しています。

(*)の式を電気的に中性にします。左辺に 2 個の K+ と 1 個の SO42- を書き加えるとよいので、両辺に加えます。

H2O2 + H2SO4 + 2 KI → 2 H2O + I2 + K2SO4

こうして上のように酸化還元反応式(酸化剤:H2O2、還元剤:KI )は完成しました。

H2O2が還元剤の場合

H2O2 が還元剤となるのは、相手が過マンガン酸カリウムのような強い酸化剤の場合です。

H2O2 が還元剤としてはたらくときの半反応式は、

H2O2 → O2 + 2 H+ + 2 e

です。

H2O2 が還元剤としてはたらくときの酸化還元反応式は、前の項目「酸化還元反応式」の確認テスト 1 で学習しました。そちらを参照してください。

SO2 の酸化還元反応

SO2 が酸化剤の場合

SO2 は普通は還元剤としてはたらきます。しかし、硫化水素 H2S のような強い還元剤と反応するときは、酸化剤になります。

SO2 が酸化剤になる場合の半反応式は、

SO2 + 4 H+ + 4 e → S + 2 H2O  ‥‥(A)

です。

例として、還元剤の H2S と反応するときの酸化還元反応式を考えましょう。

H2S の半反応式は、以下の通りです。

H2S → S + 2 H+ + 2 e  ‥‥(B)

(B)の両辺を 2 倍して、(A)と足し合わせると、電子 e が式から消去できます。

SO2 + 4 H+ + 2 H2S → S + 2 H2O + 2 S + 4 H+

この式を整理すると

SO2 + 2 H2S → 3 S + 2 H2O

この状態で化学反応式としては完成したので、求める酸化還元反応式(酸化剤:SO2、還元剤:H2S )ができました。

SO2 が還元剤の場合

SO2 は普通は還元剤としてはたらきます。SO2 が還元剤としてはたらくときの半反応式は、次の通りです。

SO2 + 2 H2O → SO42- + 4 H+ + 2 e  ‥‥(C)

例として、酸化剤の過マンガン酸カリウム KMnO4 と反応する場合を考えます。

過マンガン酸カリウムの半反応式は、次の通りです。

MnO4 + 8 H+ + 5 e → Mn2+ + 4 H2O  ‥‥(D)

2 つの半反応式から、電子 e を消します。そのためには、(C)を 5 倍、(D)を 2 倍して、2 つの式を足し合わせます。

(C) × 5   5 SO2 + 10 H2O → 5 SO42- + 20 H+ + 10 e

(D) × 2   2 MnO4 + 16 H+ + 10 e → 2 Mn2+ + 8 H2O

足し合わせた式は次の通りです。

5 SO2 + 2 H2O + 2 MnO4 → 5 SO42- + 4 H+ + 2 Mn2+

この実験している水溶液には、ほかに K+ が含まれています。左辺に 2 個の K+ を書き加えると、電気的に中性となります。

そこで両辺に 2 個の K+ を加えます。

5 SO2 + 2 H2O + 2 KMnO4 → 5 SO42- + 4 H+ + 2 Mn2+ + 2 K+

右辺を整理すると

5 SO2 + 2 H2O + 2 KMnO4 → 2 H2SO4 + 2 MnSO4 + K2SO4

このように、酸化還元反応式(酸化剤:KMnO4、還元剤:SO2 )が完成しました。

問題演習

実践問題1(2020追第2問問6)

次に示す反応のうち、下線を付した化合物が還元剤としてはたらいているものはどれか。すべてを正しく選択しているものを、下の①~⑦のうちから一つ選べ。

 過酸化水素水に硫化水素水(硫化水素水溶液)を混合すると、水溶液が白濁する。

 硫酸で酸性にした過酸化水素水にヨウ化カリウム水溶液を少しずつ加えると、溶液が褐色になる。

 二酸化炭素を金属マグネシウムと反応させると、黒色の炭素が生じる。

① ア   ② イ   ③ ウ   ④ ア、イ

⑤ ア、ウ   ⑥ イ、ウ   ⑦ ア、イ、ウ

(2020年度センター試験 追試験 化学基礎 第2問問6 より引用)

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正解 2

過酸化水素は酸化剤として作用しています。

半反応式は次の通りです。

H2O2 + 2 H+ + 2 e → 2 H2O

H2S → S + 2 H+ + 2 e

これらの 2 式を加えてできる反応式は

H2O2 + H2S → S + 2 H2O

となります。このとき水溶液中で生成した S のために白濁します。

イ 

ヨウ化カリウムは還元剤として作用しています。

半反応式は次の通りです。

H2O2 + 2 H+ + 2 e → 2 H2O

2 I → I2 + 2 e

これらの 2 式を加えてできるイオン反応式は

H2O2 + 2 H+ + 2 I  →  2 H2O + I2

両辺に 2 K+ と SO42- を加えて式を整理すると

H2O2 + H2SO4 + 2 KI → I2 + 2 H2O + K2SO4

となります。

このとき水溶液中で生成したヨウ素 I2 とヨウ化物イオン I から、三ヨウ化物イオン I3 が生じます。

この三ヨウ化物イオンにより、水溶液の色が褐色となります。

二酸化炭素は酸化剤として作用しています。

二酸化炭素分子のなかの炭素原子が還元されて単体となることで、黒色の炭素が生成します。

CO2 + 2 Mg → C + 2 MgO

二酸化炭素はマグネシウムに酸素を与えています。このとき CO2 の炭素原子の酸化数は +4 から 0 へ変化しています。

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